一方的に同棲解消されたらどうする?
彼が二股をしてほかの女性との間に子どもができたために別れることになってしまいました。
そうなってから、もう3年になります。私と彼は、交際当初からずっと性交渉もあります。私が彼と交際していることは、私の両親も知っていますし、彼の両親も知っています。ただ、彼の実家に行って、両親にあいさつしたことはありません。彼も私の両親と会ったことはありません。私は、大学を卒業し、社会人2年目となりました。そろそろ彼と結婚したいなあと感じており、彼からのプロポーズの言葉を待っていました。
そんな矢先……。
実は、先日、彼から突然別れ話を切り出されました。なんと、彼は、ほかの女性との間に子どもができてしまい、その女性と結婚することになった、というのです。私が別れたくないと言っても、彼は全く聞く耳を持ってくれず、彼が部屋を出て行く形で、彼との同棲は一方的に解消されてしまいました。その後、彼は私からの電話にすら出ようとしません。
私は、彼に慰謝料を請求できるのでしょうか?
また、彼の子どもを作った女性を訴えることができるのでしょうか?
慰謝料を請求できる場合は?
婚約破棄で慰謝料請求をすることができる可能性があります。ただ、どのような事情があれば婚約があったといえるのかは微妙な判断がともないます。
同棲と内縁は違う!
まず、あなたと彼が、内縁の夫婦といえる場合には、あなたは彼にも女性にも慰謝料請求ができます。妻が、離婚の際に、不倫をした夫とその相手女性に慰謝料請求ができるのと同じ理屈です。では、あなたと彼は、内縁の夫婦と言えるでしょうか?
内縁の夫婦とは、婚姻届を出していないだけで、実質は、夫婦と何も変わらない場合をいいます。たとえば、結婚式を挙げた、新婚旅行に行った、親族の冠婚葬祭などの集まりにはいつも二人で顔を出す、年賀状は連名で出している、というように、その実態は、夫婦と全く同じなのだが、婚姻届だけが出されていない、という状態です。
そうすると、あなたの場合、単に同棲をしていただけに過ぎませんから、内縁の夫婦とまでは言いません。したがって、内縁破棄を理由として、彼や女性に慰謝料請求をするのは難しいと思います。
婚姻予約は成立しているか?
では、婚約の不当破棄を理由に、彼や女性に慰謝料請求ができるでしょうか?同棲をしていることで、事実上婚約があったと言えるかどうかが問題になります。まず、厳密に言うと、婚約は、「結婚しよう」「うん」という口約束だけで成立します。ただし、婚約も契約の一種ですから、契約として拘束力を持たせるには、誠心誠意真剣な結婚の約束である必要があります。たとえば、結納をした、婚約指輪を渡した、式場の予約をした、互いの両親へ挨拶をして食事を済ませた、などの公然とした事情がある場合です。同棲も、将来の結婚を前提として、その準備としてなされていたような場合には、婚約を裏付ける事情になるでしょう。
しかし、あなたの場合、将来の結婚を見据えて彼と同棲を開始したわけではありません。また、互いの両親とも会ったことはなく、彼からプロポーズもされていない、ということですから、婚約があったとは言えないと思います。したがって、婚約破棄を理由として、彼や女性に慰謝料請求をするのも難しいと思います。
裁判官によっていろいろ?
しかし、実はこの問題、非常に微妙な問題で、裁判官の人生観・結婚観によっては、逆の結論になる可能性も十分にありえます。最終的に、慰謝料請求を認めるかどうかは、裁判官です。紛争の勝敗は、裁判所に持ち込まれて、裁判官が判決を言い渡すことで決まるからです。このとき、裁判官によっては、「同棲して性交渉を何度もしていたのなら、やはり男は責任を取らないといかん」などと言って、婚約を認めてしまうこともありえるのです。ですから、長いこと付き合って別れたような場合には、婚約破棄を理由に慰謝料請求をして勝てる可能性というのは十分あるといえます。もっとも、そのような場合でも、彼の子どもを作った女性を訴えることは非常に困難であるといえます。この女性を訴えることができる場合は、女性が、あなたと彼の婚約を知って、それをぶち壊しにしようとして、わざと彼をたぶらかしたような特殊な場合に限られるでしょう。
ちなみに、私の個人的な意見を言わせてもらうと、この手の恋愛トラブルは、法的解決になじまないと思います。価値観が多様化した現代では、男女の恋愛に対する考え方や、交際の仕方もさまざまです。それなのに、男女の恋愛がもつれるたびに、いちいち慰謝料請求をしていたらきりがありません。恋愛沙汰を裁判所に持ち込んで、裁判官が「違法だ!」などと仰々しく口を挟むのはナンセンスです。恋愛は自己責任でするものだと思います。くやしいから慰謝料をとりたいなどと相手のせいにするのではなく、自分が相手を見る目がなかったのだから仕方ないとあきらめ、次の恋愛の糧とするのもひとつの方法です。
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