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鶴見線に乗ろう!【後編】国道駅と海水浴前(3ページ目)

東京湾の埋立地にある工場地帯を走る鶴見線は、東京からわずか30分の鶴見駅を起点とする路線。工場ばかりという独特の風景が広がる、鶴見線の不思議な世界を紹介する旅の後編。

執筆者:高橋 良算

鶴見線を完乗、そして向かった先は

扇町駅
扇町駅の先へ続く貨物線には貨車の列が
国道駅から、今度は支線をすべて無視して終点の扇町駅へ直行する。扇町もほとんど工場の引き込み線にあるような駅だ。もうこの風景にも慣れてきたし、少々食傷気味でもあるから、8分後に折り返す電車で扇町駅を後にした。

さてこれで、鶴見線の全線に乗り終えた。しかし、一つ気になることがある。それは、鶴見線にかつてあった駅の存在だ。

鶴見線には、鶴見駅以外の12駅のほかに、旅客が乗降できる7つの駅があった(仮駅時代の鶴見駅は除く)。そのうちの一つに、昭和7年~18年まで営業した「海水浴前」という名前の駅がある。夏の間だけ営業した臨時駅で、今の武蔵白石駅と浜川崎駅の中間にあった。

川崎市川崎区の公式サイト内にある「川崎区の宝物シート・No.22-2鶴見線」(PDFファイル)によると、『京浜運河の開削によって浚渫した土砂を投棄していた場所が次第に砂州となり海水浴場へと発展した』とある。さらに『現在の扇島(日清製粉の沖合あたり)は、”遠浅・近い・きれい”という三拍子そろった「扇島海水浴場」として、ひと夏に20万人もの多くの人出でにぎわい、春には潮干狩も行なわれた』のだそうだ。

扇島
海水浴など思いもよらない現在の扇島(海芝浦駅より)
扇島といえば、前回訪れた海芝浦駅からも見えた、石油コンビナートが立ち並ぶ埋立地である。あんな場所に人工的な海水浴場があって、ひと夏に20万人も訪れていたなどという光景は、いくら想像力を豊かにしても想い描くことができない。

扇島海水浴場は、鶴見線の前身である私鉄「鶴見臨港鉄道」の直営だった。その場所は少し沖合であったため、人々は「渡し船」に乗って海水浴場を目指したという。海水浴前駅は、渡船乗り場の最寄駅として設けられた。今では半ば貨物線の様相を呈する鶴見線だが、かつては行楽客を運ぶ鉄道でもあったのだ。


海水浴前駅のあった場所を探して、もう少し旅は続く >>
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