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東洋医学を併用した犬にやさしい治療(2ページ目)

東小金井ペット・クリニックの青沼陽子先生は、西洋医学に鍼やお灸などを組み合わせた犬にやさしい治療をめざす獣医さん。そんな先生に、シニア犬に対する正しいケアについての考えをお聞きしました。

執筆者:坂本 光里

西洋医学を側面から援護する東洋医学

飼い主さんの要望を医療に
生かしていきたい そんな青沼先生は、鍼灸やアロマテラピーなどを西洋医学に取り入れた、やさしい治療の実践者としても知られています。そうした東洋医学系の治療法もまた、犬の老化を防いだり、シニア犬の症状を改善するのに期待できそうですね。

――どんなきっかけで東洋医学を治療に組み入れようと思われたのですか?

「西洋医学のよいところ、東洋医学のよいところ、それぞれあります。老犬の場合、身体じゅう探せば、病気の芽のようなものがひとつやふたつ必ずあります。その病気の芽をひとつ取り除けば若い頃のような健康を取り戻したといえるのでしょうか?
私たち獣医師は医療を提供していく上で、飼い主さんととことん話し合います。そのなかで、飼い主さんすべてが、いわゆる最先端の医療と呼ばれているものを望んでいないということを知ります。『愛犬のためにできることを何でもやってあげたい』という気持ちは同じでも、ただ病気と闘うのではなく、病気と付き合っていくという選択肢を選ばれる方もいるのです。私が西洋医学だけでなく、鍼灸やマッサージ、アロマテラピーやハーブを治療に取り入れたのはそんな飼い主さんの要望もあったからです」(青沼先生)

しかしながら、鍼灸にしても漢方にしてもアロマテラピーにしても、あくまでも西洋医学の効果をアップしたり、側面的に補助したりするもので、最初からそれ一本に絞ってやるケースはまれだとか。たとえば、クスリを飲めばすぐに治ることがわかっているのに、わざわざ効き目が現れるのに時間のかかる東洋医学だけに頼る治療は行わないということです。わたし自身も、東洋医学系の治療法との正しいつきあい方は、青沼先生流がいちばん適切かなと思いました。

飼い主も参加して病気が現れる前にたたく

びわのエキスを染みこませた
和紙を当てて上からお灸をする
-----お灸やマッサージは、自宅でのシニア犬の介護やリハビリ、ターミナルケアにおいても力を発揮してくれそうですね。

「通院していても、おうちでも何かしてあげたいという方は多いですよね。少しでも痛みが和らぐ方法はないのか、不安がなくなる方法はないのかと。お灸やマッサージやアロマテラピーなどは飼い主さんが自宅でもできますから、簡単な方法をお教えして実践してもらっています。また、身体の自由がきかなくなってきたシニア犬は常に不安をかかえていますので、マッサージなどで大好きな飼い主さんとのスキンシップが増えれば、免疫力も向上して病気予防になるともいえます」(青沼先生)

先生の言われる治療とは、どうやら症状として病気が現れる前に、いかにそれを出ないようにするかというところに力点が置かれているようです。でも本来は、それが本当に望ましい医療の形ではないでしょうか。

先生の病院には、家でもできるようにと人間用のお灸セットが用意されていました。これを身体のどこにあてるかについては、基本的にお灸もマッサージもツボは同じで、泌尿器系の病気ならこことここ、という具合に重点的に患部が暖まるまでやるのが原則とか。最初はいやがる子もいるので、急がずにその子の様子を見ながら試すことが大切だそうです。その反面、鍼やアロマテラピーについては、専門的な知識を持たない人がむやみに使ってよいものではないということも言われていました。これは場合によっては逆効果になるケースもあるそうなので要注意ですね。

先天の気を補うのはやはり食べ物

オオハシのエムエムちゃん(2歳)
色彩のきれいなものが大好き
――さらに東洋医学的な観点からいっても、食事はかなり重要だとか。

「東洋医学には先天の気と後天の気という考え方があって、先天の気というのはもともと持って生まれたもの、後天の気というのは生まれてから食べもので得るもの。生まれからの気は、食べることでしか補いえないということになります。遺伝的な疾患をかかえて生まれてきた子は、先天の気が弱いと考えます。それを補うために、栄養はもちろん、新鮮な旬の食材を選ぶ必要がある。新鮮でできるだけ加工してない食べものとなると、やはり手作り食ということになります。手作り食に変えて、慢性の下痢や皮膚病が改善したという犬は少なくありません」(青沼先生)

もちろん同じものを食べている兄弟犬でも、目が輝いている子とそうでない子がいる。それは先天の気の違いなのですが、その違いは食事を変える(手作り食にするなどさらによいものにする)ことで補うことができると青沼先生は言います。

5月11日に元気なベビーを出産! ――最後に、シニア犬を持つ飼い主さんに何かアドバイスがありましたら…

「痴呆のワンちゃんの相談をよく受けます。『1日中吠えて近所迷惑になるから、眠らせるか静かにさせる薬を処方してくれ』と。この吠えについては、犬がなにか要求しているケースが多く、その要求を満たせば、お薬を使わなくても静かによく眠るようになります。精神状態が子犬時代に戻ってしまい、我慢ができなくなってしまっているからです。その要求は『身体のどこかが痛い』とか、『前に進めない!』とか、『お腹がすいた』とか、『寝返りがうてない、自力で立てない』とか、『寂しい』とかさまざまです。一番の理解者である飼い主さんが気がついてあげないと、いつまでも鳴き続けることになります。シニア犬を飼われている飼い主さんは、常に犬の気持ちになって接することが大切だと思うのです」(青沼先生)

要求を満たしてあげ、本当に食べたいものを食べさせてあげて、お互いがよい“気”を出しあっていけば、「きっと犬は飼い主の気持ちに応えて長生きしてくれるはず」と青沼先生。13歳のシニア犬と暮らすわたしとしては、心に残る言葉をいっぱいいただいたインタビューでした。

東小金井ペット・クリニック
 http://pet-clinic.info/
 東京都小金井市東町3-19-1
 JR中央線 東小金井駅南口より徒歩3分 駐車場あり
 診療時間:9:00~12:00
     :15:00~18:00
 休診日 :日曜・祝祭日

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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