お散歩ラリーに面白美術館。人形の里・吉浜(2ページ目)

公称３万体の人形が日本の歴史や生活を
再現する全国でも珍しい人形ミュージアム

紫峰人形美術館は日本で唯一の人形のテーマパーク

紫峰人形美術館は、すぐお隣にある人形メーカー「吉浜」が運営する民営美術館。ミニチュア人形が歴史や民俗文化の様々なシーンを再現するジオラマ・パビリオンです。施設のテーマを人形を使って表現するという展示はどこでも見られますが、ここの場合は人形そのものがテーマ。その精巧さ、表現の豊かさ、そして数は群を抜き、全国でも非常に珍しい個性派ミュージアムと言えるでしょう。

主役とも言うべき人形の数は実に３万体！　しかし、これはあくまで公称で、実数は前出の神谷社長をして「本当はもっと多いと思うのですが、数え切れないので実はよく分からない（笑）」と言います。

高さ10cm足らずの人形が無数にひしめき合う江戸時代の芝居小屋

５階建ての館内で展開されるのは、500体の人形が踊りまくるおまつり広場、地元の英雄・家康の生涯、四季の自然の中を旅する伊勢参宮膝栗毛、舞台から客席、楽屋までこれでもかとばかり裏の裏まで再現し尽くした江戸の芝居小屋、討ち入り前夜の赤穂浪士四十八士、天の岩戸から太平洋戦争までを網羅する日本の歴史、108体の職人が汗を流す大仏建立などなど。

500体が踊る「おまつり広場」

祭りばやしに合わせて佐渡おけさや浅草・三社まつりなどの踊りをにぎやかに演じる「おまつり広場」、内装費だけで１億円という３フロアぶち抜きの豪華な空間で祇園祭の山車と花笠の踊り子たちが舞う「都おどり」など、随所でダイナミックなアクションが見られるのも特徴です。

布団の下でのドッキングに鏡に映る○※△…
お色気シーンに思わずムフフ

赤穂浪士の討ち入り前夜。襟元には四十七士それぞれの名前がちゃんと書き込まれている。椀など小道具の細かさにも注目

一体一体異なる表情や、衣装や建具､小道具までこりにこった細工など、見事な作品の数々にはため息が出るほど。人形のプロが商売抜きに作ったアートだけに、恐るべき仕事の細かさです。

特に、芝居小屋や江戸の町並みは、腰をかがめて人形たちの目線でつぶさに観察していくと、長屋のひと部屋ひと部屋、店の一軒一軒で様々な人間模様がくり広げられていて、どれだけ眺めていても飽きることがありません。

江戸の町屋の一室ではひそかにこんなシーンが

が、かしこまって鑑賞するのではなく、ところどころにニヤリとさせられる遊び心が秘められているのがこの美術館の魅力。時にさりげなく、時にあっけらかんと、女性のヌードが現れるお色気シーンのサービスがあるんです。江戸の町並では布団の下で男女がからみ合っていたり、浮世風呂ではナイスバディの裸女たちの入浴シーンがくり広げられたり…。しかも、屋根の上や格子のすき間からこっそりのぞき見する人形も。その姿に見学者自身の姿がダブり、ちょっぴり苦笑いさせられるとともに、ますます人形ワールドへと惹き込まれていきます。

思わずドッキリの潮干狩り

中でも目を凝らしてじっくり観察してもらいたいのが江戸時代の潮干狩り風景のジオラマ。浅瀬で貝を探す女性や、浜茶屋で横たわる半裸の女性たち。その大事なところが、ある仕掛けを使ってバッチリ見られちゃうのです。男性はつい「ありがたや～」と手を合わせたくなるのか、人形の横にはお賽銭が投げ入れられたりしています(笑)。

一種のアダルトフィギュアとも言えますが、オタク系のそれとは似て非なるもの。あくまで明るくスケベ心を刺激してくれるので、いやらしさはなく、女性客にも大いにウケている、というのがまた大らかでいいじゃありませんか。

他にも、江戸時代のひな人形や、人間国宝の人形職人による博多人形、本物の舞台衣装をまとった等身大の歌舞伎人形など、見どころはてんこ盛りです。

人形小路の散策と美術館鑑賞を組み合わせれば、１日たっぷり楽しめる吉浜。観光地としてはあまり知られていないエリアですが、なかなかどうしてオススメです！

■ 紫峰人形美術館
・ 所在地：愛知県高浜市屋敷町１-５‐14
・ TEL：0566・52・2120
・ 開館時間：10時～17時、年中無休
・ 入場料：800円
・ Yahoo地図

■ 人形小路
・ アクセス：名鉄名古屋駅から特急・快速特急豊橋行き、知立で碧南行き普通に乗り換え吉浜駅下車。所要時間43～44分。車の場合は名古屋高速から名四国道経由、西中ICより約10分。もしくは伊勢湾岸道・豊田南ICより約20分。
・　問い合わせ：高浜市観光協会・人形小路の会　TEL：0566・52・3366