ちょっと羨ましくもなりますね。そんな犬達を巡るお話を、ウイーン在住のドッグトレーナーEggiさんにお聞きしてみましょう。まずは、Eggiさんのご紹介から話を進めます。
=Index=
・初めて目にしたウイーンの犬達の印象
・犬達への理解を深めてもらうことが仕事
・オーストリアの人達の犬に対する意識・犬環境の変化
・日本の犬事情について
初めて目にしたウイーンの犬達の印象は?
「犬としての要求を理解し、それに沿ってトレーニングすれば犬の精神も落ち着きます」(Eggiさん) |
1975年の冬にウイーンに参りまして、成人式はウイーンでした。まず、犬達の様子を見て、彼らの顔が哲学者に見えましたね(笑)。達観しているというか、何というか……べつにお洋服を着て、特別人間扱いをされているというわけではありませんが、何気なく、人間社会に溶け込んで生活している犬達の姿に、驚きと共に、もっと大きな愛着を覚えました。
歩道で、オンリード同士の犬達が出会っても、吠えもしなければ、飛び掛りもせずに、普通にすれ違う姿にも感動しましたし、市電やバスの中で、大きな犬は飼い主さんの足元にうずくまって、小型犬は飼い主さんの膝の上におとなしく座っている姿も微笑ましくって、ついつい見とれていました。レストランやカフェにも、飼い主さんと一緒にお出かけして、しっかりとマナーがよいのです。そして、そんな犬達に敵意のこもった眼差しを向ける人もいませんでした。子供達の態度も、変に犬に愛嬌がよかったり、恐怖心丸出しというコもいません。犬がいるのが当たり前の社会の素晴らしさに、本当に感激しました。
その中で、トレーナーさんになろうと思われたきっかけは?
「筒の中のおやつをどうやって出そうかな?」 現在Dixieちゃんは目が不自由ながらドッグゲームが大好き。 |
今の愛犬Dixieは、ウイーンで飼う2頭目の犬です。最初のコであるビビはウエスティーの女のコで、80年代前半に生後12週間でザルツブルグのブリーダーさんのところから我が家にやって来たのですが、ごく普通の元気で明るい、心身ともに健康で“腕白”な可愛い子犬でした。Dixieはセカンドハンドドッグとして保護することになったコで、まだ生後9週間なのに、すでに恐怖吠えする犬でした。とても賢そうで、かつ繊細な子犬に、実際、途方にくれました。
各種予防注射と健康診断に連れて行った動物病院の待合室で、犬のしつけの重要さを書いた雑誌を見つけ、パピーコースなるものの存在を知りました。帰宅後すぐにその協会へ電話して、即、入会。このパピーコース参加が、私がこの道に入るきっかけになったのです。
プロになるまでの道のりは?
Eggiさん:私が参加したパピーコースは、生後8週間から8ヶ月までの犬達のグループでした。まず、私が感じたのは、「これって、私が想像したものとはかなり違う……」でした。オスワリ、フセ、ヒールワークが主要で、その合間に犬同士が遊ぶというものであり、もとより、恐怖吠えするDixieに合うはずがありません。大きな疑問を感じました……「こんな方法では、このコの神経が壊れてしまう……」。
それでも、持ち前の几帳面さで、褒めて伸ばす自己流で練習して、パピーコースは無事終了、最終試験は高成績で卒業しました。その後の、服従訓練初級コースも無事終了、試験にもパスしました。気がつけば、Dixieの不信感や恐怖感は、我が家に来て3ヶ月ほどでほぼなくなっていました。
オーストリアではブライテンスポーツも盛んなので、それらに参加してDixie共々楽しんでいましたが、そのコースの担当トレーナーに、「あなたのやっていることはとてもよいから、是非、自分のコースのアシスタントをしてくれないか」と頼まれたのが、次のステップへとつながるきっかけとなりました。
※「ブライテンスポーツ(Breitensoprt)」=“幅の広いスポーツ”という意。服従訓練BgH1・トラッキング・スラローム・ハードル跳び・障害物(アジリティーのものと似ている)、以上の5種目を競う。ドイツ、オーストリアではアジリティーよりも歴史が長く、盛んに行われている。
さらなる転機についてのお話は次のページへ。