トランス脂肪酸については、さらなる研究が必要
現状では、反すう動物由来の天然に生成するトランス脂肪酸と、水素添加された植物油由来のトランス脂肪酸とでは、LDLコレステロールやHDLコレステロールへの影響に違いがあるのかどうかなど、解明するのは不可能とされています。
また胎児や乳児への影響、糖尿病やアレルギーとの関係など、まだまだ明らかになっていないこともあり、今後も更なる研究が必要です。
2003年世界保健機関(WHO)は、1日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量は最大でも総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告し、2008年には「1%未満」というレベルの見直しをする可能性も認めています。
お菓子好きの女子は摂取量に注意!
食品安全委員会の発表では、平成19年度国民健康・栄養調査における食品群別摂取量を基に、日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量を推計(積み上げ方式)したところ、平均0.7g(摂取エネルギー換算では約0.3%)でした。また、平成20 年度の食用加工油脂の国内の生産量から推計した一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、平均1.4g(同約0.7%)でした。
これらの推計では、国民健康・栄養調査の平均値を使用しているため、脂肪の多い菓子類等の食品の食べ過ぎなど偏った食事をしている場合の個人差は考慮されていないと指摘されていました。
さらに食品安全委員会によると、
平成22年に学術誌で公表された調査論文によると、2002~2003(H14~H15)年に国内で225 人(30~69 歳)を対象に実施された16 日間の食事記録から摂取量を推定したところ、トランス脂肪酸の一日当たりの平均摂取量は、女性で1.7g/日(摂取総エネルギーの0.8%)、男性で1.7g/日(同0.7%)でした。WHO が推奨する最大摂取量(一日当たりの摂取エネルギー量の1%未満)を超えていたのは、女性の24.4%、男性の5.7%で、特に都市部在住の30~49 歳の女性が多かったこと、その要因として菓子類等の摂取が多い傾向にあったことが示されています。
他の調査でも、男女ともにWHOの推奨摂取量よりも低い値でしたが、
トランス脂肪酸の高摂取者は、低摂取者に比べて総脂肪及び飽和脂肪酸からのエネルギー摂取が多く、クッキー、ケーキ、菓子パンなどの食品の摂取が多い傾向にあったことから、食習慣についての栄養教育が必要である
と報告されています。
食品業界も低減努力に取り組む
お菓子の摂取量が多いこととトランス脂肪酸の摂取量の関連性が指摘されていますが、同じクッキーであっても、商品によって材料の油脂が異なり、トランス脂肪酸の量にも大きな差があります。
食品業界では「トランス脂肪酸」低減にむけては努力し、数年前と比べるとその含有量は確実に低減されています。パーム油は常温で固形化しやすい性質があるため、水素の代わりにパーム油を使うなど、新しい商品開発に取り組んでいるそうです。 その結果、家庭用マーガリン類ではマーガリン、ファットスプレッド、また食品の原材料となるショートニングも、トランス脂肪酸含有率は大幅に低下しています。
食生活における脂肪全体の摂取に注意
食品安全委員会、農林水産省などでは、次のように示しています。
トランス脂肪酸のみならず、飽和脂肪酸も含めた脂肪のとりすぎ、食事性コレステロールの多量の摂取も心疾患のリスクを高めるため、食生活において脂肪全体の摂取について注意する必要があります。
脂肪は、ダイエットのときのように思われがちで、まったく摂らないのも健康上問題です。脂肪の摂り過ぎは控え、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとること。そして幅広い食品から、様々な栄養素や食物繊維等の成分も摂取しましょう。
消費者庁や農林水産省のサイトでも「トランス脂肪酸」について詳しく紹介されていますし、食品安全委員会では「トランス脂肪酸」についてファクトシート(科学的知見に基づく概要書)を公表し、今後も必要に応じて更新されますので、ぜひご参考に。
参考/
トランス脂肪酸の情報開示に関する指針について(消費者庁)
トランス脂肪酸ファクトシート(食品安全委員会)
よくわかるトランス脂肪酸(農林水産省)
日本マーガリン工業会のトランス脂肪酸に係る取組み(消費者庁)
静岡県環境衛生化学研究所 平成21年6月 No.136
その他