建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

猫と暮らす華門楽家

筒井紀博さん(筒井紀博空間工房)が三鷹市に建てた、夫婦と猫2匹が暮らす家「華門楽家」を見学してきました。17坪という狭小地を使って、建築家と建て主が楽しみながらつくった「華」と「楽」のある家です。

執筆者:坂本 徹也

四合院の門から始まる家づくり

門の存在が家の構成要素として大きな意味を持つ「華門楽家」
筒井紀博さん(筒井紀博空間工房)が三鷹市に建てた、夫婦と猫2匹が暮らす家「華門楽家」を見学しました。17坪という狭小地に建つこの家は、筒井さんの案内によると「中国建築様式・四合院の門を重要な要素として取り入れ、この門によって住空間のヒエラルキーを表現するよう心がけた」という、一風変わったテーマを持つ住宅。それがどんなものなのか、この目で確かめてみようということです。

四合院の門とは、住人の役職や社会的地位に応じて大きさやデザインが厳しく規定されていた清の時代の門のこと。風水を重んじる中国では、扉から俗悪なものが建物内に入ってくるのを防ぐ“魔除け”の意味で、門や扉の存在はことのほか大きなものだったそうです。


北京からやって来た夢を繋ぐ門 筒井さんの「華門楽家」は、この四合院の門から始まっています。道路に面して立てられたコンクリートの門に収まっているのは、いかにも古めかしい中国製の木の扉。一目で年代物とわかる風合いと重厚さが感じられます。
「扉は、建て主さん夫婦と工務店の所長さんと私とで、じっさいに北京の郊外で開かれる市に行って買ってきたものです。この家には、どうしてもそれが欲しいという情熱があったからこそ見つけられた、こだわりの扉です」(筒井さん)
じつは建て主の一人である奥さんは、住宅建築ライターの方。並々ならぬ家づくりへの熱意は、ご自身の職業に根ざすものだったわけですね。

“魔除け”があるからエントランスは全開放

門から入るとスチールの階段
孟宗竹の植えられる坪庭と小部屋

すこし軋む四合院の門を開けて中に入ると、小さな坪庭。17坪という敷地の中にも、こんな自然との接点があるのはとても嬉しいことですねー。ここには近々、孟宗竹が植えられるとか。中国の扉と孟宗竹のアジアンテイストな組み合わせは、この家を訪れる人に、ちょっとした異世界への誘いを感じさせることでしょう。
孟宗竹を左手に見ながら階段を上ると、そこがエントランス。といっても、リビングの開口部がそのままエントランスになっています。ここには全部が収納できる折れ戸が開口部の内側に付いていて、夜にはこれを引き出して閉じてしまうことができるため、安全性=“魔除け”の面でもまったく問題はありません。

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エントランスホールはそのまま大リビングに…

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引き戸を閉めるとプライバシーを確保

一歩入るとエントランスホールはそのまま巨大なLDKになっています。奥まった場所に小さなキッチン、手前はエントランス兼ダイニング兼リビングというわけです。真っ白な壁に、階段の上からルーバーを通して差し込んでくる横縞状の光がこぼれ、じつに美しい。そこはかとなく悠久の時間を感じます。

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エントランスからキッチンを望む、上の窓は北側のテラスに通じる

なんでもご主人は音響メーカーにお勤めだとか、こんな空間で聴く音楽はまた格別な響きを持って聞こえることでしょうね。見ると、階段に沿った壁にはやはり階段状の収納が…。この上は猫ちゃんの恰好のお昼寝場になりそうです。

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キャットウォークにこぼれ落ちる光、美しい~!

バスルームは1階の駐車場に面してあります。ガラス張りのお風呂は、湯船から愛車のローバーminiが丸見え。ブリティッシュグリーンがとても綺麗ですねー。
駐車場の入り口と並んで先ほどの中国製の扉があるわけですが、扉と孟宗竹のある坪庭に面してもうひとつの個室があります。これはどうやらご主人の隠れ家的なスペースのよう。ご主人はここで趣味の釣りに出かける準備などをされるのでしょう。もちろん、来客のための寝室としても使えます。

ローバーminiのための駐車場
愛車を愛でつつ至福のバスタイム

続いて2Fをご案内しましょう

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