プロローグ
梅雨も明け、急に暑くなった8月の初旬。以前、行方不明ファイルの捜査に協力してくれた後輩の吉田君がひょっこり訪ねてきました。
「先輩、ご無沙汰しています。今日はちょっとご相談したいことがありまして…」と神妙な顔の吉田君。
「久しぶりだね。何か困ったことがあるような様子だけど、僕にできることだったら相談に乗るよ。」と酒井警部補。
「実は自宅に変な電話が掛かってくるのです。先日は、私が交通事故を起こし示談金が必要と言われ妻が慌ててしまって…」 と吉田君が話を切りだしました。
「その時は、私と連絡がとれて事なきを得たのですが、またこういうことがあるかと思うと心配でしょうがありません。」と吉田君。
「それは、典型的な振り込め詐欺だな。警察庁によると、振り込め詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺の被害額は2006年前半だけでも117億円にも達している。」と酒井警部補。
「そんなにあるのですか。被害を受けないための対策はないでしょうか?」と不安げな吉田君。
「すぐに振り込まないで、振り込む前に必ず誰かに相談するのが基本だが、色々と手口を変えて人間心理の裏をついてくるので、これをすれば絶対ということはない。」 と酒井警部補は話を続けました。
「できれば、電話の会話を録音して冷静になってから聴き直せば、詐欺だということに気が付くし、その後の捜査にも役に立つ。」と酒井警部補。
「電話の会話を録音するといっても、録音機器は高そうだし…。」と尻込みする吉田君。
「うん。専用の録音装置やICレコーダーを使うと高くつくが、パソコンがあれば2,500円くらいでできる。」と酒井警部補はパソコンで電話の会話を録音する方法について語り始めました。