地方色豊かなスペイン料理 

見知らぬ人との出会いもある、スペインのバルは社交の場。

見知らぬ人との出会いもある、スペインのバルは社交の場

日本でも人気のスペイン料理ですが、スペイン料理とは何かを定義付けるのはとても困難。なぜなら、バルセロナのあるカタルーニャ州や北部バスク地方の人々は、料理以前にまず、自分たちをスペイン人だと思っていないのですから。彼らはバスク人、カタルーニャ人であり、彼らの料理はバスク料理、カタルーニャ料理であって、スペイン料理ではないのです。

ですからこの記事では「スペイン料理」、スペイン各地の郷土料理をエリアごとにご紹介していきます。とはいえスペイン全土で食べられる料理もたくさんあります。お米料理のパエリアや卵焼きのトルティーリャなど。日本で人気のアヒーリョは、新鮮な海老のある沿岸部でよく食べられます。
 

スペイン人にとってのバルとタパス

そんな地方色の濃いスペインですが、「食を楽しむ」という習性はどの地方にあっても同じこと。スペイン人にとっての社交の場であり、第二の我が家と言っても過言でないのが、「バル」という存在です。

スペイン人は他愛のないおしゃべりをしながら、ビールやワインを飲むのが大好き。そんなときにおつまみになるのが、タパスと呼ばれる小皿料理です。その種類は、きちんと火を通して調理された煮物や揚げ物もあれば、缶から出しただけのオリーブまで様々。ショーケースに作り置きのタパスがあるバルもあれば、レストラン風に注文制のところもありますし、近年スペインで見受けられる、モダン料理ブームの影響で凝ったものを出すバルも増えてきて、まさに日々進化中といった印象です。一人で行くより数人で行くほうが、いろいろなタパスをシェアできるので、より多くのものが味わえてお得。料理だけでなく、スペイン人を知るにはまずバルへどうぞ!
 

地中海地方 バルセロナを含むカタルーニャ料理

カタルーニャ州の伝統料理の食卓。

カタルーニャ州の伝統料理の食卓

世界一予約が取りにくいレストランと言われながらも閉店してしまった「エル・ブジ」やこのレストランのシェフ、フェラン・アドリアは日本でも名前を聞いたことがあるという人が多いのでは? スペイン料理界を世界の舞台へ引っ張り出したのが、彼に象徴されるモダンカタルーニャ料理だと言っても過言ではないでしょう。

ピレネー山脈と地中海に面するこの地域は、海の幸、山の幸その両方に恵まれています。おまけにお隣のフランスの影響を受け、洗練された料理もスペインの中でいち早く取り入れてきました。我が村が一番的なこの国において、新しいもの好きが多いバルセロナ。そんな風潮が料理にも表れ、斬新な料理がちまたに溢れています。シェフの腕とアイディア次第で定義がないモダンな料理だけでなく、しっかり伝統を重んじた料理も味わって欲しいので、ここでは伝統的な料理についてご紹介していきます。
エスクデーリャ

エスクデーリャというパスタ入りのスープも代表的なカタルーニャ料理


■マル・イ・モンターニャ
さて、カタルーニャ料理の一番の特徴は、海の幸と山の幸をミックスさせた料理。日本では普通ですが、スペインの他の地域にはありません。マル・イ・モンターニャはその名も海と山。鶏肉などの肉類とイカや海老の煮物です。

■エスケイシャーダ
スペインで最もよく食べられる魚の1つが鱈。エスケイシャーダは年間を通してよく食べられる、干し鱈入りのサラダです。

■ブティファラ・コン・モンジェタス
肉料理では、ブティファラという豚の腸詰めと白いんげん豆の付け合せが定番。これらの肉料理にはアリオリというにんにく入りのマヨネーズが欠かせません。

■カラコーレス 春先が旬のカタツムリの煮物も一度は試してみたいもの。調理法はトマトソースベースのもの以外にもいろいろあります。バルセロナのような大きな町の中心には専門店もあるので、年中食べられますよ。

■パン・トマカ
実は一番有名なカタルーニャ料理かもしれないのがこのパン・トマカ。パンにトマトを擦りつけてオリーブオイルを垂らし、塩をふったもの。それなりに上質なお店はパン、トマト、オイルや塩にまでこだわっているのでかなりおいしいものが味わえます。
 

地中海地方 バレンシア

スペインといえばパエリア!お店によって味わいは様々。

スペインといえばパエリア!お店によって味わいは様々

バルセロナのあるカタルーニャ州から南に下ったお隣の州がバレンシア。地中海の海の幸と内陸部の野菜やフルーツなど食材が豊富。しかもスペインが誇る米どころでもあります。おなじみのパエリア以外にも、スープが多めの料理など、様々なタイプの米料理が楽しめますよ。

そしてバレンシアといえばオレンジの名産地。地中海の太陽をサンサンと受けた、濃厚な味わいです。バルやカフェでスモ・デ・ナランハ・ナトゥラルと言えば、絞りたての100%ジュースが出てきます。
オレンジ

