「NY株」っていったい何なのか?をまず整理
アメリカ株価の魅力は、リターンの大きさよりもリスクが小さいことにある。世界最強の安定した経済力を持っていることは誰にも否定できない。 |
「NY株」といっているのは、「ダウ工業株30種平均株価」のことです。このほかに、通称で「ダウ平均」、「NYダウ」、「ニューヨーク株価平均」などとも呼ばれています。日本でいう「日経平均株価225」などと同様の、米国の代表的な株式指標です。
ダウ・ジョーンズという会社がアメリカのさまざまな業種の代表的な銘柄を選出して、それら30銘柄の平均株価をリアルタイムで公表しているものです。正確にいうと、「ダウ株価」には三種類あるのですが、その中でも、この「ダウ工業株30種平均株価」は最も有名なものでした。
「工業株」と日本語訳されてしまったので、製造業のセクターなのかと思われがちですが、工業以外の業種に属する企業も構成銘柄に含まれています。これは、industrial を「工業」と最初に訳してしまったことから生じる大いなる日本人の勝手な誤解です(こういう誤訳はあちこちにある)。
製造業でいえば、化学のデュポン、電機のゼネラル・エレクトリック、自動車のゼネラルモーターズ、航空機のボーイングなどの代表的な巨大企業が名を連ねていますが、金融のアメリカン・エキスプレス、娯楽・メデイアのウォルト・ディズニー、小売業のウォルマート・ストアーズ、外食のマクドナルド、飲料のコカ・コーラなど、あらゆるセクターの銘柄が含まれています。
当初は、ダウにはニューヨーク証券取引所の銘柄ばかりでしたが、今ではそのような制約はありません。事実、インテルやマイクロソフトのようにナスダック(NASDAQ)に上場している銘柄も選ばれています。(これには、ニューヨーク証券取引所の威信低下も影響しています。ニューヨーク証券取引所が必ずしも米国を代表するマーケットではなくなっているのです)
日本のマスコミは、米国株の代表として「ダウ工業株30種平均株価」を真っ先に取り上げますが、実は米国株価の指標としてはその有用性を失いつつあります。銘柄数が30と十分なサンプル数でないことと、株価が単純平均で計算されますので、株価の高い銘柄の動向に大きく左右されやすくなります。また、株式分割の際は、分割後の指数への影響が低下するという欠点も持っています。
現在の米国株価の指標としては、S&P500やナスダック指数の方が、信頼性が高いといえます。ちなみに、S&P500は、スタンダード・アンド・プアーズが、米国株式市場で取引されている500銘柄を選んで、時価総額加重平均にて算出された指数で、米国の全銘柄の80%をカバーしています。
ナスダック指数は、ナスダックで取引されているすべての株式を対象とする時価総額加重平均指数です。以前はやや格式の低い上場先と思われてきたナスダックも、いまではニューヨーク証券取引所や東京証券取引所と何らヒケを取らない世界的な取引所となっています。ナスダック指数も、信頼性の高い株価指標と評価されています。ただし、1971年からの新しい指標ですから、超長期のデータサンプルを持っていません。
【参考記事】知っておきたい世界のベンチマーク
今の状況で、米国株の「株高」現象を、自分の投資政策の中でどう解釈したらいいのか?次のページでご案内します。