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大きな犬舎をめざして設計された5柴ハウス(2ページ目)

筒井紀博さんが大きな犬舎をつくるつもりで設計したという「5柴ハウス」を見せていただきました。親子3代の柴犬家族と一緒に生活する尾崎さんは、ブログで手作り食のレシピなども公開している大の柴犬マニアです。

執筆者:坂本 光里

すべてを犬の視線で考えた「+400」の発想

コロ(祖父)、萌(母)、翔(息子1)、翼(息子2)、美月(娘)の親子3代の柴犬たちに迎えられて室内に入ると、そこはいきなりの大空間。庭に面して開かれた開口部に向かって、和室、ダイニングキッチン、そしてリビングがあります。

リビングに勢揃いした親子3代5頭の柴犬たち

リビングからテラスを見る、バーベキューの支度が進む

これらの空間に間仕切りらしいものはなく、すべて一続きの空間になっています。唯一、和室だけに壁に収納できる引き戸が付いており、お客さんがあるときには寝泊まりできる場所ということになっていました。和室の奥には、サニタリーに続くバスルームが…。ここは裏庭からもそのまま入れるようになっていて、犬たちの汚れがひどいときにはここで丸洗いできるのだそうです。

畳の間はごろ寝に最適
引き戸を閉めれば個室に早変わり

それにしても、キッチンから吹き抜けのあるリビングへの視界のよさはどうでしょう! 5柴たちにとっては、直接庭に出られるこの空間は何にも代えがたい自由と生きがいの実現の場といえるように思います。

リビングからダイニング+キッチン、畳の間を見る

「設計者に筒井さんを選んだのは、じつはオールアバウトに出ていた筒井さんの『華門楽家』を見たことがきっかけでした。お話を聞いてみると、なんとかつて実家で柴犬を飼われてたとのこと。この人なら、5柴と暮らすことがどういうことなのかを理解してくれるはずと直感しました。
だから最初のプランが出てきたとき、一目見てOK! ほとんど何も変えることなく、プラン通りの家をつくっていただきました。また、施工は『華門楽家』を担当された友伸建設の増田さん。このお二人の協力がなければ、とても10カ月で5柴ハウスは完成しなかったと思います」(尾崎さん)

家づくりには、絶対的に必要な建て主と建築家の方向性の一致。それが柴犬への愛情だったということですね。筒井さんが5柴ハウスを、自分のブログで「+400」と呼んでいるのは、フロアーレベル+40センチという意味で、すべてを犬の視線で考えたことを示しているのだそうです。

思い思いの場所で好きにくつろぐ大空間

リビングからは、壁に沿う形で階段が設けられていますが、この吹き抜けがじつに伸びやかで気持ちがいい! 階段の途中に立てば、柴犬たちがいまどこにいて何をしているのかが手に取るようにわかります。5柴たちは、窓際の指定席やソファーの上、ダイニングテーブルの下(床暖房だからけっこう暖かい)など、思い思いの場所で好きにくつろいでいます。

1階の床はオーストリア産の4センチ角のアッシュという木、これをひとつひとつ組み合わせて床材として使うのだそうです。滑りにくく安心感のある自然素材の床でした。筒井さんによれば、「住宅建築でMafi社の『ドミノ』を使ったのは国内初」とのことでした(それにしてもうちのアッシュと同じ名前とは!親近感が増しちゃいます)。

階段から見たリビング、丸いソファーは5柴のお気に入り

リビングには筒井さんお得意の縦のスリット窓やハイサイドライトがあり、周囲の外景が切れ切れに目に入ってきます。これは大きな開口部をひとつ取るよりもずっといい! 大きな窓から入ってくる陽光は、13歳を迎えたコロちゃんにはちょっときついかもしれません。また、ハイサイドライトには5柴をモチーフにしたステンドグラスが入っていました。このシンプルな空間の中で色鮮やかなステンドは、けっこうシンボリックな輝きを放っています。

5柴をモチーフにしたステンドグラス、シンプルな室内に映る

リビングの外は、犬仲間が集まってバーベキューパーティが楽しめる素敵なテラス。ここは天気のよい日には、開放的な第2のリビングになる。5柴たちにとっても、庭の自然といつも繋がっていられるお気に入りの場所になりそうですね。

リビングと一体化した寝室

筒井さんのいう「+400」の設計思想は、階段にも生かされていました。犬と人間にとってとても歩きやすい高さの蹴上げになっていて、柴犬たちがしょっちゅう上り下りしても疲れない緩やかさになっています。

ベッドルームからのリビングの眺め、縦長の窓が美しい

2階に上がると、突き当たりにご主人の個室があり、続いて壁収納の向こうに吹き抜けを見下ろすバルコニーのような形で尾崎さんのベッドルームがあります。間仕切りがなく、そのまま空間的にリビングと一体化した寝室にはビックリ! 「犬たちを閉じこめたくない」という尾崎さんの思いが伝わってきますよね。何頭かの柴犬たちは、ここで尾崎さんと一緒に眠りにつくのでしょう。

尾崎さんのベッド、ハイサイドライトからの光が明るい

いっぽう、ベッドルームと反対側にはガレージ上のテラスに出られるブリッジがあり、犬たちはここから直接室内に入ることもできるようになっていました。いうなれば、この家はご主人の個室以外のどの部屋にも5柴たちが自由に行き来できる動線が考えられているということですね。

ガレージ上のテラス、縦ルーバーからの光が美しい

そこには室内と室外を自由に行き来しながら、入居して2カ月にもならないのにすっかりこの家に馴染んだ5柴たちの姿がありました。「5柴と楽しく暮らす大きな犬舎を建てる」という明確なテーマがあったからこそ生まれたこの家は、無類の愛犬家である尾崎さんと、建築家である筒井さんのすばらしいコラボレーションの結実といえると思います。

段差が少なく昇降に負担がかからない階段

設計監理:筒井紀博/筒井紀博空間工房
構造設計:我伊野構造設計室
施 工 :友伸建設株式会社

敷地面積:167.16m2(50.57坪)
建築面積:59.94m2(18.13坪)
延床面積:100.26m2(30.33坪)
構 造 :木造・地上2階建て

筒井さんの他の作品は↓
ラブラドールと暮らす家
猫と暮らす華門楽家

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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