暮らしの法律/よくわかる法律・裁判関連情報

なんでダメなの?代理出産。(4ページ目)

子どもが欲しいのに、できなくて苦しんでいる夫婦にとって、代理出産は、自分たちの子どもを授かる最後の手段といえるでしょう。代理出産に関する、最高裁判所の判断について考えてみました。

酒井 将

酒井 将

暮らしの法律 ガイド

弁護士事務所 ベリーベストのパートナー弁護士。日本初の弁護士サービスの見積比較サイト「弁護士ドットコム」立ち上げメンバー。弁護士として法人顧問や債務整理、債権回収、交通事故、離婚、刑事弁護などに従事。難しい法律用語は極力使わないやわらかい解説を心がけています。TVやラジオ、雑誌などマスコミ出演多数。

...続きを読む
代理出産は、代理母の生命の危険や、障害児が生まれてしまったときのトラブルなどさまざまな問題もはらんでいます。

最高裁判所はこう考えた

ところが、最高裁判所はこんなふうに考えたのでした。

まず、民法は、分娩(出産)の事実により、親子関係を認めているのだから、代理出産はこれに反する(民法772条1項参照)。そして、親子関係は身分関係の安定のために、一義的な基準により定める必要があるが、代理出産には、それ自体にさまざまな問題点があるので、これらについて何の法整備がなされていない現状では、民法に反する解釈をして、代理出産の場合にまで、母子関係を認めることはできない。

つまり、親子関係を定める基準というのは、その国における身分法秩序の根幹をなすものだから、立法により解決するべきだという結論です。

たしかに、単に夫妻と子どもの幸せを図るためならば、高裁の判断のように、母子関係を認めたほうがハッピーだったのでしょう。しかし、ことはそう単純ではなく、代理出産の場合に親子関係を認めるかどうかという問題は、それによって、国家の身分法秩序に及ぼす影響を考えないといけないというのです。

代理出産の問題点と司法の限界

代理出産については、生命倫理や医療の倫理として許されるのか、許されるとしても、どのような条件が必要かなどについてさまざまな意見があるし、また、産まれた子や、その子を出産した代理母、卵子を提供した女性、その他の関係者の間の法律関係をどのように整備するかについても議論のあるところです。

ですから、そういったことは、最高裁判所が決めるべきではなく、国民による投票によって選ばれた国会議員の手によって、法律できちんと整備されるべきだということなのです。

裁判所は万能ではなく、あくまで法律に則った判断しかできないわけです。
現行法の範囲内で、代理出産を認めることは、裁判所の能力の限界を超えてしまっているということでしょう。

なお、代理出産の問題点については以下のページが詳しいです。
http://www.hou-nattoku.com/enq/archive/08_surrogate_birth.php
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます