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国の年金に100%頼るのも0%頼るのも間違い(2ページ目)

国の年金についてアンケートを見ていて不思議に思うことがあります。なぜ、「年金に100%頼る」と「年金に0%頼る」の二者択一なのでしょうか。そこがそもそも間違いの出発点です。現実的な老後への備え方を考えてみます。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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日銀の調査を少し読むとヒントがある

日銀(金融広報中央委員会)の金融力調査をもう少し読み進めてみると、実は役立つデータがそのすぐ後に含まれています。まず、「年金のみでまかなえない」と答えた8割の人にさらに質問したところ、「他の資金で準備ができている」とした人は37.8%、「できていない」とした人は62.0%となっており、年金だけでは不足している部分について準備ができてない(あるいは進んでいない)人の多いことが明らかになります。

「準備ができている」という人について、どのような準備手段を取ったか質問をしたところ、「預貯金」78.0%、「個人年金」36.7%、「保険」34.8%、「退職金」16.4%、「有価証券」6.9%というところに数字が集まりました(3つまでの複数回答)。ここで注目してみたいのは、複数の手段が、老後資金準備のための現実的選択肢として利用されている、ということです。つまり、「ゼロか100か」ではなく、「国の年金を中核に据えつつも、複数のアプローチで老後のお金の準備を進める」のが現実だということです。

この手の調査は、HP等にアクセスすると元データをチェックできることが多いので、興味をもったらちょっと検索してみることをおすすめします(実は、金融広報中央委員会の調査は、この後のページのほうがおもしろいものとなっています)。

老後の準備を複線化しておく具体策

先の統計で上位にあがったアプローチの、老後資金準備における有効性についてそれぞれ簡単にコメントしてみます。

「預貯金」……60歳以降まで持ち込めばどんな預貯金も「老後資金」です。老後資金準備が○×年金保険である必要はなく、とにかくお金を貯め、増やす努力が最初に検討すべきもっとも重要なアプローチといえます。

「個人年金」「保険」……個人年金保険はコツコツ積立をして老後資産形成を行う目的で活用したいところですが、数十年先に払込保険料の総額を受取額が上回るのは当たり前なので(定期預金だって積立額より受取額が増えるのは当然)、契約条件をしっかりチェックしましょう。また、生命保険の満期保険金は本当に契約時の約束額がもらえるかチェックしておきたいところです。

「退職金」……ここでは「企業年金」という回答がなかったようですが、会社からもらえる退職金・企業年金は大きな金額となることが多いため、自社の条件を必ず確認しておきましょう。ただし、減額のリスク、制度廃止のリスクも存在しますので過信は禁物です。

「有価証券」……株式、債券、投資信託等を活用することで、預貯金よりハイペースで資産を増やすチャンスがあります。老後に向かって時間がある場合は選択肢として考える価値があります。ただしよく分からない商品を安易に利用しないよう注意が必要です。

2つのアプローチを採用したい

オススメとしては、老後のためのお金の準備について複数のアプローチを設定しておくことです。「退職金」だけに頼る、とか、「預貯金」だけでやりくりする、というより、「退職金」にモデルの1000万円は期待しつつ、「預貯金」1000万円、「有価証券」1000万円を目指そう、というような複線化が有効です。

特定の手法にのみ依存した老後資産形成はリスクに脆弱であり、もしものときのダメージは老後の苦しさにつながります

「国の年金100%か自助努力100%か」のレベルの議論は、個人にとって必要ありません。国の年金ももらいつつ、自分でも複線化で老後に備える意識を高めていきましょう。
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