液状化現象の被害は生活に大きな支障も
2011年3月11日の東日本大震災では、震源地から遠く離れた千葉県の浦安市などでも大規模な液状化現象が発生し、家が傾き、道路が水浸しになり、マンホールや下水管が押し上げられるという被害が発生しました。液状化現象で人命が奪われることはまれですが、「家」という財産へ甚大な被害をもたらします。また、断水や下水道の使用制限、ガス供給の停止といったライフラインの途絶が起こり、災害後の生活に大きな支障を及ぼします。
1.液状化現象とは?
2.液状化現象の発生状況
3.液状化マップとは?
4.東京の液状化予測図
5.埼玉の液状化予測図
6.千葉の液状化予測図
7.神奈川の液状化予測図
液状化現象とは?
液状化現象とは、もともと地盤に多くの水分を含むゆるい砂質地盤におこる現象です。ふだんはゆるいなりにも砂粒子同士がくっついて地盤をつくり建物を支えていますが、地震によって砂と水分が分離して水が地面まで上がってくる現象をいいます。埋め立て地でまだ比較的新しく締め固まっていない土地、川や海に近い比較的地盤のゆるい土地に起こりやすいと言われています。液状化現象の頻度。毎年のように発生
液状化被害は毎年のように報告されており、1964年の新潟地震、1995年の阪神淡路大震を始め、2000年の鳥取県西部地震、2004年の新潟中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、宮城県沖地震、2007年の能登半島地震、新潟中越沖地震、2011年の東日本大震災、海外では2011年2月のクライストチャーチ大地震などでも大規模な液状化現象が見られました。液状化マップとは?
「液状化マップ」とは、液状化のしやすさ・しにくさを地図上に色分けして示したものです。液状化マップは、所有者に液状化の起こりやすさを把握してもらい、事前に対策を立ててもらうことを目的に、自治体などが作成し公開しています。今回は関東地方(東京、埼玉、千葉、神奈川)の「液状化予測マップ」を確認できるリンク集をまとめました。東京の液状化予測図・液状化マップ
東京の液状化予測図 平成24年度改訂版 (東京都土木技術支援・人材育成センター)東京都の液状化予測(平成24年改訂版)(出典:東京都土木技術支援・人材育成センター)
東京の液状化マップはもともとは昭和62年に「東京低地の液状化予測」が作られ、のちに範囲を東京全体に広げ、平成18年よりホームページで公開されました。阪神淡路大震災や東日本大震災を経て防災意識が高まったこと、数多くボーリングデータ(地質調査結果)が集まったことから17年ぶりに見直しが行われ、平成25年3月より「平成24年改訂版」として最新データが公開されています。
最新版の液状化予測図によると、23区の東部(足立区、葛飾区、江戸川区をはじめとする荒川周辺、隅田川周辺)及び東京湾岸地域に「液状化の可能性が高い地域」「液状化の可能性がある地域」が多く集まっており、その他西部の丘陵地は「液状化の可能性が低い地域」となっています。
埼玉の液状化予測図・液状化マップ
液状化の被害予測-埼玉県埼玉県 相対的な液状化のしやすさ(出典:埼玉県「液状化の被害予測」)
埼玉県では西部に山地、東部に低地が広がっており、全体的な傾向として東部(川口市、三郷市、吉川市、八潮市、草加市、蕨市、戸田市など)の荒川低地及び中川低地においては相対的に液状化しやすくなっています。これに対し、西部の山地では全体的に液状化しにくくなっています。
千葉県の液状化予想図・液状化マップ
平成26・27年度「千葉県地震被害想定調査報告書」
千葉県では近い将来大きな影響を与える地震を対象に平成26・27年度に「千葉県地震被害想定調査」を実施し、報告書を公開しています。まずはこの中から「千葉県北西部直下地震」「大正型関東地震」が発生した際の液状化想定図をご紹介します。
千葉県北西部直下地震が起きた際の液状化の危険度(出典:平成26・27年度千葉県地震被害想定調査報告書)
千葉県北西部直下地震では、震源直下の東京湾岸の浦安市から千葉市にかけての埋め立て地で液状化危険度の高い領域が広がっています。また、利根川や江戸川沿いの低地部や、養老川や小堰川沿いの谷底低地の一部において液状化危険度が高くなっています。
●大正型関東地震発生時の液状化想定図
大正型関東地震の際の液状化予測図(出典:平成26・27年度千葉県地震被害想定調査報告書)
大正型関東地震については、市原市以南の海岸低地や九十九里浜の砂州の一部において液状化の危険度が高くなっています。
また、特定の地震を想定したものではなく、全県で同一の震度の揺れが発生した場合にどのような範囲で液状化が発生するのかを知る目安として、東日本大震災のような超巨大地震及び直下地震の2種類の地震を想定し、震度5弱、5強、6弱、6強の場合について液状化マップを作成しています。一例として、震度6弱の超巨大地震が発生した時の液状化マップを見てみましょう。
超巨大地震が発生した時の液状化のしやすさ(震度6弱)(出典:平成26・27年度千葉県地震被害想定調査報告書)
超巨大地震が発生し、震度5強以上になると、東京湾岸の埋立地を中心とした広い範囲で液状化しやすくなると予想されています。
神奈川県の液状化予想図・液状化マップ
被害が大きくなりそうな地域とは(神奈川県液状化マップ)
神奈川県ではホームページの防災情報で地盤の液状化想定図を公表しています。
大正型関東地震の液状化想定図(出典:神奈川県防災情報「 被害が大きくなりそうな地域とは」)
南関東地震(大正型関東地震)の際の液状化想定図。川崎市や横浜市などの東京湾の埋め立て地や内陸の河川沿い、県中央部の相模川沿い、酒匂川沿いの一部では液状化の可能性がかなり高いと想定されています。また、川崎市の多摩川沿い、横浜市の河川沿いなどでも液状化の可能性が高いと想定されています。
東海・近畿地方の液状化マップ
東海地方:南海トラフ地震に要注意 液状化マップ-東海地方篇近畿地方:南海トラフ、直下地震に備えよう―液状化マップ近畿篇
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