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稼働率99%の秘訣からデフレ経済を読む 噂の国民宿舎「鵜の岬」に泊まる(2ページ目)

日本一の利用率を誇る国民宿舎「鵜の岬」。その人気の秘訣は何なのでしょう。ガイドがデフレ経済のツボに迫ります。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

一言で人気の秘訣を言うと「人」です。

まず第一に、公共施設にしては「人件費率が低い」と思います。
一般的に公共の宿が赤字体質に陥る理由は、高い人件費。
ただでさえ決められた公務員給与であるうえ、退職職員の天下り先になっていたら・・・赤字間違いなし。そういえば、おじさんばかりなんて公共の宿に出会ったことありませんか?
一方「鵜の岬」は、館内では20歳代の若いスタッフばかりがはつらつと働いています。これなら結果として、公共の宿のアキレス腱である人件費率も低く抑えられることでしょう。

第二には、その「若いスタッフのサービス」。
明るくきびきびと、お客様の目線になって、笑顔で皆働いています。お客様がお部屋(和室)に入られた際には靴磨きをしたり、お帰りの際にはお客様一組ごとに外までお見送りしたり、国民宿舎の期待を超えるサービスがあります。でも、皆さん素朴な茨城弁で、とても感じよく自然に接してくれるところを見ると、どうやらマニュアルで動いているのではなさそうです。

そして第三には、「支配人のマネジメント」。
若い社員を父親のように見守り、自ら率先してサービスに走る、この生え抜き支配人の存在こそが、日本一の秘訣なのだと思います。まだ若い頃、自費で全国の評判の宿を訪ね歩き、いいと思ったサービスを自らが手本となって、知識吸収の早い若手にどしどし教えていった姿勢と、自らを含めて低い人件費でコストを抑え、人件費と売上をパラレルに保って黒字を続けたことが、タイミングよい再投資につながり、日本一を不動のものにしたのでしょう。

その支配人が、人気の秘訣と言うのが「県民、町民はじめ地元の方々の支え」。

地元に報いるため、必ず地元茨城の高校から新人を採用し、支配人以下スタッフは全員地元十王町に住民票を移しています。秋祭り会場として敷地を提供し、地元の方のランチタイムのために昼食も充実させ、常に「地元の方々のおかげ」と皆が感謝しています。そんな姿勢があったからこそ、東海村臨海事故での時には地元の方々が大挙して泊まりにきてくれ、「鵜の岬は十王の誇り」と言わしめるまでに至ったのです。「誇りある組織」で働けるのなら、働き甲斐ができますよね。

なんだ、秘訣はそんなことか、と思われるかもしれません。

でも、人件費を抑えるために多くの宿では「人を減らす」方法を採ってしまいます。しかし、その対応が一層鵜の岬の人気を不動のものにしているのです。

人を減らせばサービスが落ちます。
サービスを保ちつつ人件費を増やさないためには、若い社員で固めるか、社員数を維持しつつ給与を減らすしかないのです。それがデフレ時代のマネジメント。しかし、残った社員への情からか、給与制度の硬直性からか、減給を避けるため人を減らしてサービスの悪化・やる気の低下につなげてしまう「罠」にはまっていってしまうのです。

勝ち組の人気宿は、総じて「若いスタッフ」がたくさんいるという特徴があります。
もちろん、ベテラン社員が多いほうがサービスレベルでは勝ちそうなものですが、残念ながら「給与は年功で上がっていくもの」という呪縛・制度から逃れられない限り、「人減らしの罠」にはまってしまうのです。

そんな罠にはまる宿も多い中、鵜の岬の快進撃はまだまだ続きそうです。

まあ、そんな硬い話はこのへんにして、
一度あなたも「日本一の国民宿舎」を体験してみませんか。
毎月1日8時30分。予約にチャレンジ!



■国民宿舎鵜の岬(茨城県十王町)
  http://www.unomisaki.com/
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