最後の難関を乗り越えて

緑の布の塊だったバルーンがふくらんで、かわいい顔が登場!

緑の布の塊だったバルーンがふくらんで、かわいい顔が登場!

強い風もおさまり、午後からの作業は順調に進んだ。バルーンは上げる途中で強風にあおられるのが一番怖い。バッタの手足といっしょに、飛ばされる危険があるのだ。

そこで、ふくらませながら上げる作戦に切り替えた。バルーンについている送風機のスイッチが入り、少しずつ少しずつ、布の固まりがバッタに変わっていった。雨で濡れているところもしだいに乾き始める。

 

だんだんとふくらんで、その姿を現す、巨大バッタバルーン

だんだんとふくらんで、その姿を現す、巨大バッタバルーン

おしり、足、胴体と空気が入っていき、かわいらしい顔が現れた。スタッフがテントのような布をたくり上げ、静かに作業が進んでいった。やがて、くりくりとした瞳が現れ、触角がピンと張っていく。人間の大きさほどもある大きな瞳が、下から見上げるギャラリーたちを見つめはじめた。

 

写真左:室井氏、右:椿氏。バッタの姿を見つめる2人

写真左:室井氏、右:椿氏。バッタの姿を見つめる2人

14時、バルーンはパンパンにふくれ、完全にバッタの姿となった。いよいよ最終段階だ。スライダーを最上段まで上げる作業のみとなった。足場に上がっていた学生たちは、下に降りてそれを見守る。誰もが完成を待ちわびていた。

 

ガクン、という音と共に椎野の声が響いた。「スライダーが止まりました」スライダーを上げる機械(ウインチ)のパワー不足。パンパンにふくらんで風圧を受けるためだ。椿は思わずつぶやいた。「お金があれば、もっと強力なウインチにできたのに。こんなん、すぐに上がるのに」資金がない中での設備ゆえ、仕方がない。学生ボランティアにも頼らなければならない。トラブルで交換した設備の費用もかさんでいく。資金難がここでもスタッフたちを苦しめた。

バッタに関わった大人たちも、子どものような顔でバッタを見つめる

バッタに関わった大人たちも、子どものような顔でバッタを見つめる

「ガクン、ガクン」と4、5回、ウインチの電源が落ち、その度にガクッと全員が肩を落とす。室井が最後の決断を下す。「次に電源が落ちたら、完成にしよう」再びウインチのスイッチが入った。今度は電源が落ちない。「そのまま、そのまま」みんなの声に押されて、スライダーがするすると上がっていった。

 
「お疲れさま」「上がった!」歓声と拍手の中、作品『飛蝗』は完成した。