代理出産を公表できない日本
動きまわることが大好きなアヤ |
代理出産によって子どもを授かった後に、良いことや困ることがあったりするのでしょうか?
美帆さん:
誕生したわが子の顔を見れば、勇気が湧いてくると依頼主夫婦は言います。「どんな苦難も乗り越えて、この子のためにがんばっていこう」と。こうした親としての気持ちの強さは、一般の親心と何ら変わりがないように思いました。むしろ、いろいろな障害を越えてきた分、子どもに対する愛情や思い入れは通常より強いのかもしれません。
一方、困ることは、閉鎖的な社会の壁です。アメリカと違って日本では、代理出産の出自は隠すのが一般的。そうしなければ、将来、子どもがいじめられるのではないか、差別されるのではないか、という懸念があるからです。
また、向井亜紀さんのケースのように、日本で代理出産であることを公にすると、法務省が出生届を受理しないという法的な障害が生じています。代理出産の子どもは日本の戸籍に入れず、米国籍のまま、日本で暮らしていくことになるのです。したがって、通常は、あくまで日本社会では「隠す」ことを前提に、日本人は代理出産を依頼しているようです。
日米の取材を通して、美帆さんが訴えたかったもの
おしゃべりなエリカ |
最後に、美帆さんからの感想などありましたら。
美帆さん:
賛否両論のある複雑なテーマを扱いましたが、私は医学書でもなく、情報本でもなく、まずは人間ドラマを描きたかったんです。理屈ではなくて、人の感情。代理母、依頼主、ドクター、代理出産にかかわる人たちの生の声を聞いてみたかった。いったん足を踏み入れた途端、引き込まれていくかんじで、日米取材はとてもやりがいのあるものでした。
どんな問題にしろ、外から批判するのは簡単と思うんです。簡単すぎるゆえ、偏見や誤解があっても気づかないこともある。当事者とまったく同じ気持ちになるのは不可能だとしても、どのような状況や想いで代理出産に挑んだのか、今どのようなことが行なわれているのか、といった現状を知ることは大切だと思います。私自身、取材してみて、何度も「こういうことだったのか」と、いろいろな新しい世界を知ることができました。読者の皆さんに、少しでも、そういう体験をしてもらえれば幸いです。
読んでみて、「代理出産にはやっぱり反対だ!」と感じたとしてもいい。どんな形にせよ、考えるきっかけになってくれればいいんです。日本国内では、代理出産の問題を議論する以前に、生殖補助医療の現状について知ることさえ、消極的なように思います。そういう意味では、性別、年齢問わず、不妊とはまったく無縁の方にも読んで欲しいですね。「産みたい」、「産みたかった」という女性たちの心の叫びに、ぜひ触れてもらいたいと思います。
【インタビューを終えて】
美帆さんの本を読んでから、私ももう少し若ければ、代理母になれたのにと残念に思った。双子を身ごもって、スイカが腹に二つ入ってるみたいな過酷な妊婦生活をしたけど、それでも人助けできるのならって、また妊婦生活や出産をがんばれる気がした。アメリカに永住権のある方はもちろん、これから日本でも代理出産が可能になる時代がくるかもしれない。代理母の条件にあう女性が、一人でも多く代理母となる人が、美帆さんの本を読んで増えてくれればと願っている。
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