代理出産は、代理母の生命の危険や、障害児が生まれてしまったときのトラブルなどさまざまな問題もはらんでいます。 |
最高裁判所はこう考えた
ところが、最高裁判所はこんなふうに考えたのでした。まず、民法は、分娩(出産)の事実により、親子関係を認めているのだから、代理出産はこれに反する(民法772条1項参照)。そして、親子関係は身分関係の安定のために、一義的な基準により定める必要があるが、代理出産には、それ自体にさまざまな問題点があるので、これらについて何の法整備がなされていない現状では、民法に反する解釈をして、代理出産の場合にまで、母子関係を認めることはできない。
つまり、親子関係を定める基準というのは、その国における身分法秩序の根幹をなすものだから、立法により解決するべきだという結論です。
たしかに、単に夫妻と子どもの幸せを図るためならば、高裁の判断のように、母子関係を認めたほうがハッピーだったのでしょう。しかし、ことはそう単純ではなく、代理出産の場合に親子関係を認めるかどうかという問題は、それによって、国家の身分法秩序に及ぼす影響を考えないといけないというのです。
代理出産の問題点と司法の限界
代理出産については、生命倫理や医療の倫理として許されるのか、許されるとしても、どのような条件が必要かなどについてさまざまな意見があるし、また、産まれた子や、その子を出産した代理母、卵子を提供した女性、その他の関係者の間の法律関係をどのように整備するかについても議論のあるところです。ですから、そういったことは、最高裁判所が決めるべきではなく、国民による投票によって選ばれた国会議員の手によって、法律できちんと整備されるべきだということなのです。
裁判所は万能ではなく、あくまで法律に則った判断しかできないわけです。
現行法の範囲内で、代理出産を認めることは、裁判所の能力の限界を超えてしまっているということでしょう。
なお、代理出産の問題点については以下のページが詳しいです。
http://www.hou-nattoku.com/enq/archive/08_surrogate_birth.php