前回の「吠える犬の言い分」に続いて、今週は「咬む犬の言い分」です。JAHA認定の家庭犬しつけインストラクターの八木淳子先生と矢崎潤先生のお話をお聞きしました。
「咬む」子にならないためにはどうすればよいか?
切実な問題としてとらえておられる人も多いことでしょう。問題行動の先生に聞いても、いちばん多く来院するのはやはり「咬む」という子だそうです。では犬はどんなときに咬むのでしょうか?咬まずにはいられない犬の気持ちや精神状態を分析してみますと、つぎのようになります。
◆テリトリーの主張
◆怖いのでしかたなく
◆暇すぎてしかたなく
◆かまわれることで興奮し、
自分で自分が制御できなくなって咬む
これを頭においたうえで、犬が咬むときとその対応策を見ていきましょう。
ぼくの物を取らないで! |
犬には自分の所有物を取られまいとして、それに触ろうとした人をつい咬んでしまうことがあります。そうなる前に、子犬の頃に飼い主が手からごはんをあげたり、ごはんを食べている最中にボウルの中に手を入れたり、わざと身体に触ったりして「取らないよ、安心していいよ」ということを教えてあげることが必要なのですね。人間はきみの大切な物を取り上げたりしないんだということを、犬たちはそれを通じて覚えていきます。 また物に対する執着心から、拾い食いをしそうになったときなどに、思わず「だめよ」と制御しようとすると、その手を咬むこともあります。これも対応は同じです。 |
小さな子どもは怖いよ~! |
犬がリラックスして寝ているときに、いきなり触ろうとすると驚いて咬むということもありますね。とくに子どもの突飛な行動は、犬にとっては大きな恐怖に感じられることがあるので、子どものいるご家庭では注意が必要ですね。 |
ぼくらは外では気持ちが不安定 |
散歩中、他の犬を見て攻撃モードに入っているときなどに、安易に手を出すと手を咬まれるというケースがあります。これはハイパーな状態になってしまった犬は、すぐには元に戻れないということですね。 外での犬は、すごく不安定なのです。よくスーパーなどの入り口に繋がれている犬を見ますが、それも同じ。彼らは飼い主から離れて不安定な精神状態になっていることが多いもの。むやみに手を出すのはやめたほうが無難でしょう。 八木先生は、こうしたときに何も知らない子どもがうしろから犬を触って事故になることも十分考えられるので、できれば買い物時に犬を店先に繋いでおくのはやめたほうがいいと言われていました。それは同感ですね。 |
暇だとストレスがたまっちゃう! |
庭先に繋がれている犬は、暇でストレスがたまっている場合が多いそうです。通りがかりに遊んであげたいなと思っても、柵の間からいきなり指を突っ込むなんてもってのほか。しばらくは声だけをかけて落ち着かせ、もっと仲良しになりたければ飼い主さんの了解を得たうえで少しずつ近づき、段階的に触るようにしましょう。 |
においを嗅ぎあうのはチェック中 |
動物病院の待合室で順番待ちをしている犬同士を、安易に近づけさせることもよくありません。リードを伸ばしっ放しにしたり、犬同士を近づけてにおいを嗅がせるのはやめたほうがいいでしょう。臭いを嗅ぎあうのは相手をチェックしている証拠ですから、お互いに気に入れば問題はありませんが、気が合わないときには「ガガガッ」と攻撃に転じる場合があるからです。 では、どのような体勢をキープするのが一番かと言うと、まずリードを短くします。すると犬が動くと引っ張られて不快に感じ、快適な位置を探して飼い主の足元に戻ってくるようになる。そこで、正しいポジションにもどったらご褒美をあげるということを繰り返して、病院内に来たらいつも飼い主の座っている側にいることを覚えさせます。 |
病院って怖いから嫌い! |
病院に来ると興奮して獣医さんを咬もうとする犬がいますよね。だけど、そんな子にしてしまうと先々大きな損。じっくり診てもらえなくなってしまいます。診察台の上が嫌なことをされる場所と思われないようにしましょう。 犬の好きなごほうびを用意して、診察台の上で与えます。できれば獣医さんからも与えてもらい、食べさせながら診察を始めてもらいます。ストレスをやわらげ、リラックスした状態で触わったり声をかけてあげてください。犬の気持ちをリラックスさせ気持ちを静めるには、毛並みに沿って撫でてあげるのが効果的です(反対に元気づけてあげるには毛並みと逆方向に撫でる)。 |
咬もうとする犬を制御するのに必要なのはやはりしつけです。基本的なことですが、子犬の時期によくある飛びつきは早くからを直しておきましょう。それには飛びついてきたら後ろをむき、飼い主が電信柱になることだそうです。無視してじっと動かないでいると、犬は動かないものには興味がなくなりますから、落ち着いた状態になったら声だけで誉めます。その状態がキープできたら目線をもどし、声をかけてご褒美をあげるということです。最後にはご褒美がなくても、ちゃんと言うことを聞くようになります。犬にとっては、飼い主の視線がご褒美になるんですね。