そういった中から人気を集めたサイトやメルマガが、「本」になるケースが増えています。インターネットの世界は無料コンテンツが常識です。しかし、多くの人がお金を払ってでも知りたいと思う「情報価値」があれば、「本」として商品化することも夢ではありません。
「本」を書いて印税生活!
作家を目指さずとも、書くことが苦ではない、それを表現手段にしている人にとっては、チャレンジできる“夢”。書く作業を仕事にしている方にとっては、著書を持つことは一つの“目標”でもあります。
そこで、「本を出版するには?」さらに「売れる本を書くには?」どうしたら良いのか!? そのテーマに取組むオンライン講座を、朝日新聞社出版の大森千明氏のご協力をいただき企画しました。
大森氏を講師にお招きして、『売れる本の書き方講座』を6回の連載でお届けします。
【第1回】夢の印税生活へチャレンジ!
<INDEX>
・はじめに
・出版企画は、誰がどのように立てているのだろう?
・出版業界の企画書とは?
・売れるかどうか、企画書のどこを見て判断?
・質議応答タイム
<大森千明氏プロフィール>
1971年朝日新聞入社。経済記者としてスタート。95年にアエラ編集長。その後出版部門に移り、週刊朝日編集長を務める。2001年1月朝日新聞の出版部門を統括する出版本部長に就任。03年2月から出版担当付。03年4月から、帝京平成大学非常勤講師。著書に『不自由経済』『嵐の中のサラリーマン』(いずれも共著、朝日新聞社刊)等がある。
はじめに
今回、小生の話に先がけて実施されたアンケート調査(あなたの一票)で、約8割もの方が「是非本を出版したい、印税生活に憧れる」と回答されたと伺っています。初めに申し上げますが、「売れる本」はそう簡単に書けません。皆さんご承知の通りです。
いま、「目指せ印税生活」みたいな本が、ちょっとしたブームになっています。これは「自費出版」でお金儲けをしようとする会社が背後にいるせいもあります。
とは言え、可能性はあります。その可能性を増やすヒントを、小生の話の中から、是非つかんでいってください。
出版企画は、誰がどのように立てているのだろう?
それでは、出版企画がどのように立てられているのか、出版社の制作現場からお話していきます。出版企画は、すべて社員がやっている会社もあります。しかし、外部の人材、例えばフリーの編集者に、かなり任せているところも増えています。フリーの編集者といっても、半ば常駐している人もいます。この場合、仕事自体は社員と変わりません。一冊ごとの契約で手伝うケースもあります。
時折、企画を持ち込んでくるフリーの方もいます。編集プロダクションから企画を持ち込まれることもあります。いずれにせよ、社員のプロデュ-サー化が目立ち、持ち込み企画の比率は年々増えています。ただ、個人が出版社に直接持ち込むケースは非常に少ないと思います。
出版社も普通の会社と同じように、年度始めに予算を立てます。売り上げや利益、経費などの項目ごとに数字が打ち出されます。当然、年間何冊出すかは決まってきます。少なくとも、年の前半くらいは、企画の中身まで確定しています。
予算を上回る点数が出れば、問題はありませんが、下回ると大変です。予算が達成できないからです。編集者は、必死で企画をひねり出すしかありません。出版点数はこのところ年々増え続けています。ただ、点数をだすことに重点を置くと、中身が追いつかず、収支が悪い、つまり赤字の本が増える。逆に、点数が出ないと、予算を達成できない、というジレンマに陥っている出版社は多いです。こうした事情も持ち込み企画を増やす要因になっています。
企画会議の頻度も会社ごとに別々だと思います。ある大手出版社の場合、ほぼ毎週開催されます。社員編集者は最低でも数件の企画を提案しますが、ひとつも通らないことも多いようです。
会議では、企画書のほか、提案する社員が出した本の収支が一覧表にされた資料が配られます。ベストセラーを連発している社員は鼻息が荒く、赤字の本しかだせない社員は肩身が狭い、ということになります。
企画が通らなければ、編集者は飯の食い上げ。ある中堅社員は「企画会議の前の日は気分がわるくなる。要はうつ状態」と明かす。プレッツシャーは大変なものです。
一方、大ベストセラーを連発することで有名な某出版社はもっと厳しい。社員のほとんどは中途入社。ベストセラーが出ない、企画が通らない。別に退職を勧告されるとか、いやがらせをされる、といったわけではないが、いたたまれずに、かなりの社員が辞めていきます。
業界の老舗出版社はつい最近まで、企画会議は2、3ヶ月に1回。「ノルマもなく、好きな本をゆっくり作れた」。ところが最近の出版不況で、社を取り巻く環境はガラリと変わり、今は月1回のペース。「昔は会議に1本も出さなくても、文句など言われなかった。最近は、出せ出せとうるさいうえ、売れそうもないと却下される。いい本を出したいという出版人の気概が全体に消えてきた。」とぼやきまじりに述懐しています。
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