漢方・漢方薬/冷え・むくみ・だるさ・夏バテの漢方

八味地黄丸(はちみじおうがん)

八味地黄丸(はちみじおうがん)は、下半身の冷え、腰痛、尿量の減少、頻尿、むくみ、しびれ、インポテンツなどに用いられる漢方薬です。加齢とともに衰えがちな腎の機能を補い、冷えによって起こる更年期障害、糖尿病、慢性腎炎などにも応用できます。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

「八味地黄丸」はどんな人・どんな症状にいいの? 

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命の源となる成長・発育・老化にかかわる腎の機能(精)を補う

カラダが冷え、下半身や生殖器の虚弱がある人に。

「八味地黄丸」の効果 

疲れやすい、下半身の冷え、腰痛、小便不利、多尿、インポテンツ、精力減退などに。腎炎、ネフローゼなどの腎臓疾患、甲状腺機能低下、更年期障害、ノイローゼ、副腎皮質機能減退、アレルギー性喘息などにも。

「八味地黄丸」に入っているもの 

地黄(ゴマノハグサ科の肥大根)、山薬(ヤマノイモ科のナガイモの根茎)、山茱萸(ミズキ科サンシュユの果肉)、※附子(キンポウゲ科のカラトリカブトの子根。有毒)、肉桂(クスノキ科のケイの幹皮など)、沢瀉(オモダカ科のサジオモダカの塊茎)、茯苓(サルノコシカケ科のマツホドの菌核)、牡丹皮(ボタン科のボタンの根皮)。

※通常、附子は高圧加熱などをして毒性を軽減しています

「八味地黄丸」が合わない人 

カラダの冷えを取り除く作用があるので、ほてりやのぼせがあったり、汗っかきタイプには不向き。消化不良や下痢をしやすい場合、処方を加減したり合方するなど工夫が必要です。

「八味地黄丸」の飲み方などの注意点 

■飲む時間
一般的には食事と食事の間の空腹時、食事をする1時間前など、お腹が空で胃に吸収されやすい時期に飲みます。胃腸が荒れやすい人には食後、排便をうながすタイプの漢方には、空腹時の服用を勧める場合もあります。なお、食間に飲み忘れたときは、食後でいいので飲みましょう。

■「水」or「白湯」?
症状によって、冷たい水で飲むほうが効果的な場合(その反対も)もありますが、基本的には生薬を水で煎じた「煎じクスリ」の場合は、人肌に冷まして飲みます。生薬の有効成分を抽出して乾燥・加工した「エキス剤」の場合、お湯に溶かしたり、水と一緒に飲んでください。

「八味地黄丸」の副作用 

胃腸虚弱、体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、不快な症状が出ることがあります。ちょっとおかしいな、と思ったらすぐ服用をやめ、漢方の専門家や処方してくれた医師に相談しましょう。

「八味地黄丸」が買える場所 

漢方薬局や病院、診療所、ドラッグストアなどです。
代表的な商品名:(アイウエオ順)
  • クラシエ 漢方八味地黄丸料エキス錠 (クラシエ薬品)
  • コタロー 八味地黄丸料エキス錠 (小太郎漢方製薬)
  • ツムラ 漢方八味地黄丸料エキス顆粒 (ツムラ) 
  • マツウラ 八味地黄丸 (松浦漢方)
  • ワクナガ 八味地黄丸 (湧永製薬)

「八味地黄丸」の漢方的メカニズム<中級者向けトリビア> 

腎陽が不足して、下半身を温めたり、水分代謝のコントロールができないために起こる諸症状を改善させます。

■具体的な生薬の効能
主薬の地黄が腎の機能を高め、山薬・山茱萸が消化器系や肝の働きを補いながら地黄の作用をサポートします。附子・肉桂はカラダを温め、強心作用を持ち、沢瀉・茯苓・牡丹皮で余計な水分を尿によって排出させます。

「八味地黄丸」のおまけのエピソード 

八味丸、八味腎気丸、腎気丸などの別名が多いこの処方。原方では、粉末をハチミツなどで練って丸薬にし酒で服用すると記されておりますが、現在でも中国などでは丸薬で市販されているものが少なくありません。

加減方には、牛膝・車前子を加え、利尿作用を高めた牛車腎気丸(加味腎気丸)や、鹿茸・五味子を足し、腎を温めたり精血を増やす十補丸などがあります。また、八味地黄丸から附子と肉桂を減らした六味地黄丸も有名な漢方のひとつです。
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