理想だけではやっていけない海外生活
期待に胸ふくらませて海外へ……その先で待っている現実は?
「狭い日本を飛び出して、一度は海外でじっくり暮らしてみたい」……異国の地で充実した生活をしている自分の姿を、誰でも一度は想像したことがあるでしょう。しかし、海外生活には、言葉の壁、風俗や習慣の違いによるカルチャーショック、気候の違いによる体調不良といった数々のストレスが押し寄せ、思わぬ心の病に悩むケースも少なくありません。
海外で暮らす人の心の状態はどう変わる?
憧れていた国の何もかもが嫌になる時期がある
1. 移住期
最初の数ヶ月間は、すべてが新鮮で物珍しく、毎日に生きがいを感じるでしょう。やるべきこと、覚えるべきことが次々と訪れ、疲れを感じる暇もなく、緊張感と興奮の中で毎日を過ごします。
2. 不満期
少し慣れてくると、緊張と興奮の熱も冷めます。すると、海外生活への期待が破れ、現地生活の不便さや嫌な面ばかりが目につくようになります。人にもよりますが、だいたい数ヶ月から1年くらいまでの間に、この不満期を経験すると言われます。心身の病気になりやすい時期なので、要注意です。
3. 不完全適応期(諦観期)
そうこうしながらも1年くらいたってくると、「悩んでいても仕方がない」とあきらめの境地になります。「悪いところもあるが良いところもある。なんとかやっていくしかない」と思えるようになって、まだまだ不安定ながらも、気持ちは少し落ち着きます。
4. 適応期
ようやく現地の生活にもなじんで、楽しむことができるようになってきます。ただし、誰もがこの適応期に入れるわけではなく、不適応の状態で悶々と過ごす人もたくさんいます。
5. 望郷期
海外生活にはじゅうぶん慣れたつもりでも、何年も続くと、「あぁ、日本が懐かしい」「いつ帰れるのだろう」とノスタルジーにかられる時期がやってきます。ホームシックをやり過ごしながらも、粛々と生活していく人もいますが、我慢できずに道半ばで帰国してしまう人もいます。
次のページでは、異文化適応障害の代名詞でもある「パリ症候群」について、解説します。