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売れる本の書き方講座【連載1】(2ページ目)

最近、人気メルマガやサイトから「本」が誕生しています。秘かに出版を目指している方、多いのでは? そこで、業界のプロフェッショナルを指南役にお招きして、売れる本を書くには?をテーマにお話いただきます。

執筆者:塚田 祐子

出版業界の企画書とは?

いったい出版業界の企画書とはいかなるものなのか、ちょっと紹介してみましょう。

ここにある中堅出版社のサンプル(企画書)があります。A4で2枚ほど。一番上に事務処理に必要な企画番号があります。作成者は社員。実質的には持ち込みだったり、フリーの人が担当だったりする場合は、社員の下に担当者の名前が記入されています。

まず、刊行予定の日時。そして「種別」。つまり、単行本か、文庫か、新書か、ムックかという区分けです。続いて書名、著者・編者。訳者。ここには簡単な「著者の経歴」、すでに出版経験がある人は、その書名と実績、つまり販売部数です。

小説家などは過去の出版例が、一覧表になって付いています。「ページ数、部数定価、印税率」については(仮)と注をつけた上で、数字が並んでいます。そして企画の「内容と趣旨」があります。大まかな内容を簡潔にまとめたものです。ほかに、「読者対象」と「広告・催事」の欄もあります。

■出版企画書の主な項目
・書名(タイトル案)
・著者、編者/著者の略歴 ※著書がある場合(書名、販売部数)
・企画の目的、狙い
・内容の概略
・版型、予定ページ数
・発行予定
・予定部数(初版)、予定価格、印税率
・類書情報(自社/他社) ※書名、出版社、販売部数、版刷数
・読者対象
・宣伝、販売
・売上予測、重版予測

出版社によって企画書の形式はかなり違うとは思いますが、中身は似ています。どこも意外と少ない枚数です。だいたいA4で1枚、多くて2、3枚です。

売れるかどうか、企画書のどこを見て判断?

本の販売はここ数年落ち込むばかり、出版社は「売れる本」の筆者、つまり才能を発掘するのに懸命です。競争は厳しいが、逆に言えば、チャンスが多い、というわけです。

昔は少々損をしても、「自分が出したい本を出す」という志がある編集者が多かった。売れることと「いい本」とは違いますが、出版不況が加速する中で、そんな余裕がある会社は減り、「売れるかどうか」だけで判断されることが多くなりました。

企画会議では、端的に言えば「この本は売れるかどうか」を議論します。その一番の判断材料が「内容」と「読者対象」です。過去にベストセラーをたくさん出している作家、評論家の場合は、出版の是非ではなく、「この本はどれくらい売れるか」に絞って議論します。つまり、初版何万部にするか、という判断です。

出版は初めてという人は、原稿が出来上がっているケースがほとんどです。原稿を読んで売れるかどうかを議論します。ところが、「売れるかどうか」、ベストセラーの条件というのはそう簡単ではありません。「ユニーク」、または「新しい」とか「感動」を与えるとか、「ユーモア」にあふれているとか、いくつか条件らしきものはあります。ただ、それがあれば売れるか、というとそうでもありません。編集者の経験、カンみたいなもので判断されることが少なくありません。

以上、第1回目はテーマへの導入として、出版社ではどうやって企画が立てられ本にしているかについてお話しました。次回は、「売れる本の3要素とは?」についてお話します。

それでは、ここまでで何かご質問はありますか?


■□< 質議応答タイム □■


ガイド:
出版業界というと「文化をつくり出す」というイメージがありましたが、そんな悠長な時代ではないのですね。本づくりもビジネス。正に、メーカーそのものですね。それでは、いくつかご質問をさせていただきますので、よろしくお願い致します。

「持ち込み企画の比率は年々増えている」というお話でしたが、割合としてはどのくらいですか?

大森:
会社によってばらばらだと思います。大手は低く、中小は高いはずです。ただ、個人の持ち込み企画は割合で言えば、ほとんどゼロに近いのではないでしょうか。フリーの編集者とか、プロダクションなら会社によっては比率が半分を超えていると思います。とにかく、本を出したいなら、編集者や出版社の知り合いを探すことです。

ガイド:
出版は初めてという方の原稿(又は企画書)を読まれて、大森さんが“これは売れそう!”と思われる部分というのは…? 経験とカンみたいなもので判断とありましたが。その辺をもう少しお聞かせいただけますか。

大森:
出版が初めてという方は、原稿ができていないと、まずお断りします。

最初に何を見るかというと、原稿のスタイルです。評論とか、エッセイなら100%駄目。これはプロのジャンルです。とにかく何かを言いたい、自分の主張を聞いてもらいたい。こんな原稿は一人よがりな文章が多いのです。自分では、論理が素晴らしく、「プロ」より優れている、と主張されるので、編集者としては困ってしまいます。わかりやすく、やわらかく、おもしろくあきさせない。こんなテクニックは至難の技です。

企画書の場合はタイトルだけ見ます。「不便だな」とか「ここがわからない」と感じていたネタならいけるかもしれない、という感じを持ちます。それと実際に体験したこと、見たり聞いたりしたこと。これを中心に構成されているかどうかも鍵になります。企画が浮かんだら、書き出しの部分だけ原稿を書いて、友人や、家族に読んでもらうこと。ここで「おもしろい!」と言われれば、可能性があります。

■連載のバックナンバー
第1回:出版企画は、誰がどのように立てているのか?
第2回:売れる本の3要素とは
第3回:何をテーマに書いたら売れる?
第4回:出版社は、どうやって書き手を見つけているのか
第5回:出版社への売込み方法
第6回:気になる印税、新人は何%?

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冊子やレポートを自費制作し販売しよう会議は2、3ヶ月に1回。「ノルマもなく、好きな本をゆっくり作れた」。ところが最近の出版不況で、社を取り巻く環境はガラリと変わり、今は月1回のペース。「昔は会議に1本も出さなくても、文句など言われなかった。最近は、出せ出せとうるさいうえ、売れそうもないと却下される。いい本を出したいという出版人の気概が全体に消えてきた。」とぼやきまじりに述懐しています。

出版業界の企画書とは?、次ページへ続きます>>
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