ニューヨーク/ニューヨーク関連情報

障害のある人と壁をつくらないNYの人々

日本では、障害のある人へどう対応していくべきかという、小さなころからの教育がおくれているのではないか?

執筆者:溝口 弘恵


ハーレムにて、さり気ない障害者への対応に感動

10年以上前に、NYへ友人とツアーで来たことがある。終日フリーのそのツアーで一緒になった男性と、同じ九州生まれだったせいか意気投合し、NYへ着いてすぐにジャズのライヴなどを一緒に楽しんだ。最初は気づかなかったのだが、彼は、手に障害があった。

次の日は、私たち3人でゴスペルツアーに参加することとなった。ハーレムのコットンクラブというレストランで、ゴスペルを聞くというツアー。ソウルフードがバイキング形式でふるまわれた。店に入ってすぐのところで、若い黒人のウエイターが、客にそれぞれ皿をくばっていた。すると、ウエイターが同行した手に障害のある彼に、さり気なく「手を貸しましょうか?」と聞いたのだった。彼は「お願いします」と一言。

ウエイターが皿をもって、彼の食べたいものを盛りつけた。たったそれだけのことだが、アメリカ人の障害をもつ人に対する、押しつけがましくないさり気ない心配りに、感動した。アメリカ人は、親切を押し売りしない。まず、ヘルプが必要かどうかを当人に確認する。手を貸してばかりだと、手を貸してもらうのが当たり前になって、障害のある人たちが自発的に行動するという意欲を消滅させてしまう。だから、親切の押し売りは、よくないらしい。

『セサミストリート』で手話

手話
手話の英会話はASL(American Sign Language)
NYに住むようになって、特に子供をもってから気づいたのだが、アメリカ人は子供のころから、障害のある人に対する壁をつくらないように教育されているのだ。

日本では考えられないことだが、障害のある子供たちがモデルや登場人物だったりするのは、アメリカでは普通のことだ。トイザらスの広告に、ダウン症の子供たちがモデルとして出ているのを初めて見たときには、正直、驚いた。日本では、モデルっていえば、ルックスのよい子供ってのが当然だし。

子供番組の『セサミストリート』では、車椅子の男の子が出てきて、楽しそうに車椅子で動きまわったりする。つい最近では、聾唖の女の子が、手話でセサミに出てくるキャラクターたちと会話していた。教育ビデオでは、ダウン症の子もほかの子にまざってABCを歌い、アニメーションにさえ、車椅子の子が出てきたりする。

そのせいか大人社会でも、車椅子のニュースレポーターがいたり、スーパーマーケットでも、ダウン症の人がレジのわきで袋づめやカートの整理などして働いてるのは普通。アメリカでは、障害のある人をジロジロ見たりする人は、滅多にいない。さり気なく、「May I help you?」って声をかける人はいても。

どんな時でも、障害のある人たちへ親切に対応するニューヨーカーのエピソード 次のページへ。
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