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社会福祉士を実務経験なしの40代で取得……資格をとって考えたこと

私は社会福祉士資格を実務経験なし、40代の社会人として取得しました。社会福祉士取得を決意し、合格後に仕事に就いてから感じたことをまとめました。介護の知識・実務経験なしのゼロから社会福祉士の資格取得を目指す方のご参考になればと思います。

執筆者:宮下 公美子

実務経験なしで社会福祉士に

実務経験なしで社会福祉士に



私は40代で社会福祉士の資格取得を決意しました。無事合格し、現在は援助職ではありませんが、社会福祉士の資格を生かした仕事をしています。実務経験なしで社会福祉士資格を取得しようとしている方の参考になればと思います。
 
<目次>
 

実務経験なし40代はいない?スクーリング仲間はみな福祉系の仕事を

私が社会福祉士を取ろうと思ったのは、社会福祉を幅広く学びたかったから、人に寄り添う仕事をしたくなったから(関連記事『16本のレポート書きに追われ続けた半年』)です。福祉系大を卒業したわけでも、福祉系の仕事の実務経験もなしの状況から取得を目指しました。

受験勉強をはじめた頃はわからなかったのですが、通信講座のスクーリングに行って気づいたのは、通信講座で社会福祉士を目指す人たちの大半が現在既に福祉系の仕事に就いている、という事実でした。

とはいえ、社会福祉士試験合格者の6割強は福祉系大学を卒業した人で、かつ6割強は30歳以下です。合格者の多くを新卒者が占めているのです。そうした中にあって、通信講座に通ってまで社会福祉士を目指すのは、現在福祉・介護系の仕事に就いていて、その中でキャリアアップを目指す人が中心になるのは、今考えれば当たり前のことです。

しかし、「興味がある」というだけで社会福祉士取得を目指していた私にとっては、スクーリングで知り合った人たちの誰も彼もが現職だったことは少しショックでした。「実務経験」も「仕事に就くあて」もなく、「ただ資格を目指す」という自分の宙ぶらりんさが居心地悪かったのです。

もちろん、私も自分なりに真摯な思いで受験を決意したつもりでした。しかし、いざソーシャルワーカーやケアマネジャー、保健師として現場で経験を積み、社会福祉士資格の必要性を実感して受講する人の前では、「人に寄り添う仕事を”してみたくなった”」という曖昧な動機は、とても口にはできません。スクーリングではいつも「畑違いで場違いですが、フリーのライターをやっています」という枕詞で自己紹介をしていました。
 

社会福祉士として、実務経験ゼロで働けるのか

そして、どうにか資格を取得しました。しかし、ライターの仕事を捨ててまで援助職に就く決意ができません。グズグズしていたら、あっという間に1年が経ってしまいました。せっかく資格を取ったのに何をしているんだろう……。

そんな思いが募り、とにかく現場を経験しようと、有料老人ホーム介護職に応募しましたが、全敗に終わりました。この顛末も別記事に書いています(関連記事『「ガイド宮下、介護職を目指した就活で全敗』)。

その後、行政の介護関係の仕事をすることになったのですが、援助職ではありません。ただ、相談業務であり、社会福祉士の知識や技術(ほとんどありませんが‥…)を活かしている実感があります。

介護の現場を見る機会も多く、取材で施設を訪れたり、現場で話を聞いたりする”だけ”だったライターより、少し現場に近づけた気がします。わずかながら、社会福祉士の資格を取った成果でしょう。

しかし、今の仕事をはじめ、社会福祉士の研修も受けて感じたのは、やはり「実務経験」が持つ力。研修で一緒になった方と話すと、現場を知り、実務経験を積んできたからこそ出る発言とその説得力を痛感します。そんなことを感じていたとき、読者の方から、次のようなメールをいただきました(原文を少し整理しています)。

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私はアルバイトをしながら、通信制大学の福祉系学科に在籍し、社会福祉士やソーシャルワーカーを目指して勉強している20歳です。アルバイトは、福祉とはかけ離れた仕事です。また、福祉の現場で働いた経験も介護の経験もほとんどなく、バイトの合間に老健でボランティアを少しした程度です。

介護福祉士やケアマネとして働きながら社会福祉士の資格を取得した方たちのお話を聞くうちに、介護の知識も経験もほとんどないまま社会福祉士の国家資格だけ取得して働こうと思うのは甘いのか、と思うようになりました。

まずはヘルパーや介護福祉士の資格を得て現場経験を積み、その後社会福祉士やケアマネの勉強をするほうがいいのでしょうか 。(中略)福祉職に就くときは「無資格・経験なし」でも大丈夫なのでしょうか?
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この方の疑問は、まさに私自身が感じていたことと同じでした。社会福祉士の資格”だけ”取得して働こう、というのは甘いのでしょうか?
 

実務未経験でも社会福祉士として就職できるが、覚悟は必要

この方への返信に、私は次のように書きました(一部抜粋)。

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もともと、社会福祉士は「資格を取ってからが勉強」と言われています。実務経験があってこそ生きる資格であり、そういう点ではケアマネジャーと共通するものがあります。

しかし、新卒で社会福祉士を取得して就職しているかたもいるわけで、実務経験がなくては就職できない、ということではありません。◯◯さんはまだ20歳代ですから、十分就職可能だと思います。ただ、実務経験があるかたに比べると、未経験はどうしてもハンデになります。
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そうなのです。私自身、援助職ではないにしろ、社会福祉士の資格を生かした仕事に就けたわけで、実務経験なしでも就職は可能です。ただ、未経験というハンデは就職活動時にも感じますが、実際に仕事を始めてからのほうが強く感じるかもしれません。仕事を始めると、知識、技術、人間性など、自分の足りない部分がイヤというほど見えてくるからです。

たまたま、今の職場には社会福祉士はいませんが、実務経験のある社会福祉士がいたとしたら、一層自分の力不足を痛感することでしょう。経験から培った「引き出し」(援助手法の多彩さ・人脈・情報量など)の多さと大きさが、仕事で大きな力を発揮します。その引き出しが少ない状態からスタートする実務未経験者は、「人間力」(人格・人間性)を発揮することとあわせ、相当の覚悟と努力が必要になると思います。

しかし、だからこそ、社会福祉士という資格、この資格を生かしてできる仕事は面白いと思うのです。自分のこれまでの人生を振り返ると、成功体験以上にさまざまな挫折や苦境がありました。そうしたさまざまな人生経験が、社会福祉士としてする仕事では、不思議と生きてくる気がするのです。覚悟と努力も、必ずこの仕事をしていく上での力になると思います。

今後、私はどのような仕事をしながらこの資格を生かしていくのか、実のところまだはっきりしていません。しかし、ライターとしてだけではなく、何らかの形で社会福祉士資格を生かせる仕事をしていきたいと思っています。この資格の面白さ、奥深さをもっと味わいたい、と思うからです。

社会福祉士は、実務経験を積んで取得しても、取得して実務経験を積んでも、いずれにせよ取得後もずっと学び続けることが求められます。そして、実務経験、人生経験によって深められるのです。

社会福祉士の資格取得を思い立った方は、できるだけ早く、取得に向けて具体的に動き出してください。早く取得すれば、それだけ経験値が高まり、援助場面で力を発揮する「引き出し」が増えるのです。

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