についてわたしが思うこと
朝日新聞6/28号の朝刊にペットジャーナリスト・坂本徹也の書いた原稿が載りました。「私の視点」というコーナーです。今回はこれをきっかけに、わたしなりの動物愛護への思いを書いてみたいと思います。まずは、その「私の視点」全文をお読みください。
私の視点/動物愛護の法律に「魂」を |
「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が施行されて2年半が過ぎた。この法律は、それまでの「動物の保護及び管理に関する法律」を見直し、動物の生命の尊重、虐待防止、適正な飼い方などの考えをより明確に盛り込んだものだ。だが、新しい法律が有効に機能しているかといえば、はなはだ心もとない。それは、最近のペット量販店のあり方にも見てとることができる。
東京都心に最近出店したペット量販店は、店内の通路の左右に4段5段にケージを積み上げ、いま流行のチワワやミニチュアダックスフントなどの小型犬を中心に、犬だけで約150匹を「商品」として展示している。競り市での大量仕入れによって、通常にくらべ「激安価格」を実現しているのだそうだ。
店の正面にも4段重ねのショーケース。鳴き続けている子犬もいる。道行く人は思わず足を止める。犬を飼った経験のない人は、その愛くるしい姿に、つい値札をのぞき込んでしまう。ケージに入った子犬は、簡単に飼えそうに見える。
規模はともかく、日本には同様の展示販売方式を採っているペットショップが多い。だが、こうした売り方はおおいに問題ありと思う。まず、人目にさらされる子犬たちのストレスの問題。さらに深刻なのは客の衝動買いを誘う売り方だ。
犬を飼うことの大変さも知らず、飼育には法的な義務と責任が伴うという自覚もない人々に買われた犬たちの行く末は目に見えている。やがて飽きられ、保健所や動物愛護センターに送られ、殺処分の道をたどることになりかねない。
欧州ではこのようなペット販売方式を禁止している国が多い。イギリスでは、20年も前から、公共の場所や露店などでの販売や、12歳未満の子どもへの販売が禁止されている。ペットショップにしても、日本のように幼犬をショーケースに入れて展示販売することは許されない。希望者はまず売り主と面接をして、飼い主としての資質が認められて初めて、子犬との対面を許されるのだ。
環境省は国内の動物取り扱い業者の実態などを把握したうえで、05年をめどに動物愛護管理法を見直すことにしている。昨年5月には、その作業の一環として、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を告示してもいる。しかし、その内容は、まだ抽象的なものにとどまっている。
法律は形だけを整えても、それをどう解釈しどう使うかという部分を詰めなければ機能しない。「適正な飼養」や「虐待」の具体的な内容を定義することは決して簡単ではないが、空前のペットブームの今こそ、十分に議論を重ね、不幸なペットが生まれないよう、法律に魂を吹き込んでおくべき時ではないだろうか。
わたしが「犬」ガイドを引き受けさせていただいてから2年と半年。動物愛護のことについて、正面から取りあげたことは一度もありませんでした。それは、わたしの中でこの重いテーマについて、私見を書くだけのベースができていなかったということです。 こうしているうちにも新しい不要犬が動物愛護センターに持ち込まれ、毎日のように多くの犬たちが殺処分にされています。その数は、80年代前半をピークに徐々に減りつつあるようですが、それでも環境省の集計によれば2001年度の犬の「殺処分」および「譲渡」は約13万8000頭(譲渡は一部)にもなるそうです。
ですが、自分はこうした実状を知りながらいったい何ができるのか? そう自問したときにわたしが得た結論は、自分にできることから始めようということでした。それは何か?それはわたしに与えられているこの立場から、すべての犬を飼う人びとの意識の底上げに役立つような情報を発信しつづけることで、今ある問題が起きる確率を少しでも減らしていくしかない、と。
