車に慣らすトレーニングをする
少しずつ車に慣らせてあげることで車酔いも克服しやすくなる。そうなれば犬との行動範囲も広がる:(c)OD
では、実際にどうやってトレーニングしたらいいのでしょう?
前出の飼い主さんのお話のように、何もトレーニングらしい意識を持たなくてもすぐに慣れてしまうコもいますが、概ね、次のような手順をふむといいでしょう。
- まずは、車の存在に慣らす。短い時間で構わないので、車の近くで遊んでみたり、好物をあげたりする。
- 次に、車のドアは開けたまま、中で一緒に遊んだり、好物をあげたりして短い時間を過ごす。この時、エンジンはまだかけない。もし犬が嫌がる場合は、無理矢理乗せたりしないように注意を。ある程度大きい犬の場合は、オモチャやおやつで気を引くなどして、犬の方から進んで車に乗るような状況を作ってあげるのもよい。
- 次には、ドアを閉めて、2と同様に。
- 大丈夫そうなら、エンジンをかけてみる。最初のうちはエンジンをかける時間も短くする。
- 慣れてきたなら、短い距離を走ってみる。可能な限り、着いた先で一緒に遊んであげたり、おやつをあげるなど、犬にとって楽しいことがあるようにする。ワクチンがまだ不安定な時期である場合には、着いた先で外に出さず、車内でもOK。
- 走る距離を徐々に延ばしていく。着いた先がいきなり病院だったり、犬にとってあまり楽しくない場所であると、車に乗ること自体にマイナスのイメージを与えかねないので、着いた先には必ず楽しいことが待っていると思えるような場所に連れて行ってあげるようにして慣らしていく。
少しでも嫌がる素振りが見えたら、一つ前の段階に戻ってトレーニングし直すようにしましょう。また、最初のうちは走っている途中で吐いてしまうこともあるかもしれませんが、それを叱ってしまうと車に乗ることにマイナスイメージがついてしまいますのでご注意ください。
また、最初のうちはだっこでも構いませんが、将来的にクレート類に入れて乗せたいと思うのであれば、少しずつそれにも慣らしていきましょう。
何より安全と快適さを
時折見かける膝の上に愛犬を乗せての運転。安全性は大丈夫?:(c)DAJ/amanaimages
さて、最後に、犬を車に乗せる時には、以下のようなことには気配りしたいものです。
■特に酔いやすいコの場合、車に乗せる直前には食事を与えない(少なくとも2時間以上前には済ませておく)。
■犬用シートベルト(長時間のドライブには向かないかも……)、ハードタイプのクレート、ソフトケージ(ハードタイプに比べ強度は落ちるものの、メッシュ素材が使われているものでは中の様子も確認しやすく、通気性にも優れている。メーカーによってはシートベルトで固定できるものもある)などを使って、犬をなるべく固定できる状態で乗せる。
車に酔う場合、体が不安定なせいもあるので、ある程度固定することで酔い止め効果も期待できる他、こうしたグッズを使用することで、車のドアを開けた時の飛び出し予防にもなる。
ちなみに、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)の資料によれば、交通事故で車外に放り出されて亡くなった人のうち、シートベルト未着用が99%で、3分の1は18歳以下の子どもだとか(*1)。体を固定することの意味を、今一度真面目に考えたくなるようなデータとなっている。
■長距離の場合、2時間おきくらいには休憩を。最近は、高速のSAにドッグランのような犬用の設備が併設されているところもある。
■犬を車に残していく時、夏に限らず、車内の温度には注意を欠かさぬこと。国民生活センターのテストによると、炎天下では車内温度が60℃を越え、ダッシュボード部分は86.7℃を記録、炭酸飲料などは破裂したという結果が(*2)。
また、JAFが行ったテストでは、外気温が23℃の日でも車内温度は50℃近くに達したということ(*3)。ほんの僅かな時間で車内温度は上がってしまうので、くれぐれも甘く考えないように。暑さに弱い短吻種や長毛種、子犬、シニア犬、心臓病のある犬などは特に注意!
■車内の通気、換気、匂いにも気配りを。新鮮な空気を取り入れることで酔いにくくなる。また、匂いが酔いを誘発することもあるので、タバコのような犬が嫌う匂いの対策も。
香りと言えばアロマ。特にペパーミントは車酔いに有効とされ、空気を清々しく保つ作用がある。香りのカテゴリーではないながら、フラワー・レメディの場合は、特にコキュラスにその効果が高いとされるが、いずれにしても使用する際には下調べをお忘れなく。
■走行中の窓からの飛び出し、転落にも注意。パワーウィンドの場合は挟み込み防止機能が全席に付いていない車もあるので、挟まれてケガをしないよう、また何かの拍子に犬が勝手に開けないようにロック機能を使うなどして気配りを。
参考動画:ゴボウも大根もばっさり切れるパワーウインドーの挟み込みに注意!【JAFユーザーテスト】
■もっとも大事なのは、運転に対する気配り。乱暴な運転は体の安定も欠き、酔いやすさを助長するばかりでなく、危険を呼ぶことにもなる。大切な愛しき愛犬、その命を守るためにも運転には細心の注意を払いたいもの。
参考までに、ハワイには「自動車を運転中は、運転の妨げとなる人や動物、物を運転者の膝の上に置く、または運転者の近くに置くことはできない」という法令があるそうで(*4)、アメリカのメイン州でも同様の内容に加えて、走行中の窓から犬が身を乗り出せるようにすることは禁止とする法案が提出されたというニュースが以前ありました(*5)。
いずれにしても、法律云々ではなく、それ以前に、愛犬にとって車が第二の家と言えるほど、安全で快適な空間であったらいいですね。安全運転で、皆さんもどうぞ愛犬とのお出かけ・ドライブをお楽しみください。
関連サイト:
アリターナ工房「わんドアロック」
参考資料:
(*1)シートベルトが命を守る/JAF(一般社団法人日本自動車連盟)
(*2)乗用車内の安全を検証する/独立行政法人国民生活センター
(*3)JAFユーザーテスト 車内温度(春)/JAF(一般社団法人日本自動車連盟)
(*4)§291C-124 Obstruction to driver's view or driving mechanism / Hawaii State Legislature
(*5)Bill would ban dogs from roaming about vehicles, hanging out window / Portland Press Herald
※アンケートは公開当初(2008年)に集計したもののため、現在の傾向とは異なる場合があります。