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ドイツ介護保険から何を学ぶべきか(2ページ目)

日独の介護保険比較記事の3回目。日本の介護保険はドイツを参考に作られましたが、大きく違う部分もあります。ドイツ介護保険との比較から、今後の日本の介護保険制度のあり方について考えます。

執筆者:宮下 公美子

日本の介護保険のこれからのために

2008年5月、ドイツの制度にならって日本でも軽介護者を対象外にする、あるいは負担を2割に引き上げるなどの給付抑制案が財務省から示されました。ドイツや韓国に比べると、日本の給付水準が高いのは事実です。だから引き下げてもいいだろう、という論理の展開は強引ですが、現状の給付水準は決して下げるわけにいかない、と胸を張って言えるだろうかとも思います。

私自身は、軽介護者を一律対象外にしたり、生活援助を不可にしたり、ましてや利用の際の自己負担を2割にするなど、あってはならないと思っています。ドイツの軽介護者がどうやって生活を維持しているのか、また、軽介護状態でサービスが入らないことで介護度の悪化が早くはないのかなどについての情報を持っていないので、ドイツについては何とも言えません。しかし、少なくとも日本では、軽介護状態で介護サービスが入ることにより、軽介護度のまま維持されているかたは多いと思います。

逆に言えば、サービスを取り上げられたら、介護度が悪化することが容易に想像できるかたが多いということです。しかし一方で、まだ介護が必要とは思えないのに認定を受け、ヘルパーを家政婦代わりと思ってサービス利用している利用者がいるのも事実です。

ここで大切なのがケアマネジャーの存在です。
あなたにはまだ介護は必要ないから要介護認定の申請はもう少し待ちなさいと諭したり(これは行政も)、もっとサービスを利用したいという利用者に、あなたにはこれで十分、あとは自分でやることが身体状況を悪化させないために大切なこと、と説得したりする。それは、介護計画をマネジメントしていく専門家であるケアマネジャーの大切な役割です。

もちろん、そうしたことにしっかりと取り組んでいるケアマネジャーもたくさんいます。しかし、利用者の要望にひたすら応えることが自分の務めだと勘違いしているケアマネジャーや、手間を省くために介護度別にほとんど同じケアプランを立てているケアマネジャー、併設の介護事業所への利益誘導のため不要なサービスを組み込むケアマネジャーの話を、残念ですが今も少なからず耳にします。

そうした適正でないケアプランが少なくない現状では、給付にムダはないとも、給付水準を下げるべきではないとも言い切れないように思います。

ケアマネジャーのみなさんに頑張っていただくことで、行政から適正化などという指導を受けるまでもなく、必要な人だけが必要にして十分なサービスを受けるようにすることは、可能ではないでしょうか。そして、ケアマネジャーだけでなく業界関係者みんなで、給付水準を下げるなどと外から余計な口をはさまれないよう、提供しているサービスが利用者を支えるために真に必要かどうかをきちんと見直し、考えていくことも必要だと思います。

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