はなとももたろうは、理想の組み合わせ はなちゃんのお婿さんとして来日したももたろう逞しいボディに、余裕の笑み!?写真提供:韓国珍島犬協会東京支部 はなちゃんを連れて帰るときに協会から言われたことが「この子は血統的にAランクの犬だからぜひ交配してほしい」という条件。そこではなちゃんが成長してから具体的にお婿さん探しが始まったのですが、 「その頃は既に日本の検疫制度が変わってましたので、韓国から輸入するには生後11カ月以上の子でなければならなかった。ここで問題なのは、珍島犬というのは日本犬と同じように、子犬の頃から一人の飼い主、もしくは一家族に忠誠を誓う気質の犬種だということ。なので、成犬に近くなってから新しい飼い主のところに連れてきて、はたしてうまく順応できるだろうかと…」(吉崎さん) 天然記念物としての凛々しい顔立ちは子犬たちにもしっかり受け継がれている写真提供:韓国珍島犬協会東京支部 お婿さんになる珍島犬を迎える飼い主さんは、東京町田市に住まわれている仕事仲間と決まっていたものの、その方は犬を飼った経験がない。吉崎さんはそのことを正直に協会の会長さんに告げ、相談されました。そしてそれならばと紹介されてきたのがももたろうくん。ももたろうくんは素晴らしい血統の犬だったので、品評会用にと室内で飼育されていて、とても人なつこい性格に育っていたこともあり、今回の条件にもはなちゃんのお婿さんにもピッタリだったというわけです。 そんな経緯で、05年12月にはももたろうくんがめでたく来日。はなちゃんとのお見合いもうまくいって、今年の2月には子どもたちが無事生まれましたと、吉崎さんは目を細めます。 「珍島犬は平均3頭~4頭ぐらいの出産が普通で、今回のように6頭というのはとても珍しいそうです。はなは初産なのにとってもよい出産をしました。彼女はまったく人間の手を借りることなく、最初から最後まで全部ひとりで立派に6頭の子犬を生み、ゆうゆうとお乳を与えていました」(吉崎さん) このへんは猟犬のたくましさということでしょうか。またはなちゃんは、子犬の頃からずっとお庭で生活していますが、出産もお庭、子育てもお庭だそうです。なんとも頼もしいお母さんですね! リーダーを認識し群れを大切にする原種に近い犬 韓国らしいデザインの カラフルな血統書 そんな珍島犬についてすこし触れておきましょう。 もともと韓国では、何頭かの珍島犬に群れで獲物を追わせ、倒すまで戦わせてきたそうです。性格的には、一人の飼い主をリーダーとし、その家族をとても大切にするのだとか。 「本来その犬が持っている性格や特徴を全部なくして、家庭犬として暮らしやすいようにしつける方もいますが、それではその犬種と暮らす意味がなくなってしまいますよね。私はその子の本能を残しながら社会性をしっかり身につけさせて、都会の中で順応できるようにという思いではなを訓練してきました。なので、人間の子どもや他の犬ともとても仲良しで、公園でもこのへん一帯のグループ長をつとめています。ただ元は猟犬ですから、ノラ猫を見ると本能的に追いかけずにはいられないようで、近所の猫たちははなを見るとぱっと逃げて行くようになりました」(吉崎さん) 珍島犬に夢中なんですという吉崎さん 公園でよく会う犬たちには群れの仲間という意識があり、とても友好的なのですが、テリトリー意識も高いので、知らない犬がその中に入ろうとすると群れのリーダー的な本能をちらりと見せる(真っ先に自分が前に出て相手を確認)こともあるそうです。 吉崎さんは、珍島は本土とはやや離れた場所にあるため他の犬種の血が混ざらず、原種に近い気質がそのまま生き残ってきたのではと話されていました。 「もとはイノシシなどを追うなどとても強い犬種ですから、今でも、動いているものを追うという本能や勇敢な気質はしっかりある。隣のうちから出てきたネズミを庭先で捕まえたこともありますよ。捕まえたことを吠えて知らせるんです。決して殺したりはしなくて、ただ抑えるだけ。捕ったことを自慢したいんでしょう」(吉崎さん) 長嶋監督も保証する珍島犬の運動能力 ねえねえ、かわいく撮ってよね!また、その運動能力は、まさに野を駆け山を走ってきた猟犬らしく抜群で、珍島犬を飼っている読売ジャイアンツの終身名誉監督の長嶋茂雄さんは、講演でよく珍島犬の走力や俊敏性、ジャンプ力のすばらしさを語っておられたそうです。 「ジャンプ力もすごいし、足もすごく速い。ボーダーコリーといい勝負でしょう。自転車で思い切り走っても負けちゃうぐらい。ですから十分な運動をさせてあげないとかわいそうですね。毎日朝夕の散歩は欠かさずしてほしい。また本来気質的にも強い犬種ですから、特に都会で暮らす場合は飼い主がしっかりしたリーダーにならないと家庭犬として飼うのは難しいと思います」(吉崎さん) 吉崎さんのお宅は、娘さんがアトピー体質が少しあるため、はなちゃんは庭にハウスをつくってもらってベビーたちと暮らしていますが、本来は室内で家族と一緒に暮らす形が望ましいとのこと。ただ柴犬と同じように換毛期があるので、その時はこまめにブラッシングしてあげないと抜け毛のお掃除が大変だそうです。 次はしつけと健康管理についてお伝えします!前のページへ123次のページへ