つまり問題の根を「元から断つ」ということです。
飼い主さんが変われば、ペット業界も徐々に変わっていかざるをえません。たとえば、坂本はペット流通のあり方に対して動物愛護法の観点から見直すべきだと提案していますが、こうしたペット量販店にしても、買う人がいるから成り立っていくわけで、少しずつでも買う人が減っていけば存続がむずかしくなっていくでしょう。わたしは、犬を飼うことがどういうことなのか、飼い主はどんな姿勢で犬と接するのがよいのかを、わたしなりの視点で考え発信しつづけていこうと思ったのです。それは大きな力にはならないかもしれませんが、わずかでも飼い主さんの意識が変わり、その人が隣の飼い主さんや、親戚や友人の人たちにそれを伝えていってくれることで、本当の意味の「愛護」のスピリットが広まっていくのではないか---と。それはやがて問題の根を断つ力となるはずです。
『週刊金曜日』では、その6/20号で「愛玩動物がごみになる時」という特集記事を組み、そこでまさに「消費財」のように犬や猫などのペットが「廃棄」されていると書いています。その記事の中でも紹介されていましたが、環境省の『ペット動物流通販売実態調査報告書』(2002年)によると、犬猫の販売業者はいま約1300軒で、01年度に「生産」されたペットは推定15万頭なのだそうです。
ところが、このうち約5万頭もが病死などによって消え、生き残った9万7800頭が流通に乗るのですが、飼い主の手にわたるのはさらに減って7万7000頭といいます。
7万7000頭といえば、生まれた総数の半分! そしてその差の2万頭の犬猫たちはどこに行ったんでしょう? 病死した、売れ残って実験動物の業者に引き取られた、動物愛護センターに「捨て」られた……その実態はわかりませんが、いずれにしても悲しい運命をとげたとしか考えられません(そしてまた買われていった7万7000頭の中にも同じ運命をたどる子たちが…)。
こんな無理な「生産」の裏には、今の空前のペットブームがあるといえます。流行の犬を早く安く買いたいと思う人がいるから、売り手や作り手であるパピーミルが暗躍するということです。そうした衝動買いはしない、どこから買うかをじっくり考える、生後2カ月以上の健康的な子犬をいろんな注意点とともに売るようなお店か専門ブリーダーを探す---そんなことが日本でも常識になっていくように、今後も「犬」ガイドとして頑張っていきたいと思います。
東京都心に最近出店したペット量販店は、店内の通路の左右に4段5段にケージを積み上げ、いま流行のチワワやミニチュアダックスフントなどの小型犬を中心に、犬だけで約150匹を「商品」として展示している。競り市での大量仕入れによって、通常にくらべ「激安価格」を実現しているのだそうだ。
店の正面にも4段重ねのショーケース。鳴き続けている子犬もいる。道行く人は思わず足を止める。犬を飼った経験のない人は、その愛くるしい姿に、つい値札をのぞき込んでしまう。ケージに入った子犬は、簡単に飼えそうに見える。
規模はともかく、日本には同様の展示販売方式を採っているペットショップが多い。だが、こうした売り方はおおいに問題ありと思う。まず、人目にさらされる子犬たちのストレスの問題。さらに深刻なのは客の衝動買いを誘う売り方だ。
犬を飼うことの大変さも知らず、飼育には法的な義務と責任が伴うという自覚もない人々に買われた犬たちの行く末は目に見えている。やがて飽きられ、保健所や動物愛護センターに送られ、殺処分の道をたどることになりかねない。
欧州ではこのようなペット販売方式を禁止している国が多い。イギリスでは、20年も前から、公共の場所や露店などでの販売や、12歳未満の子どもへの販売が禁止されている。ペットショップにしても、日本のように幼犬をショーケースに入れて展示販売することは許されない。希望者はまず売り主と面接をして、飼い主としての資質が認められて初めて、子犬との対面を許されるのだ。
