理想と現実のギャップに悩む「パリ症候群」
夢にまで見たパリ生活! でも理想とは違って……
ところで、近年話題になっている現象に、「パリ症候群」という一種の適応障害があります。流行の最先端、エスプリと文化の都であるパリにあこがれて渡仏した外国人が、パリの生活の現状にショックを感じて、抑うつ的になるストレス症状です。
パリは美しく華麗な印象とは裏腹に、汚く治安の悪い街や通りも多く、身の危険を感じることも少なくありません。さらに英語すら通じにくい環境に、戸惑うことが多いものです。さらに、内気な人はクセのあるパリっ子とのコミュニケーションに、不便さを感じることもしばしばでしょう。
ファッション誌などでは、中山美穂さん、雨宮塔子さんをはじめとするパリ在住の芸能人、文化人のおしゃれな生活が報道されますが、華やかなインタビュー記事からは海外生活のリアルな部分は伝わってこないものですし、報道の多くは「適応期」に入って生活を謳歌している人のポジティブな意見です。
夢を抱くのはいいことですが、ポジティブな情報にばかり影響されて飛び立つと、よりひどいカルチャーショックを経験し、抑うつなどの心理的危機が強くなってしまいます。
困ったときは在留邦人のコミュニティに相談を
海外生活を始める前には、ポジティブな記事ばかりを拾わず、現実的な問題、リスクなどもできるかぎり調べておくことです。海外で起こる可能性のある問題を事前にある程度想定しておけば、生活上のショックや絶望感は減らせるもの。また、困ったときには現地の日本人会など、在留邦人コミュニティに相談することも大事です。会を通じて、日常でのちょっとした疑問について話し合える相手や、気の合う友だち、助け合える仲間に出会えることもありますし、会によっては茶話会などの催しもあるでしょう。
悩みは抱え込まず、話すことで解決に向かっていくことが大切です。