死を身近に感じることが少なくなった
身近な人の死は子供の頃に誰もが感じたことのある「置き去りにされることに対する恐怖」を思い出させ、恐怖や無防備感、不安を感じさせます。 |
死にまつわる儀式にしても、昔は自分達で準備をし何日もかけて葬儀を行っていたものでした。死から通夜・葬儀、その後の経過を家庭で、村中で、町中で、総出で見つめていたわけですから、自然に死の教育ができていたわけです。死を悼む人々が特別な心理状態であること、故人に対しては思いやりをもって敬意を表していたこと……すべて自然に学んでいくことができました。
しかし、今ではご遺体が自宅にも帰らず、そのまま別の安置場所へ移動してしまうこともあり、死の学習をする環境ではありません。遺族が心のケアを必要としている時期は特別な配慮が必要なのに、多くの人は「どのように接したらいいかわからない。」というのが本音でしょう。
そこで最近は死によって生じる悲しみのプロセスである「グリーフワーク(*)」そしてその遺族をケアする「グリーフケア」という言葉が注目されています。悲しみを乗り越えることは容易なことではありません。心の苦しみだけではなく、ときには身体がボロボロになってしまう人もいます。しかし、このような辛い経験を経て死を受け入れていくことこそ、悲しみのプロセスは次の段階へ進むのだと言われています。
*グリーフワークはしばしば「悲しみを癒す作業」と訳されます。
身内の死を経験した人には、どのような心の状態なのでしょう。その症状は?次ページでご説明します。