■「○×手当」がなくなって喜ぶ人もいる?
結婚していて奥様(配偶者)が専業主婦である人、子どもがいる人、住宅ローンを抱えていたり家賃を払っている人からすると「○×手当」の廃止はひどい仕打ちに思い得ます。しかし、「○×手当」を廃止した方がいい!、と思う人もいます。例えば、独身の中高齢者、持ち家がある方、共働きをしている世帯などです。
AさんとBさんは会社で同じ仕事をしているとします。責任も実績も仮に同じだとします。だとしたら、2人のお給料は当然のことながら同じ金額もらえるのがフェアであると感じますよね。
しかし、このときAさんは独身の45歳で持ち家にすんでいて、Bさんは2人の子持ち(奥さんは専業主婦)で住宅ローンを抱えているとします。仮に配偶者手当、扶養者手当(子どもの分)、住宅手当としてBさんには毎月5万円つくとしたら、2人の給料の差は一気に開きます。同じ仕事をしているのになんと年間で60万円も給料が違ってきてしまうのです。なんだかヘンですよね?
昔は、「働き手=男」であるのが当たり前で、「男は30歳前後で結婚して子どもを作るもので女性は家庭に入る」「家庭を持ったら40歳前後で住宅ローンなどを使って家を買う」というのが典型的な社会のパターンでした。ほとんどの社員は同じパターンをたどっていたわけです。
そのため、社員のライフステージに見合う形で「○×手当」という形で給料を追加しても、社員同士の不公平感はありませんでした。もちろん、年齢に従ってポストも上がっていくのも一般的でしたので、年齢給という制度にも特に問題はなかったわけです。
しかし、今では男性も女性も働きますし、独身のまま働く選択もあれば家庭を持つ選択もあります。同じ家庭でも共働きを選ぶ夫婦がいます。また、結婚する年齢にも大きな開きが出るようになっています。
本来、こうした人生の選択と給料の多い少ないは別物であるはずです。本来、給料は仕事の報酬ですから、現代において、「○×手当」というのが不公平なものとなってしまっているのです。ソニーや日立製作所の取り組みは「○×手当」によらない公平な給与体系を再構築しようとする動きの現れでもあるのです。