スペイン全土で欠かせないオレンジジュース。市場でオレンジを買ってみるのもおすすめ

■パエリア
世界で最もよく知られているスペイン語の単語と言えば「パエリア」ではないでしょうか。観光地ではどこでも食べられますが、是非本場のバレンシアで味わいたいもの。パエリアと一口に言ってもその種類は豊富。野菜パエリア、肉パエリア、魚介パエリアや全てがミックスされたパエリアなどがあります。もしバレンシアでパエリアを食べられるのなら、パエリア・バレンシアナというバレンシア風パエリアをどうぞ。鶏肉、ウサギ肉、平たいインゲン豆、白いインゲン豆などが入ったボリューム満点のものです。

■アロス・アバンダ
パエリア以外に食べたい米料理は、アロス・ア・バンダ。スズキなどの魚のスープで米を煮た、ちょっと日本のお粥風の料理です。出汁をとった魚も別でメインディッシュとして出てきます。新鮮な魚のある地域で食べたいですね。

■フィデウア
パエリアとよく似たもので少し変わっているのがフィデウア。お米の代わりに短いパスタを煮た料理。お店によってパスタが極細だったり、中が筒状になった太めのものだったり、イカや海老などの具入りだったり、具無しだったり様々。

■オルチャタ
夏に行くなら是非試したいのが、オルチャタという植物の根からできるドリンク。これは他に似たドリンクがない、何ともユニークな味わい。ちょっと土っぽい根菜をすり潰したような自然な甘みがおいしく癖になるかも!?
 

北部 バスク地方

リオハ県アラバの赤ワインはスペインを代表する偉大なワイン。

リオハ県アラバの赤ワインはスペインを代表する偉大なワイン

平方メートルあたりのミシュラン星付きレストランの数が最も多いのが、バスク地方。カタルーニャ地方とときに競り合い、高め合う食文化のメッカです。なんと女性立ち入り禁止のなか、男性が料理の腕前を披露し合い、皆で舌鼓を打ちながら飲んで話して楽しむという会員制の料理クラブが多くあるなど、男女問わず食への意識が高いことが認識されています。

また、内陸部のアラバ県にはスペインを代表する赤ワインの伝統的な産地、リオハ地方も含まれます。テンプラニーリョというブドウでできたワインがクラシックなこの地のワイン。スペインワインに興味があるかたは、こちらのスペインワインへ。
ピンチョス

ピンチョスにも冷製のものと熱々のものがある

■ピンチョス
テーブルについて静かにじっくり食事を味わうのもいいけれど、せっかくなら地元の人に混じってこの地方ならではの食生活に触れてみたいもの。バスク地方にはチキテオと呼ばれるバル巡りの習慣があります。この地方ならではの、ピンチョスという串刺しのタパスがおつまみ。

ピンチョスにはピーマンの肉詰めなど小さなおつまみが串刺しになったものや、モンタディートと呼ばれるバゲットパンの上にポテトサラダや熱々の豚の腸詰めなどをのせ、楊枝をさしたものまで様々。最近ではクリエイティブなピンチョスのお店も増え、よりバラエティが広がりました。これらのピンチョスにはチャコリというこの地方産の微炭酸の白ワインや、腕を高くかかげて注ぐパフォーマンスが楽しいシドラというりんご酒をご一緒に!

■バカラオ・アル・ピルピル
バスク地方もスペインの海岸でとれる白身魚メルルーサやカツオ、鰯、鱈など魚が豊富。よく知られるのがバカラオ・アル・ピル・ピル。干し鱈をたっぷりのオリーブオイルでとろとろになるまで弱火で煮た料理です。
 

北部 ガリシア地方

魚介類の宝庫、ガリシア地方。

魚介類の宝庫、ガリシア地方

シンプルに魚介を味わいたいならガリシア地方に勝る地域はありません。海老類だけでなく、帆立や牡蠣、マテ貝などの魚介類やマグロ、サバ、イワシなどの魚類の種類が豊富で価格も他の地方とは比べものにならないくらい安価です。
プルポ

タコとジャガイモという黄金コンビのプルポ・ア・フェイラ

■プルポ・ア・ラ・フェイラ
おすすめの1つは、プルポ・ア・ラ・フェイラ。茹蛸にオリーブオイルと塩、パプリカで味付けしたものを茹でたじゃがいもと一緒にいただきます。家庭でもよく食べられる料理です。「プルポ・ガリェゴ」とも呼ばれます。

■マリスカーダ
一気にいろんな魚介類を味わうにはマリスカーダという様々なシーフードを少しずつ鉄板にのせてグリルしたものがおすすめ。これはマドリッドやバルセロナなどの大都市ではガリシア料理専門店でなければ食べられず、高級料理とされますが、本場ガリシアでは2人前30~40ユーロでゴージャスな盛り合わせがあります。ガリシア産の香り高いアルバリーニョ種の白ワインと一緒にどうぞ。

