ストレス/ストレスフリーの思考術

激やせ、むちゃ食い―摂食障害から解放されるヒント

とてもやせているのにダイエットをし続ける、ダイエットとむちゃ食いの終わらないループを繰り返す――こうした摂食障害に苦しむ人に共通してよく見られる考え方の傾向とはどのようなものでしょう? 摂食障害を生む考え方を、根本から見つめ直すヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「摂食障害」ってどんな心の病気なの?

体重計と女性

ダイエットから摂食障害になる人はとても多い

10代、20代の若い女性に多い心の病に「摂食障害」があります。摂食障害とは、精神的な要因によって食行動に異常が生じる精神疾患です。代表的なものには、食事を極端に制限しやせすぎていく「神経性やせ症」、過食した後、下剤使用や嘔吐などの代償行動を行う「神経性過食症」があります。

精神疾患の診断マニュアルである「DSM-5」によると、これら2つの疾患には次のような症状があります。

■神経性やせ症
  • 正常の下限を下回る有意に低い体重
  • 体重増加や肥満に対する強い恐怖と、体重増加を妨げる持続した行動
  • 現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如
  • 過食後に、嘔吐や下剤などを使って排出する「過食・排出型」とそれを行わない「摂食制限型」がある

■神経性過食症
  • ある時間帯に明らかにたくさん食べ、やめることができない
  • 不適切な代償行動(嘔吐、下剤・利尿剤の使用、絶食、過剰な運動など)を行う
  • 過食と代償行動が3ヵ月のなかで週に1回は起きている
  • 体形、体重によって自己評価が過度に影響されている

ダイエットがきっかけになる摂食障害

摂食障害の要因はさまざまですが、ダイエットをきっかけとして生じる例が多いとされています。そこには、現代人のやせ願望、スリム体形の流行が起因しています。

テレビをつければ、スリムで美しい女優たちがボディラインを強調し、雑誌を開けば、極端に細いモデルたちが美脚を露出する。こうした情報に囲まれた中で、他者からの評価を気にしやすい若い年代の女性たちに「やせてカッコよくなりたい」とダイエットに意気込む人が増えるのも自然なことです。

しかし、多くの人が取り組むダイエットは浅いレベルでの成功と挫折の繰り返しであり、「やせた、太った」と一喜一憂する程度で推移するのに対し、摂食障害の人は、健康を維持できないほど極端に食事を制限してやせ体形を維持しようとする、過激なダイエットのリバウンドで激しい過食をして、過剰に自己嫌悪に陥る、といった極端なパターンをとるのが特徴です。

摂食障害の人に多い考え方とは?

摂食障害のループにはまって抜けられない人には、ある共通の考え方の傾向があると言われています。それは「スプリッティング」という「良い、悪い」に二極化した考え方です。

たとえば「良い(カッコいい、優秀な)自分」を過剰に追及し、「悪い(ダメな)自分」に転じてしまうことを過剰に恐れることや、「良い人、悪い人」「良いこと、悪いこと」「勝ち、負け」というように、対象を極端に二極化して評価し、悪いものを極端に避けようとする考え方をスプリッティングと言います。

スプリッティング傾向を持つ人が、体形や体重を意識するようになると、スリム体形を維持できる自分こそ「良い状態」であり、太っていたり、ダイエットに失敗する弱さは「悪い状態」と感じるようになります。良い状態をキープできなければ安心できず、悪い状態に陥ることを非常に不安に感じます。そのため、極端なダイエットを繰り返し、摂食障害のループにはまってしまうと考えられています。

次のページでは、極端な二極化思考「スプリッティング」との向き合い方をご紹介します。

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