姨捨駅のスイッチバック
最初にも書いたように、姨捨駅のもう一つの魅力が「スイッチバック」をする駅であることだ。スイッチバックにもいろいろなパターンがあるが、この場合は、急勾配の途中に駅を設けるためのもの。本線から線路を引き込んだところに駅があり、勾配を登ってきた松本方面への普通列車の場合、いったん駅を行き過ぎ、後退しながらホームに到着する。今や急勾配によるスイッチバック駅は全国でも数少なくなっていて、それ自体が貴重な存在である。
この様子もなかなか文章ではお伝えしにくいので、画像をご覧いただきながら解説してみよう。
本線(一番右の線路)を、松本方面へ向かう普通列車がやってくる。
列車は駅を行き過ぎていったん停止し、ゆっくりと後退を始める。
後退しながらポイントを通過し、真ん中の線路へ入る。
そのまま後退を続けて駅に到着した。
駅を前進で出発、今度は一番左の線路へとポイントを渡る。
そのまま本線に復帰して松本方面へと向かう。
名歌を生んだ姨捨が誇る棚田の景色
棚田は姨捨を愛する人たちによって守られている |
それにしても「姨捨」とはおどろおどろしい名である。映画化もされた深沢七郎の小説「楢山節考」のもととなったのが、この地に伝わる姨捨伝説だ。
しかしその名に反して、駅周辺は穏やかな山里の風景である。斜面には棚田が広がり、田一枚一枚に月が映るという「田毎の月」は古くから知られる観月の名所。かの松尾芭蕉も「おもかげや姨ひとりなく月の友」と詠み、この地にある長楽寺にその足跡を残している。
姨捨駅は多くの魅力が詰まった駅。周囲も散策しながら、じっくりと訪れてほしい。
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