ストレス/家庭・育児・嫁姑・義理づきあいのストレス

母親がストレス…母娘関係の築き方、娘を縛る母の言葉

【公認心理師が解説】「母親がストレス」という女性の悩みは珍しくありません。母親側は良かれと思ってかけた言葉に娘が苦しみ、強いプレッシャーから人生が狂ってしまうケースも。母と娘が自立した母娘関係を築き、長く良い関係を続けていくためのヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

娘にプレッシャーを与える母の何気ないひと言……5つの「呪文」

母親がストレス……母娘関係の築き方、娘を縛る母の言葉

「あなたのため」母がつぶやく言葉が娘の心を締めつける

娘の人生を支配し干渉する母、娘と密着し、娘の行動に口を出す母――そうした母のもとで育ってきた娘たちには、大人になっても母から受けた「呪文」というプレッシャーから逃れられず、息苦しい人生を送っている人が少なくありません。

そんな娘たちが母から受けてきた「呪文」には、どのようなものがあるのでしょう? 代表的には次の5つの言葉があります。
 
  1. 「あなたのためなのよ」
    「あれをしなさい」「それはダメよ」などの言葉の後についてくる「あなたのため」は、本当に娘のため?「母自身のため」と言い換えた方がしっくりきそうです。
     
  2. 「やりたいことを我慢して、あなたを育ててきたのに」
    娘が母の希望と違う進路を選んだときなどに、ついてくる言葉。「人生を犠牲」にした母のために、母の希望に添って生きることが正しいのでしょうか?
     
  3. 「お母さんができなかったことをあなたにしてほしいの」
    人格も興味も能力も違い、生きる時代も違う娘が、なぜ「母のやりたかった夢」を叶えなければならないのでしょうか?
     
  4. 「あなたさえいてくれれば、もう何もいらない」
    「他の関係をあきらめたのだから、私のそばにいて」という大胆な要求を突きつけています。「親友」や「パートナー」の役割まで担わされる娘の負担は?
     
  5. 「お母さんの言うとおりにしていれば間違いない」
    進路や人生設計をすべて「お母さんの言うとおり」にすれば、本当に幸せな一生を送れるのでしょうか? そのとおりにしなければ、不幸になるのでしょうか?
 

母の言葉が娘の心に与える影響

母にとっては、同じ女性として共感でき、素直に従う娘ほど、分身のようにかわいく思えてしまうものです。しかし、そうした気持ちから娘にかける言葉は、いつしか娘の心のなかで「呪文」としての力を持ち、人生を左右してしまうことが少なくありません。

無意識のうちにこうした呪文をつぶやく母は、“さびしさ”を抱えているものです。そのさびしさは、一人の女性として精神的に自立しきれていないことから発せられるものです。さびしさから、子育てに執着し、なかでもひときわ思い入れのある娘の人生に干渉し続けてしまうのです。

もちろん、母は娘を苦しめようとして、こうした言葉を言っているわけではありません。それを言うことが「娘のためになる」と真剣に信じているのです。しかし、その気持ちが娘にとっては苦しいプレッシャーとなり、娘自身の意志を狂わせてしまいます。
 

母娘ストレスから自由になる2つのヒント

relation2

ベタベタすることが「よい母娘関係」ではない

母から呪文を与えられた娘は、「母の期待に応えなければ」と頑張り続け、母の寂しさを埋めるために「パートナー」や「親友」の役割を担おうとしてしまいます。しかし、こうした娘の“やさしさ”が母の執着をエスカレートさせ、母娘双方の精神的自立をスポイルしてしまうのです。

超高齢化時代の現代、母娘関係は、80年、90年と長きに渡って続いていきます。この長い時間のなかで、母が娘に過大な期待を寄せ、娘が母にわだかまりを持って生きるのは、双方に息苦しさを生んでしまいます。母と娘はお互いを尊重しながら、それぞれが自立心を持って生活していく必要があるのです。

私の著書『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』(さくら舎)では、母娘関係のストレスと解決のヒントをたくさんお伝えしていますが、本書で伝えているエッセンスを2つ抜粋してお伝えしましょう。
 
  1. 「さびしさ」と「やさしさ」の悪循環に気づく
    “さびしさ”から娘に癒しを求め、その関係をよりどころにする母。“やさしさ”から「いい子」や「親友役」をやめられない娘。こうしたなれあいが、母娘関係の葛藤を生み、双方の精神的自立を阻害します。まず、なぜ母は“さびしさ”を抱えているのか、なぜ娘は“やさしさ”をやめられないのか、それぞれの生き方を振り返り、娘と母の関係性を理解していくことが必要です。
     
  2. 親子間のほどよい「境界線」を意識する
    親子関係の葛藤を抱える家庭では、「親世代」と「子世代」の間にほどよい「境界線」が引かれていない場合が多いものです。つまり、夫婦にすれ違いが生じているために、母が娘に執着してさびしさを紛らわす――この繰り返しによって、世代間の境界線が崩壊し、そのしわ寄せを子どもが抱えてしまうのです。こうした関係性は世代間で連鎖していることが多いため、家族全体の関係を見つめ直すことが必要です。

――書籍の方では、母と娘の関係(とくに長女と母との関係)についてより深く理解し、具体的な解決方法のヒントを伝えていますので、ご興味のある方はぜひ参考にしていただければ幸いです。

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます