娘にプレッシャーを与える母の何気ないひと言……5つの「呪文」
「あなたのため」母がつぶやく言葉が娘の心を締めつける
そんな娘たちが母から受けてきた「呪文」には、どのようなものがあるのでしょう? 代表的には次の5つの言葉があります。
- 「あなたのためなのよ」
「あれをしなさい」「それはダメよ」などの言葉の後についてくる「あなたのため」は、本当に娘のため?「母自身のため」と言い換えた方がしっくりきそうです。
- 「やりたいことを我慢して、あなたを育ててきたのに」
娘が母の希望と違う進路を選んだときなどに、ついてくる言葉。「人生を犠牲」にした母のために、母の希望に添って生きることが正しいのでしょうか?
- 「お母さんができなかったことをあなたにしてほしいの」
人格も興味も能力も違い、生きる時代も違う娘が、なぜ「母のやりたかった夢」を叶えなければならないのでしょうか?
- 「あなたさえいてくれれば、もう何もいらない」
「他の関係をあきらめたのだから、私のそばにいて」という大胆な要求を突きつけています。「親友」や「パートナー」の役割まで担わされる娘の負担は?
- 「お母さんの言うとおりにしていれば間違いない」
進路や人生設計をすべて「お母さんの言うとおり」にすれば、本当に幸せな一生を送れるのでしょうか? そのとおりにしなければ、不幸になるのでしょうか?
母の言葉が娘の心に与える影響
母にとっては、同じ女性として共感でき、素直に従う娘ほど、分身のようにかわいく思えてしまうものです。しかし、そうした気持ちから娘にかける言葉は、いつしか娘の心のなかで「呪文」としての力を持ち、人生を左右してしまうことが少なくありません。無意識のうちにこうした呪文をつぶやく母は、“さびしさ”を抱えているものです。そのさびしさは、一人の女性として精神的に自立しきれていないことから発せられるものです。さびしさから、子育てに執着し、なかでもひときわ思い入れのある娘の人生に干渉し続けてしまうのです。
もちろん、母は娘を苦しめようとして、こうした言葉を言っているわけではありません。それを言うことが「娘のためになる」と真剣に信じているのです。しかし、その気持ちが娘にとっては苦しいプレッシャーとなり、娘自身の意志を狂わせてしまいます。
母娘ストレスから自由になる2つのヒント
ベタベタすることが「よい母娘関係」ではない
超高齢化時代の現代、母娘関係は、80年、90年と長きに渡って続いていきます。この長い時間のなかで、母が娘に過大な期待を寄せ、娘が母にわだかまりを持って生きるのは、双方に息苦しさを生んでしまいます。母と娘はお互いを尊重しながら、それぞれが自立心を持って生活していく必要があるのです。
私の著書『長女はなぜ「母の呪文」を消せないのか』(さくら舎)では、母娘関係のストレスと解決のヒントをたくさんお伝えしていますが、本書で伝えているエッセンスを2つ抜粋してお伝えしましょう。
- 「さびしさ」と「やさしさ」の悪循環に気づく
“さびしさ”から娘に癒しを求め、その関係をよりどころにする母。“やさしさ”から「いい子」や「親友役」をやめられない娘。こうしたなれあいが、母娘関係の葛藤を生み、双方の精神的自立を阻害します。まず、なぜ母は“さびしさ”を抱えているのか、なぜ娘は“やさしさ”をやめられないのか、それぞれの生き方を振り返り、娘と母の関係性を理解していくことが必要です。
- 親子間のほどよい「境界線」を意識する
親子関係の葛藤を抱える家庭では、「親世代」と「子世代」の間にほどよい「境界線」が引かれていない場合が多いものです。つまり、夫婦にすれ違いが生じているために、母が娘に執着してさびしさを紛らわす――この繰り返しによって、世代間の境界線が崩壊し、そのしわ寄せを子どもが抱えてしまうのです。こうした関係性は世代間で連鎖していることが多いため、家族全体の関係を見つめ直すことが必要です。
――書籍の方では、母と娘の関係(とくに長女と母との関係)についてより深く理解し、具体的な解決方法のヒントを伝えていますので、ご興味のある方はぜひ参考にしていただければ幸いです。
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