ステレオに比べ、前後の広がりを加えた立体感と、重低音を受け持つサブウーファーによる空気感で、臨場感を演出します。よって、その立体感や臨場感は、スピーカーの配置や調整が重要となるのです。今回は、配置と調整の基本をご紹介します。
スピーカーの配置(5.1chの場合)
音や映像の製作者の意図した立体感を得るには、スタジオでの制作過程と同じスピーカー配置にするのが基本です。 家庭では難しいケースが多いですが、基礎知識として知っておきましょう。平面上の位置としては、ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)がBS.775-1で推奨する角度が基本です。
具体的には、リスニングポイントを時計の中心軸に例えると、センタースピーカーはリスニングポイントの真正面、つまり12時の方向に、フロント(前)LRのスピーカーはそれぞれ11時と1時の方向に、リア(後)LRのスピーカーはおおよそ8時と4時の方向となります。
【配置参考図】(HOMETHEATER-S.JP/日本オーディオ協会)
ITU-R BS.775-1 推奨の5.1ch配置
リスナーと各スピーカーまでの距離は全て同じ、つまりリスナーを中心として同心円上であれば良いのですが、制作スタジオでは2~3mに配置するのが標準的です。
スピーカーの高さ
各スピーカーの高さですが、フロントLRとセンターは、リスニングポイントにおける耳の高さ、リアスピーカーは、耳の高さより、60cm~90cm程度高くするのが基本です。リアを高くするのは、映画鑑賞において上下方向の立体感を得るためで、音楽ソフトを重視する場合など、用途や好みに応じて、耳の高さに揃えても構いません。サブウーファーについては、音の方向性を感じにくい重低音のみを受け持つため、原則どこに置いても構いません。安定感のある床の上などであれば十分です。
■バーチャルサラウンド方式の場合
フロントスピーカーのみによるバーチャルサラウンド方式の場合は、特に配置を選びません。聴覚の錯覚を利用している原理から、リスニングポイントをなるべく正面の軸上に設定すると、より高い立体感が得られます。
壁面の反射を利用するフロントサラウンド方式の場合は、左右どちらか一方が極端に壁に近くなったり、遠くなったりしないように注意が必要です。ある程度の差は、後述の「自動調整」で補正が可能ですので、それ程心配は要りません。