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沖縄移住ブームの陰で起きていること

沖縄移住ブームに沸く石垣市が移住希望者に注意を呼びかけています。文脈から伺えるのは、移住関連の建築ラッシュなどで過剰要求などの対応に追われる日々の辟易感、と思うのは私だけでしょうか。

執筆者:鈴木 雅子


団塊世代の沖縄移住ブームの陰で

美ら島移住の現実は‥‥
美ら島移住の現実は‥‥
沖縄移住ブームの先端地と言われ、住民票を持たない幽霊人口が5千人とも8千人と言われる石垣市が、ホームページ上で注意を呼びかけています。文脈から伺えるのは、移住関連の建築ラッシュなどで過剰要求などの対応に追われる日々の辟易感、と思うのは私だけでしょうか。

もちろん、移住者の増加は沖縄県全体の消費や住宅投資の増加など、経済的効果をもたらしてくれます。しかし、のどかな島の文化・人に馴染む努力をせず、都市部並みのインフラ整備を求めてくる移住者たちも多く、また、住民登録せず税金を落とさない人たちの存在が無視できない規模となり、石垣市の財政圧迫につながりつつあるようです。

以下に石垣市からのお知らせを一部転載します。

石垣島で土地売買、住宅等建築を計画されている皆様

石垣市に対し市道や農道など住宅建築を可能とするための道路認定措置を、建築後は道路舗装、排水施設の整備改善や防犯灯設置、低水圧改善のための水道管布設など、実に様々なインフラ整備の要望が寄せられています。石垣市では、財政難の事情等からその対応に苦慮しています。  

折から団塊世代の大量退職を目前に控えています。つきましては、石垣島への移住を希望され、土地売買や住宅等建築を計画している皆様には、次の点にご注意いただきトラブルを未然に防いでいただきますようお願いいたします。「自己決定・自己責任」の原則は、行政用語ではありません。不動産購入の計画や実践は慎重に、自己責任が原則です。くれぐれもご注意ください。

2.インフラ未整備地域でも住宅を建てたい、その前に
(1)財政難で整備要望にお応えできません。
住宅を建築後に、石垣市へ道路舗装整備や上下水道、防犯灯整備などのインフラ整備を要請する事例が増加しています。
国、地方を通した財政難の昨今、本市も財政状況が厳しいことから好転するまで当分の間、これらの要請にお応えすることは困難です。


移住してくる方は、海を一望できる風光明媚な土地に住宅を建てたがります。当然、インフラは未整備。石垣市に対して「何とかしろ」という要求が寄せられるのです。また、こうした建築物は台風時の被害が大きく塩害も発生しがちですので、建てた後でトラブル発生というケースも多いようです。

全文をお読みになりたい方はこちらから。
石垣市からのお知らせ
石垣市からのお知らせ



沖縄タイムスも指摘する石垣の移住問題

2007年9月5日の沖縄タイムス朝刊の1面にあるコラム「大弦小弦」で、同紙の記者である真久田巧さんが次のように書いておられました。

生計を立てるあてもなく移住してきて生活保護を受ける。当然ながら子どもの授業料や給食費は免除。それでいて年二回は実家に帰省する。結果的に市の財政を圧迫していると。

島の常識では考えられないような山奥に家を建て水道を引いてほしいと役所に要求してくる。職員の対応が意に沿わないとインターネットを通じて一方的に批判的な言い分を流す。行政いじめに手を焼いているのが現状だと嘆き節が続く。


コラムの全文は「大弦小弦」からどうぞ。 客観的な視点で物事を見つめる新聞記者が、これだけのことを思い切って書く、というのは、石垣の移住ブームを相当問題視しているのでしょう。

先日、離島で小学校の教師をしていた方に直接伺った話なんですが、逃げてきた人たちもまた多いとのことです。子供を学校にやれない。つまり住民票登録ができない人たちが結構いるため、学校ではそれに対応しなければならないと。また、離島によっては文明を拒否したかのようなテント生活者たちも多く、彼らは、市場や商店などのちょっとした仕事を手伝って小銭を稼ぎ、その他は自給自足‥‥。

日経ビジネスでは「団塊世代はお断り」の記事

そういえば、日経ビジネス 2007年5月14日号には、「もはや 団塊様、お断り~移住景気”を喜べない石垣島の苦悩~」という、飯村かおりさんの記事が掲載されました。引用します。

この「美(ちゅ)ら島」で今、深刻な問題が持ち上がっている。大量定年期に入った団塊世代を中心とする都市部からの移住者と地元住民とのあつれきだ。人口減に悩む地方自治体にとって、団塊世代は大切な“お客様”のはずだが、石垣島では逆に「団塊様、お断り」の空気が強まっている。

地域活動に協力しない、自治会に参加しない、地元に溶け込む気持ちがまるで無い、という人たちが増えているようです。その結果、地元住民対移住者という対立構造が発生し、癒しの島がギスギスとした人間関係に巻き込まれる恐れが出てきました。これをあおるのが、地元の理解を求める必要はないとばかりに強引にマンション建設や宅地開発を進める本土系業者たち。建築ラッシュによる大規模開発は、沖縄の自然にも悪影響を及ぼすでしょう。

いっとき、団塊世代の大量退職が日本経済に与える好影響ばかり強調されました。バラ色の団塊世代論です。沖縄でも団塊世代の移住をあおる風潮が、とくに不動産・リゾート関係に強いのは事実です。団塊世代の持つ経験値を沖縄の産業界で活用しようとする動きも見られました。

しかし、長期的に見てシニア世代の移住はコスト増を招きます。石垣市の例で分かるように、彼らを満足させるだけのインフラ整備が求められ、しかも彼らの医療費は年々増加してくるはずで、介護負担費用も懸念されます。それは、民間介護事業者にとってはビジネスチャンスとなりますが、自治体の立場で考えると負担増ですし、税金という形で沖縄県民に転化されます。

若年人口比率が高いと言われる沖縄県であっても、団塊世代の沖縄移住が高い水準で続けば、近い将来、沖縄の若者たちが、本土から移住したシニア世代の面倒を見る、という現象を招きかねません。

日本国民が国内のどこに住もうが自由じゃないか、という意見もあるでしょうが、前述、沖縄タイムスの「先住民”への配慮は人道的にいっても当然あってしかるべきだ。」との痛切な皮肉に耳を傾けていただきたいなぁと痛感しています。

私個人は移住を否定しているわけではありません。移住者として、沖縄暮らしのなかで学んだものがたくさんあり、私の沖縄移住は大成功でした。そのコツは、地域文化を尊重する、ただそれだけです。

癒しの島、時間がゆったり流れる島と、本土の皆様が評価してくれる沖縄が壊れることのないよう祈っております。
沖縄の夕暮れ
よい形で解決することを祈りつつ‥‥
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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