映画「マトリックス」 人工知能に意識はあるか?
人間に代わり地上を支配した人工知能が、人間を電池として管理し、エネルギーを得る世界を描いたのが映画「マトリックス」。映画の中で主人公のネオが、「これは現実なのか?」と聞くシーンがでてきます。
リーダーであるモーフィアスは「現実とは何だ?」とネオに問いかけます。「君はどうやって現実とそうでないものを見分けるのだ?君が感じるもの、匂うもの、味わうもの、見るもの、それを”現実”と言うなら、現実とは、君の脳から発せられた単純な電気信号に過ぎない。」
この台詞を聞くと思い出すのがチューリング・テストです。人工知能に知性があるかどうか判断する時に使います。人工知能と人間がお互いが見えないようにキーボードとディプレイで対話し、対話の相手が人間か人工知能か判別できなければ、それは人間と変わらない、つまり人工知能に意識があると考えるテストです。
チューリングについては「人工知能の父チューリングは同性愛者だった」を参照ください。
人工知能が人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)
2015年10月、世界で初めてコンピュータが人間のプロ棋士に勝ったというニュースが飛び込んできました。グーグルの囲碁ソフト”アルファ碁”が中国出身のプロ棋士と勝負し、5戦全勝したというニュースです。既にチェスでは”ディープブルー”というソフトが世界チャンピオンに勝ち、将棋ではコンピュータが電王戦(団体戦)で人間に勝っています。囲碁はチェスや将棋に比べ、石を置くことができる場所が桁違いに多く、人工知能が勝つことはなかなか難しいと言われていましたが、とうとうコンピュータが勝つ時代になりました。
シンギュラリティ(技術的特異点)がいつ到来するかが議論されるようになってきました。シンギュラリティ(技術的特異点)とは技術の進化によって、人間の生活が後戻りできないほど変ってしまうようになる点を言います。
例えば人類が火の使用を始めた時がそうですし、蒸気機関の発明で、産業革命が起きた時もシンギュラリティ(技術的特異点)です。最近ならテレビ、電話、インターネットの登場もそうでしょう。人工知能が人間の能力を超えることもシンギュラリティ(技術的特異点)と呼んでいます。
人工知能の研究からエキスパートシステムが生まれる
人工知能は、けっこう古くから研究が始まっています。今からちょうど60年前にダートマス大学で開催されたダートマス会議からスタートしました。この時に、ニューラルネットワークなどの研究をしていたマービン・ミンスキーなどが集まり研究が本格化します。人口知能の研究を通じて分かってきたことは、いかに人間の知的活動がすごいということです。当初は人工知能を簡単に実現できるのではと考えていましたが、どうして、どうして実に大変なことが分かってきました。
あきらめずに研究を続けていくなかで、いくつかの研究成果がでてきます。その一つがエキスパート(専門家)システムです。
エキスパート(専門家)システムとは専門家が持つ知見を形式知化したシステムです。例えば電鉄会社では電車を運行するために複雑なダイヤグラム(時刻表)が必要ですが、作成は大変な作業になります。
全ての電車が追い越しのない普通電車なら話は簡単ですが、特急や急行やらいろいろな種類の電車が走り、普通電車を途中の駅で退避しなければなりません。そこで登場するのが”スジ屋”と呼ばれる専門家です。エキスパートシステムではこのスジ屋がダイヤグラムをひく知識やノウハウをシステムにすることによって時間短縮をはかっています。エキスパートシステムは人工知能ですが基本は手続き(プログラム)が必要です。
そんななか登場したのがディープラーニング(深層学習)です。