■チュレタ・デ・テルネラ
意外と知られていないのですが、ガリシア地方は牛や豚の肉の品質が高く、特に内陸部でよく食べられます。チュレタ・デ・テルネラは牛のリブロースをさっと焼いたもの。ポテトフライの付け合せが一緒に出ます。肉料理にはメンシアという種類のぶどうを使ったこの地方の赤ワインを合わせたいもの。アメリカの有名ワイン評論家ロバート・パーカーが高得点を付けたワインがあるので最近注目を集めている、酸味の利いた飲みやすいワインです。

サルディーナ・ア・ラ・ブラサ
ガリシアだけでなく地中海沿岸でも食べられますが、旬の夏の時期に行くなら、絶対に食べたいのが鰯の炭火焼。シンプルながらいくつでも食べられそうなおいしさです。ガリシアならではのとうもろこし粉で作ったパンと一緒に食べることも。
 

内陸部 カスティーリャ料理

寒い地方の定番の朝ごはん、チュロスとホットチョコレート。

寒い地方の定番の朝ごはん、チュロスとホットチョコレート

乾いた土地と夏は暑さが、冬は寒さが厳しいのがマドリッドを中心とする広大なカスティーリャ地方。体がしっかり温まる、こってりとした冬の煮込み料理が主役です。海がなく、荒野や野原が延々と続く地域なので、必然的に肉料理が多くなります。羊や豚などの肉や、冬のシーズンにはウズラや野うさぎなどのジビエもよく食べられます。
コチニージョ

コチニージョはまさに丸焼きが出てくる店もあれば、写真のようにカットされている場合も

■コチニージョ
この地方で一度は試したいのがセゴビアが名産のコチニージョという、子豚の丸焼き。ちょっとかわいそうではありますが、外の皮はぱりぱり、中の肉は子豚なだけに驚くほど柔らかくジューシー。

■カジョス・ア・ラ・マドリレーニャ
マドリッドの伝統料理、牛の腸の煮込み。チョリソというパプリカで味をつけた豚の腸詰や、モルジージャという血入りの豚のソーセージなどを一緒に煮込み、パプリカや鷹の爪で味をつけます。

■コシード
こちらも冬のマドリッドの代表料理。鶏肉、豚のばら肉や豚の腸詰、じゃがいも、ヒヨコ豆、人参やキャベツなどを生ハムの骨などでとった出汁汁でぐつぐつ煮込んだ料理。冬の寒さも吹き飛ばしてくれることでしょう。

■マンチェゴチーズ
バルなどで一度は口にしたいのが、スペインで最もよく食べられているチーズ、マンチェゴ。羊のミルクからできた酸味と塩味がしっかり利いたスパイシーなチーズです。パンだけでなく、果物のコンフィチュールなどと一緒に食べることも。
 

アンダルシア料理

アンダルシア地方の夏の名産、ヘルシーな野菜スープ、ガスパチョ。

アンダルシア地方の夏の名産、ヘルシーな野菜スープ、ガスパチョ

温暖な地中海気候のため、太陽の恵みをいっぱい受けたフルーツや野菜が豊富。どの季節でも市場はバラエティ豊かな野菜や果物に満ち溢れています。海に面した地方では、日本に多く輸出されている高品質の鮪をはじめとする魚や、海老類がよく食べられます。

さらにスペインが誇るグルメ食材、イベリコ豚の生ハムの産地が集まるのもアンダルシア地方。また、長年に渡りイスラム教徒に侵略された歴史上、その影響を受け蜂蜜やアーモンドを使ったお菓子が多いのも特徴です。

そしてアンダルシア地方といえばオリーブオイルの名産地。生産地から輸送される時間がかかる首都圏とは違って、採れたての新鮮な野菜で作るサラダなどにエキストラバージンオリーブオイルをたっぷり回しかければ、これだけでも贅沢な味わい。春ならアスパラガス、冬ならアンティーチョークを茹でたものにオリーブオイルをかけて召し上がれ!

さて、バスク地方と肩を並べてアンダルシア地方でも、バルでおつまみ料理タパスをつまみつつちょっと一杯……というタパスバルが庶民の習慣として定着しています。アンダルシア地方のタパス料理といえば、揚げ物系です。なかでもペスカディートと呼ばれる小魚やチピロネスという小イカのフライは最高!沿岸のヘレス・デ・ラ・フロンテーラなどの町が名産のシェリー酒とともに味わいたいメニューです。
生ハム

高品質の生ハムもスペイン旅行でたっぷり味わいたい

■ガスパチョ
暑さの厳しい夏のアンダルシア地方の元気の元は、ガスパチョというトマト、ピーマン、にんにく、きゅうりなどをミキサーにかけたヘルシーな冷製野菜スープ。最近ではスーパーでパックになったものも購入できます。

■ラボ・デ・テルネラ
冬の料理ではコルドバの町を中心に、カスティーリャ地方全体で食べられる牛尻尾の煮込みが有名です。玉葱と一緒にトロトロになるまで煮詰められ、口の中でとろけるような食感が魅力。
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