明確な成分表示のない犬用シャンプーの不思議
あなたの愛犬は、皮膚のトラブルとまったく無縁でしょうか?
わたしは、うちのハービーが毎年初夏を迎える頃になると、必ず背中の皮膚にプツプツと発疹ができることから、シャンプーに強い関心を持ち、いろんなプロフェッショナルの人からアドバイスをもらうなどしてシャンプー漂流を続けてきました。高価なショードッグ用シャンプーから人間用まで、よいと言われるものはとにかく試してきたつもりです。ところが、わたし自身がシャンプーに関して知識不足なこともあって、なかなか結論を出せずにきました。
『愛犬の心と体を元気にする 手作りアロマせっけん』(新風舎) |
そんな時、新聞で見つけたのが『愛犬の心と体を元気にする 手作りアロマせっけん』(新風舎)でした。これを読んでの第一印象は、今までわたしの頭の中でもつれ合っていた糸がようやくほどけた!ということ。そこでさっそく、この本の著者 里見千佳さんのご自宅にお邪魔して、お話をお聞きすることにしました。
ももちゃんの皮膚状態は完ぺき! |
「私は子どもの頃から皮膚が弱くて、シャンプーをした後、いつもヒリヒリするような嫌な感覚を味わってきました。だからいろんなシャンプーを試してきましたし、何だかな~という疑問を持っていた。これに加えて、小学生の頃に読んだ本で『廃油からせっけんが作れる』というのを知って、いつか自分で作ってみたいという思いがあったんですね。そうしたところ、2001年に前田京子さんの『お風呂の愉しみ』が出て、ロンドンの手作りせっけんのお店『LUSH』が上陸してきたことから、本気で自分でも作ってみようと取り組みを始めたわけです」(里見さん)
専門書に書かれていた犬のためのせっけんレシピ
犬をせっけんで洗って あげたいという里見さん |
「じつは、前田さんの本に感激した後、海外からもハンドメイドソープの本を何冊か取り寄せて読んでみたのですが、そうした専門書の中には、犬のためのせっけんレシピもあったんですね。ああ、欧米には古くから手作りせっけんで犬を洗うという習慣があるんだと。
うちの先住犬の“もも”はミックス犬のせいか、皮膚のトラブルは何もなかったのですが、私自身が犬用のシャンプーを試してみたところ、どうもよく洗えたという感じがしない。その商品は『低刺激』を謳っていましたが、身体にやさしい実感はありませんでした。そのうえ、使われている香料がきつくて精油の心地よさを知っている私にとっては、これがとても不快で不自然なにおいに感じられたんです」(里見)
手作りせっけんで“天使の輪”が できるようになったはなちゃん |
「フケはすぐには収まりませんでしたが、素材に工夫を加えながら自家製せっけんを使い続けるうち、気が付いたらフケはまったく出なくなってました。被毛にも“天使の輪”ができるようになって、セッター特有の艶やかさが戻ってきたんです!」(里見)
里見さんは、自分とご主人、そして愛犬たちとの実体験を経て、せっけん作りをライフワークにしていこうと決められたということですね。
せっけんと“せっけんではない”もの
せっけんは自然界で自然に誕生する こともあるとか… |
「シャンプーは界面活性剤による洗浄作用によって汚れを落とします。界面活性剤は、本来、混じり合わないはずの油と水の界面を、うまく混じり合うよう仲立ちし、油である汚れを引きはがして水に分散させ、洗い流すわけです。
現在一般に使われている界面活性剤は、2つに分類できます。ひとつはせっけん(脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウム)、もうひとつが合成界面活性剤ですね。その違いは、せっけんが天然の動植物性油脂にアルカリを反応させたもので、条件さえ整えば自然界でも生まれる可能性のあるシンプルなものなのに対し、合成界面活性剤のほうは、第一次大戦時に動植物性油脂の不足を補うために石油から作られたことに起源を発する人工的な洗剤・洗浄剤の主成分をいいます」(里見さん)
なるほど。世の中には、自然素材から生まれるせっけんと、“せっけんではない”合成界面活性剤とがあって、私たちが日常的に使っているシャンプーや犬用シャンプーのほとんどは合成界面活性剤から成る合成洗剤の仲間なのだそうです。