マネジメント/マネジメント事例

理研にみる分権管理「責任」「権限」バランスの重要性(2ページ目)

組織の拡大に伴う分権管理を考えるとき、「責任」と「権限」のバランスのとれた下位委譲の実現は、健全な組織運営をおこなっていく上で不可欠な問題になります。「責任」と「権限」のバランスが崩れるといかなる事態に陥るのか、昨今STAP細胞で話題を集めている理研を例にとりながら解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

 

理研にみる「責任」「権限」バランスの欠如

今回のSTAP細胞の件で理研は、当初組織理研としてSTAP細胞の発見について発表をします。その時のメンバーは、当該研究の「責任」と「権限」の単位であるユニットリーダーとしての小保方氏、その共同研究者兼共著者の若山教授、そして小保方氏の上司であり共著者の笹井副センター長。若山教授は別組織の人間であり組織管理的観点からは、理研としては現場責任者の小保方ユニットリーダーとその上司笹井副センター長が発表事案についての全面的な「権限」を持った上で発表をしたものと映りました。

解説

「責任」ばかりが委譲された理研における分権管理

ところがその後当該の論文の瑕疵が指摘され、それに関する社内調査の中間報告会見では一転、組織のトップである野依良治理事長以下、研究担当理事、コンプライアンス担当理事、センター長、調査委員長出席のいわゆる経営層レベルの会見が開かれ、発表時の主役である現場責任者未同席のまま「未熟な研究者の杜撰な取り扱い」と一方的に「責任」を負わせ断罪したのです。その結果、現場責任者の小保方ユニットリーダーは個別に反論会見を開き、また直属の上司である笹井副センター長も別途単独会見を開くという異常事態に至り、理研の組織統制がとれていないことを世に晒すこととなっています。

なぜこのような不自然な流れに至ったのか、すなわちこの一連の流れを組織管理的にどう見るかです。当初の発表段階では一見「権限」を与えているかのように思えたものの、その実は現場リーダー本人の同意なくかつ本人の同席もさせずに「責任」だけを負わせる会見を開いたことから、理研の分権管理は先に述べた「権限」を与えずに「責任」のみを負わせる不条理な分権管理であったと言えるのです。組織と個人が入り乱れて統制が取れない異常な事態は、すべて理研の不条理な管理にあると断言できます。

このように理研を組織管理の「責任」と「権限」の関係から考えるなら、「責任」ばかりを負わせるこの管理を続けていくことは必ずや組織のモラールダウンを及ぼすことになると思われます。研究者の世界は一般組織と同一には語れないという意見もあろうかと思いますが、理研が独立行政法人である以上、上記のような「責任」と「権限」における組織マネジメントの基本は守られてしかるべきであり、それを否定するのであれば独立行政法人と言う組織形態そのものの見直し議論が必要になるでしょう。
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