子育てする女性なら助かる制度……だが?
もちろんのことですが、第3号被保険者にも存在意義はありました。まず「個人の年金を守るために必要」であったことです。先ほど過去の経緯を説明しましたが、ひとりひとりが自分の年金制度に加入して自分の年金を受けられるような大改革が当時は行われており、どうしても専業主婦に自分の年金を受けられる仕組みを考える必要があったからです。これはつまり「子育てしており働いていない女性にも年金受給権を与える」という役割がありました。確かにとても大切なことです。実際、過去の制度をチェックしてみると20代後半の女性の33.3%、30歳代前半の女性の48.5%もの方が第3号被保険者になっていました(昭和63年の資料)。第3号被保険者制度が子育て世帯を支援する役割を果たしていたことが分かります。
しかし、残念ながらこうした状態は現在には当てはまっていません。現在第3号被保険者の中心は中高齢者なのです。20歳代後半の女性のうち第3号被保険者である人は19.2%、30歳代前半の女性でも35.0%にしかすぎません(平成18年の資料)。晩婚化、女性の社会進出など理由はいろいろあるでしょうが、「子育て世帯を支えるための第3号被保険者」という前提は崩れつつあります。
むしろ子育てを終えた女性が第3号被保険者であったりします。50歳代前半の女性の第3号被保険者の比率は31.5%から37.4%に上昇しました。50歳代女性では、21.1%から29.1%に高まっています(昭和63年と平成18年の比較)。
もしかすると、「現在、実際に第3号被保険者である人は子育てしていない」状態になりつつあります。言葉は悪いかもしれませんが、子育ても終え生活に余裕がある奥様方が保険料タダ、という恩恵を享受しているのかもしれません。そうしてみると、20歳代、30歳代の働く女性がこうした女性の国民年金保険料を肩代わりし、彼女たちはタダというのもおかしな感じがしませんか?
第3号被保険者制度はかつて一定の役割を果たしてきましたが、おそらくその役割は終えつつあるのではないでしょうか。これは女性と女性の間の世代間のかなり深刻な構造問題となっているのです。
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