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東洋医学を併用した犬にやさしい治療

東小金井ペット・クリニックの青沼陽子先生は、西洋医学に鍼やお灸などを組み合わせた犬にやさしい治療をめざす獣医さん。そんな先生に、シニア犬に対する正しいケアについての考えをお聞きしました。

執筆者:坂本 光里

本当のケアは子犬の時から始まる

『7歳からの飼い方で犬の寿命は変わってくる』(青春出版社)を書かれた東小金井ペット・クリニックの青沼陽子先生は、西洋医学に鍼やお灸などを組み合わせて犬にやさしい治療をめざされています。今回はそんな青沼先生に、シニア犬に対する正しいケアについてお聞きしました。

犬の健康は7歳前後が
ターニングポイント!
――その前に、7歳というのはもうシニア犬なのでしょうか?

「7歳くらいで白内障、白髪がチラホラと、見た目歳をとっているようにみえる犬もいれば、2歳くらいの子と変わらずイキイキといっしょになって跳ね回っている子もいます。犬種は幅がありますから老いが始まる年齢もまちまちです。中型犬では20歳近くまで病院知らずで過ごす子もいますから、そんな子のシニア期はもう少し後と設定してもいいかもしれませんね。
ただ、飼いはじめの子犬の頃は『餌は何がいいのかしら?』『フケっぽいけど大丈夫かしら?』と関心の高かった飼主さんも、7年も経過するとベテランなかだるみで、『少し痩せてきたけど元気だから大丈夫よね』とか『歳だからあまり動きたがらないのよね』とか、間違った解釈で病気を見逃してしまっていたりします。つまり、7歳というのは飼主さんにイヌの“老い”を意識しはじめて欲しい年齢なのです」(青沼先生)

――先生は、早い時期から正しいケア、正しい飼い方をすることがその子の寿命を延ばし、老化を防ぐ方法だと言われていますが…

「持って生まれた寿命をまっとうするか縮めるかは、子犬のときからの生活環境や食餌、しつけなどで変わってきます。子犬のある時期にたくさんの人や犬と触れあった子は、人見知りしない社交的な子になります。積極的に散歩に連れ出していた子は、生活環境で発生するさまざまな音やにおい、たとえば踏み切りの音や風の音などに免疫ができていますから、怖がりません。本来なら母犬や群れの仲間が教えてくれることを人が教えなければならないから大変ですが、ストレスに暴露されないということは、病気になりにくいということといえますね」(青沼先生)

人も犬も大嫌い、外からの音にビクビクして暮らすというような犬に育ててしまうと、いつもストレスがいっぱいで病気がちになってしまう。そうすると老化するのも早いというわけですね。

アンチエイジングに欠かせない散歩と食事

食餌と運動が老化を防ぐコツ ――では、犬たちがシニアになる前に見直すべきことは何でしょうか?

「あたりまえの答えですが、食餌と運動と家族構成や生活の場などの環境です。若い頃と違って運動量や代謝量が変わってきているはずです。飼い主さんには、ずっと与え続けていて問題のなかったフードでもいまいちど成分や原材料を確認し検討しなおしてもらっています。手作り食をやってみたいけど時間がない!という飼主さんには簡単な手作り食やトッピング食を教えてさしあげることもあります」(青沼先生)

簡単な手作り食の始め方を教えてくれる獣医さんって、ほんとに心強いホームドクターですよね。手作り食は毎回最初からつくり始めるのは大変ですが、何食分かまとめてベースをつくっておき、そこに日替わりでひとつふたつ食材を加えるというやり方であれば、そんなに手のかかるものでもありません。シニアと呼ばれる年齢に達したら、ぜひ一手間かけた愛情食に切り替えていただきたいものです。

――散歩については、どうなのでしょう?

「大抵の犬は、食餌と同様、お散歩を非常に楽しみにしています。でもベテランの飼い主さんはお散歩もマンネリ化。毎日のお決まりコースでテリトリーをチェックするのも大切ですが、ときどき違うコースを選択してあげると、いつもと違うにおいで犬の脳は刺激を受けます。
また、若い頃フリスビーや競技で活躍していた運動量の多い犬も、シニアになったら無理な方向転換をさせるような運動を避け、ドッグランやロングリードで自由に走らせたりする運動に切り換えた方がいいですね。他の犬と接触して挨拶したりするのも、脳が刺激を受けて非常にいいです。
もちろん散歩が嫌いな犬には無理強いさせないでください。病気や高齢で歩けなくなった子も、飼い主さんに抱っこしてもらっていつもの公園に連れていくと大変喜ぶそうです。自然に恵まれている地域の方には笑われてしまいますが、都心の犬は森林浴も喜びます。森林浴をするようになって病気がよくなった犬もいるんですよ」(青沼先生)

人間でもそうですが、刺激のない生活を続けていると早く老け込んでしまうのは犬もいっしょなんですね。

 病院の看板犬、菜の花ちゃん
 新人犬の教育係なのだとか
――では、もういっぽうの環境面については?

「環境については、年月が経過していますから、飼いはじめの頃と変わってきていることがあると思います。たとえば散歩や食事を与えていたのはその家の子どもだったのに、大人になっていろいろと忙しくなり、世話ができなくなって、その役目がお母さんに代わってたりとか、生活の場自体が変わっているケースもありますね。
シニア犬になったら足腰も弱ってきますから、フローリングや畳などすべる床は見直したほうがよいですし、白内障などで目が見えづらくなってきている犬は、ほとんど勘で歩いていますから、家具などを動かさないほうがいいです」(青沼先生)

本当なら、犬を飼い始める前に、10年後15年後に自分たちの家族構成やライフスタイルが、どう変化しているかまで考えた上で、大型犬にするか小型犬にするか、どの犬種にするかを決定したいものですね。

自分の“仕事”を持つことが生きがいに

 JBVPの会場で出会った聴導犬
 (日本聴導犬協会) 散歩は犬にとって自分のテリトリーの“見回り”という仕事でもあるわけですが、先生はこの“仕事”を与えることが犬の老化を防ぐ有効な手だてになると言われています。

――やはり、仕事を持つことと健康を保つことは関係があると?

「使役犬ってイキイキしていると思いませんか?あの輝いた目をみて、『仕事させられてかわいそう、動物虐待だ!』なんていう人はいませんよね? 使役犬でなくても性質に合った仕事を与えることで、犬は群れの中、家族の中での居場所ができて安心できるのです。家を守る、毎朝郵便受けから新聞を取ってこさせる、芸で人を喜ばせるなんていうことでもいいんです。
そして、できたら飼主さんが喜びを表現し褒めてあげる。犬にとってこれ以上の喜びはないですよね。犬に仕事を与えるという発想は、ある聴導犬育成団体から学ばせていただきました。聴導犬は保健所で処分されるはずだった子を救助して訓練するんです。ふたたび命を与えられたことを知ってか、犬は献身的に働きます。仕事を与えられることは生きるということ。そんな聴導犬たちの姿を見たとき、私はたいへん美しいと感じました」(青沼先生)

このお話も、人間の世界とほとんど同じで、定年退職やリストラで仕事を失ったシニア世代の方々が、何もすることがなく老け込んでしまうということはよく耳にします。犬たちも、シニアになったから「もう番犬の仕事はしなくてもいいよ」と言われるのは心外なことかもしれませんね。

続いて東洋医学のお話です!

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