今の時代だからこそ生まれた映画
利発で優しく、そしてファミリードッグとしてのイメージが強いゴールデン・レトリーバーがこの映画の主役犬に抜擢された。/(C)2008「犬と私の10の約束」フィルムパートナーズ |
原文は英語となっていますが、やがてそれをテーマにした本が日本で幾つか出版され、この度、新たに映画となって私達の前に登場しました。
=Index=
・普通の犬であることへの共感
・ゴールデン・レトリーバーならではの雰囲気
“普通の犬”であることが人々の共感を呼ぶ
犬との10の約束をあかりに教える母芙美子。親が子供に犬とのつきあい方を教えられるのが本当はベスト。/(C)2008「犬と私の10の約束」フィルムパートナーズ |
「犬の十戒」はそもそも現実離れした犬との関係を詠っているものではありません。一頭の犬と、一人の人間が出逢った時、そこに生まれる“普通”の絆、そしてつきあい方を綴ったもの。自然に、普通につきあえるからこそ、そこに生まれたものは“特別”になる。
互いに出逢えたことが、共に暮らせたことが幸せだと思えるように……と願って作られたのが、この「犬の十戒」なのではないかと私は思っています。そのために、私達飼い主が、どう考え、どう犬達とつきあったらいいのかを教えてくれる指標のようなものになっているのではないかと。
この映画を試写で拝見した時、その会場は満席で人に溢れていました。マスコミ向けのものではありましたが、自身の愛犬のことと重ね合わせ、涙を流す人もおり、それだけ犬という生き物が、またこうしたテーマが私達にとって身近であることを改めて実感した次第です。
『犬と私の10の約束』は、これまでの犬の映画の中で、恐らく私達自身に最も近い映画と言えるのではないでしょうか。
犬と共に成長する、一人の少女のストーリー
さて、この物語の舞台は北の大地、北海道は函館。一人っ子の少女あかりのもとに、ある日一匹の子犬がやって来ました。多感な14歳というこの時期に、母親の突然の死、医師としてエリートコースを歩いていた父親の辞職を経て、やがて初恋、獣医師としての独り立ち……と、様々なものを経験しながら一人の大人、女性へと成長していく姿が主軸に描かれています。人生のあらゆるシーンの中で、あかりのそばにはいつも愛犬ソックスがいました。時に、ソックスによって自分の生活が束縛されているのではないかと感じてしまったこともあるあかり。娘が成人してからというもの、自分の方がおいてきぼりにされているようで、ちょっと淋しいと感じる父親祐市。ソックスは何も言わず、そんな二人をただ見つめ、そばにいるだけ。
やがてソックスが与えてくれたもの、教えてくれたものが言葉では言い表せないほどに大きく、愛しいものだと気づいた時、すでに出逢ってから10年という月日が経とうとしていました……。
犬がいる、ただそれだけで、人生がこれほどに豊かになるものかと、人は犬との生活を振り返った時に、やっと気づくものなのでしょう……。
次のページでは、出演犬達の話へ。