▼ そして症状がすすんでしまったら、やはり抜歯しかないそうです。
「抜歯をすれば歯周病は完全に治ります。ただ、気をつけなければいけないのは、歯が治っても歯を支えている歯槽骨が炎症を起こしちゃってるケース。そうした深部も一緒に削り落としてあげないといけない。歯を抜いても、その穴が細菌の巣だったりすると、いつまでたっても治りません。そこで器具を使ってチャカチャカ掻爬します。そうやって血餅(ゼリー状のかさぶた)ができるのを待ちます。また炎症を起こしていそうなところは、骨まで取っちゃいます。それから徹底的に洗浄して人工骨を埋めて縫う。これが一番治癒率がいい」(藤田先生)
こうした手術で気をつけなければいけないのは、あごの中に複雑に入り込んでいる神経や血管。そこに貫通してしまうと大事故になってしまうからです。ちょっとやそっとの技術ではおぼつかないことがわかるでしょう。
だけどいまの獣医系大学では、こうした歯に関する治療に関する臨床教育はほとんど行われていません。トレーニングを受けていないことはできなくて当たり前。獣医さんたちは、卒業してから自主的にそうした勉強をしていくわけですが、こと歯に関してはあまり多くの人がそれを積極的にやっていないそうです。なぜって、それは教えてくれる先達が身近にいなかったから(だって人間のお医者さんでも内科の先生が歯も診るなんてことはありませんものね)。
しかし最近は藤田先生のような獣医さんたちが集まって、日本小動物歯科研究会がつくられ、アメリカの先進的な歯科治療の技術の導入もはかられつつあります。歯科に関心の高い獣医さんも、若い先生を中心に少しずつ増えてきているようです。そうした先生たちを近くに見つけておくことが大切ですね。
▼ そして何より肝心なのは、最初から歯周病なんかにしないこと。
歯肉炎などの軽い段階なら、毎日歯磨きをして歯垢を取り除けばすぐに治ることが多いです。だから毎日歯磨きをしてあげることが一番だそうです。歯垢は毎日少しずつ付きますし、歯石もわずか数日でできるといいますから毎日やることが肝心。
歯磨きは子犬の頃から習慣にしておくのが一番ですが、成犬の場合でも湿らせたガーゼを指に巻いて、歯列の外側をやさしくなでてあげる。そして慣れてきたら小さな歯ブラシで内側の歯列まで磨いていきます。これだけでこわい歯周病が予防できるというのですから、こんなにいいことはありません。みなさんもぜひ実行してみてください。
えっ、自分でスケーラーを使って歯石を取ってるって?
それはけっこうキケンだと聞きました。歯肉や歯の表面を傷つけるおそれがありますし、逆にスケーラーで傷ついた表面は歯垢がつきやすくなるからです。あと、ブタのひづめなどの固いものを食べさせるのも危ない。あまり固いものを食べさせていると、歯が痛んだり折れたりして逆効果になることもあるそうです。
「それよりは毎日、きちんと歯磨きの習慣をつけて飼い主さんが歯を磨いてあげてください」という藤田先生の言葉を肝に銘じて、愛犬を歯周病から守ってあげましょうね!
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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。