意識的な投資を必要としなかった戦後50年
日本人は世界的にも数字や経済に強い民族です。投資をしないのは民族性だというのは、ちょっと不正確な言い方です。正しくいえば、戦後50年の経験が日本人を投資から遠ざけた!となります。次のようなキーワードが今の日本人の観念を作ってきました。- 3倍強くなった日本円
- 劇的に上昇した地価
- 利回り6%超の預貯金と保険商品
- 終身雇用と年功序列賃金
- 退職後の短い余生
1ドル=360円の時代から100円の時代に突入して、国際的に日本人は急にお金持ちになりました。昔の海外旅行といえば買い物ツアーのようで、日本人は空港で出国手続きを済ませて外貨の世界に入った途端に、みんなが富豪に変身したような気分でお金を使っていました。
戦後50年に、日本の地価は未曾有の高騰をしました。銀座の一坪は600倍になりましたが、日本国中で地価が上昇したのです。バブル期には、日本列島土地代全部でアメリカ合衆国を4つ買えるなどといわれたものです。
土地神話は庶民の家庭にマイホーム願望を植えつけました。事実、無理してマンションを買っておけば5年で2倍の価格で売れたなんてことがザラにあったのですから、みんなせっせと住宅ローンを借り入れました。
株式投資をしていたのはほんの一部のマニアックな人たちに過ぎません。なぜなら、預貯金や保険商品で6%超の確定利回りを実現しており、10年で資金が倍になる程度の運用を金融機関が元本確保でしてくれていました。今では考えられない環境です。これも、高度成長する企業の旺盛な資金欲が家計から資金を吸い上げていた、日本特有の構造でした。
元本確保の運用で資金が10年で2倍になり、強いレバレッジを効かせたマイホーム取得がさらに大きな資産形成となり、その上に、企業の終身雇用制が中小・零細企業にまで浸透し、退職後も毎月30万円近い公的年金がもらえる体制ができていたら、だれが老後の生活費の心配などして投資をしようと思うでしょうか?
潜在的な資産運用ニーズ
今や、日本経済は韓国、中国などの新興国との過酷な国際競争にさらされています。海外に出て、日本人が特別に裕福だと感じるほどに円高なわけでもなく、むしろ海外から外国人に来てもらわなければ、観光産業が自立できなほどの依存関係にいます。また、世界一の借金大国となったので、超低金利政策を止めることができません。かつて預貯金や保険商品の利子、配当で食べていけた年金生活者は元本を取り崩してしのいでいます。地価が上昇するのは、首都圏の一部のエリアで、地価の下落と2極化傾向が続いています。
企業は早期退職勧告や高齢者の減俸を当たり前のようにくり出すようになり、いつまで働いていれるか雇用主頼みの不安定な状況に置かれました。それなのに、寿命は延びる一方で、退職後のリタイアメント生活はかつての5年間からいまや30年間となり、余生というのどかな言葉ではとても語れません。人生の長さが倍になり、約束されていた収入が減り続けているのです。
あなたは給料の出なくなった人生の3分の1をどのように暮らしますか?
ここまで劇的な環境変化をした今となっては、海外の金融先進国と同様に国民一人ひとりが、自分のために金融資産を地道に増やしていかねば生き抜けないことが明白です。違う言い方をすれば、かつての日本円と不動産だけに依存していた資産運用から、普遍的で合理的な資産運用への脱皮が国民的課題です。
投資したくない恐怖心の共有
ここまでは、投資の必要性を感じることができなかったマクロな時代背景のお話でした。実は日本人が資産運用をしないワケがもうひとつあります。それはだまされてみじめなことになりたくないという気持ちです。投資に関係する詐欺事件から自分を守ろうとする恐怖心が、正当な資産運用までも遠ざけているのです。この恐怖心はもちろん賢明な心理です。自己防衛することは大切です。思いおこせば世間を騒がせた投資詐欺の数々。豊田商事事件、オレンジ共済事件、未公開株不正販売事件、平成電電詐欺などなど。最近ではFX詐欺やビットコイン詐欺まであります。
しかし、怪しい話と真っ当な話を見分けるポイントは必ずあるはずです。「元本確保で高配当!」こんなうまい話を聞いたら要注意です。なぜなら、それはお金の原則に反しているからです。まっとうな世界に、「ノーリスク、ハイリターン」はありません。それでも、はまってしまうのはお金の魔力です。
私たちは資産運用の必要性を理解し、怪しい話に近づかない賢さを持ちながら、理性的にお金と付き合っていくことができます。そのために失敗しない資産運用の見分け方をご紹介します。
- 投資した人のリスクが分かることか?
- 法律や社会正義に反していないか?
- 信念を持って快適に続けられることか?
- 世界の発展に役立っているか?
- 歴史の淘汰から生き残ったものか?
- 期限付きの目標を付帯できることか?
すべての日本人は、お金の原則に満たされた、極めて常識的な資産運用をしていくスキルを身につける必要があります。そのための節度ある投資行動をご案内しています。
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