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ドイツ介護保険から何を学ぶべきか(3ページ目)

日独の介護保険比較記事の3回目。日本の介護保険はドイツを参考に作られましたが、大きく違う部分もあります。ドイツ介護保険との比較から、今後の日本の介護保険制度のあり方について考えます。

執筆者:宮下 公美子

ドイツでは看護師と介護職の待遇は同等

ドイツでは、4年ほど前に介護士の教育体制を改革。3年間の専門教育を受けている看護師と肩を並べられるよう、介護士も3年間の専門教育を受けることが定められ、同時に、待遇も同等とすることになりました。この改革には、看護師団体が猛烈に反発したそうですが、政府は押し切ったそうです。子どものいない23歳以上の人の介護保険料負担を増やすことといい、ドイツは思い切った施策をとるものだなあと感心します。末期的な日本の政治状況を見ていると、この政策立案力、遂行力はうらやましいですね。

しかし、「同じ待遇にせよ」と政府が言ったところで、日本では「そんなの無理だ!」の声が上がりそうです。そもそも、民間企業に対して政府が給与水準まで介入することはできません。ドイツにおいても、まだすべての施設、事業者が同水準になったわけではないとのこと。ただ、タリフ(日本で言う公務員の俸給表のようなもの?)が示され、それに準ずるようにという指導がされたそうです。

といっても、待遇改善にあたり、介護報酬が引き上げられたわけでも、公的な助成があったわけでもありません。あくまでも各施設の自助努力によって水準引き上げを行ったとのこと。そのため、多くの施設で正職員が減らされ、非常勤職員やボランティアが増えたと言います。自分たちの給与が上がったがために、結果としてサービス水準が低下したことを、現場の介護士はどう感じているのでしょうか。

日本ではいま、施設や事業所の自助努力で職員の給与を上げることはほとんど不可能です。
しかし介護保険がスタートした初年度、多くの施設が黒字でした。その黒字幅が大きかったために施設の介護報酬が高すぎたと見なされ、改定のたびに報酬を削られました。そして介護報酬が下がるたびに人件費が削減され、非常勤職員が増えていきました。

初年度、黒字になる見通しが立ったときに職員の待遇改善のためにもっと利益を還元することはできなかったのでしょうか。そうしておけば介護報酬を必要以上に削られることもなく、こんな人材不足にもならなかったかもしれないのに、という気持ちが拭えません。これも今さら言ってもしかたがないことではありますが。

いつかは日本でもドイツのように、介護職も看護師と並ぶ高い専門性を身につけ、同等の待遇を勝ち取りたい。私は心からそう思います。
人材不足の今、制度変更したタイミングには疑問がありますが、厚生労働省が介護福祉士や社会福祉士の養成時間を増やし、資格取得のハードルを上げた意図はそこにあると思います。まずは介護職の知識、技術のレベルアップを図り、専門性を身につけてもらおうということです。

つまり、待遇改善を実現するには、サービス、そして介護職自身の質の向上が前提条件だということ。そのことを、まずは現場の介護職も強く意識する必要があると思います。



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