環境省は国内の動物取り扱い業者の実態などを把握したうえで、05年をめどに動物愛護管理法を見直すことにしている。昨年5月には、その作業の一環として、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を告示してもいる。しかし、その内容は、まだ抽象的なものにとどまっている。
法律は形だけを整えても、それをどう解釈しどう使うかという部分を詰めなければ機能しない。「適正な飼養」や「虐待」の具体的な内容を定義することは決して簡単ではないが、空前のペットブームの今こそ、十分に議論を重ね、不幸なペットが生まれないよう、法律に魂を吹き込んでおくべき時ではないだろうか。
わたしが「犬」ガイドを引き受けさせていただいてから2年と半年。動物愛護のことについて、正面から取りあげたことは一度もありませんでした。それは、わたしの中でこの重いテーマについて、私見を書くだけのベースができていなかったということです。 こうしているうちにも新しい不要犬が動物愛護センターに持ち込まれ、毎日のように多くの犬たちが殺処分にされています。その数は、80年代前半をピークに徐々に減りつつあるようですが、それでも環境省の集計によれば2001年度の犬の「殺処分」および「譲渡」は約13万8000頭(譲渡は一部)にもなるそうです。
ですが、自分はこうした実状を知りながらいったい何ができるのか? そう自問したときにわたしが得た結論は、自分にできることから始めようということでした。それは何か?それはわたしに与えられているこの立場から、すべての犬を飼う人びとの意識の底上げに役立つような情報を発信しつづけることで、今ある問題が起きる確率を少しでも減らしていくしかない、と。
つまり問題の根を「元から断つ」ということです。
飼い主さんが変われば、ペット業界も徐々に変わっていかざるをえません。たとえば、坂本はペット流通のあり方に対して動物愛護法の観点から見直すべきだと提案していますが、こうしたペット量販店にしても、買う人がいるから成り立っていくわけで、少しずつでも買う人が減っていけば存続がむずかしくなっていくでしょう。わたしは、犬を飼うことがどういうことなのか、飼い主はどんな姿勢で犬と接するのがよいのかを、わたしなりの視点で考え発信しつづけていこうと思ったのです。それは大きな力にはならないかもしれませんが、わずかでも飼い主さんの意識が変わり、その人が隣の飼い主さんや、親戚や友人の人たちにそれを伝えていってくれることで、本当の意味の「愛護」のスピリットが広まっていくのではないか---と。それはやがて問題の根を断つ力となるはずです。
『週刊金曜日』では、その6/20号で「愛玩動物がごみになる時」という特集記事を組み、そこでまさに「消費財」のように犬や猫などのペットが「廃棄」されていると書いています。その記事の中でも紹介されていましたが、環境省の『ペット動物流通販売実態調査報告書』(2002年)によると、犬猫の販売業者はいま約1300軒で、01年度に「生産」されたペットは推定15万頭なのだそうです。
ところが、このうち約5万頭もが病死などによって消え、生き残った9万7800頭が流通に乗るのですが、飼い主の手にわたるのはさらに減って7万7000頭といいます。
7万7000頭といえば、生まれた総数の半分! そしてその差の2万頭の犬猫たちはどこに行ったんでしょう? 病死した、売れ残って実験動物の業者に引き取られた、動物愛護センターに「捨て」られた……その実態はわかりませんが、いずれにしても悲しい運命をとげたとしか考えられません(そしてまた買われていった7万7000頭の中にも同じ運命をたどる子たちが…)。
こんな無理な「生産」の裏には、今の空前のペットブームがあるといえます。流行の犬を早く安く買いたいと思う人がいるから、売り手や作り手であるパピーミルが暗躍するということです。そうした衝動買いはしない、どこから買うかをじっくり考える、生後2カ月以上の健康的な子犬をいろんな注意点とともに売るようなお店か専門ブリーダーを探す---そんなことが日本でも常識になっていくように、今後も「犬」ガイドとして頑張っていきたいと思います。