体質が変わった
「気が向いたらビーチコーミングを楽しめる時間」があることこそ、豊かな暮らしなのでは‥? "戦利品"の数々 |
幼少期には喘息気味で熱もよく出した息子さんも、今では元気いっぱいの小学生ライフを満喫しています。それと同時に、もともとは虚弱だった千悦子さんの体質まで、いつしか変わってきました。こちらに移ってからは、添加物の多い加工食品や肉類を、「何となく」求めては食べなくなりました。また、それまで何かと頼っていた薬をできるだけ使わないことを心がけ、少々の熱や体調の悪さは、枇杷の葉や豆腐などを使った民間療法で治すようになりました。「都会暮らしをしていた頃は、持病の扁桃腺炎のため、年に2回は高熱を出して寝込んでいました。主治医の先生にも“これは治らないから、付き合っていくしかないね”と言われてあきらめていたんですが、最近ではめったに熱を出すこともなくなりました」(千悦子さん)。
都会は「消費型」、湘南ライフは「朝型」?
引越し当初は、人恋しくてしょっちゅう都心に買い物に出ていたものですが、次第にそれが「横浜」へ、やがて「横須賀中央」へと、だんだん近場になっていき――今では遠出する機会も減りました。現在広田家では、週2回の無農薬野菜の宅配を中心に食生活をまかなっています。最近では、山の上に畑を借り、ちょっとした野菜は自分たちで育てています。鰯の群れが回遊してきたと聞けば、にわか釣り師で賑わうビーチへ。家の近くにはコンビニもありますが、滅多に買い物に行くことはありません。「都心に住んでいた頃は、“散歩”っていうのは“何か買うこと”だったけど、こっちではそれがない。お金使わなくなりました(笑)」(行正さん)。昔はどちらかというと夜型だった広田ご夫妻ですが、今ではすっかり朝型に。早朝、虫の声や鳥の声で目覚めることも多いそうです。
湘南という背景の魅力
古くから農業や漁業を営んで地域に暮らしてきた人々、都心に通勤する会社員、外国人や、広田さんのようなアート・出版関係者など、多様な人が暮らす湘南には、地方にありがちな閉鎖性がなく、人と人との垣根が低い土地柄。都会から移り住んだ夫婦が地域に溶け込み、慌しいライフスタイルを、気がついたらすっかりスローにシフトしていったこの10年は、広田ご夫妻の力みのない生き方と、湘南というおおらかな土地柄が出会っての成果であるように思えてなりません。
地に足のついた暮らし
『湘南ちゃぶ台ライフ』というタイトルは、広田さんご夫妻からではなく、この本を企画・編集した編集者のお友達から出てきたものだそう。「最初、“エッ、「ちゃぶ台」って‥?”と、ちょっと面食らいました。でも、本ができていくうちにだんだん馴染んできて、今では、このタイトルでよかったなーって」(行正さん)。広田家には確かにレトロな丸いちゃぶ台がありますが、広田ご夫妻の「地に足のついた、それでいててらいや気負いのない暮らし」を表現するのに、"ちゃぶ台"はピッタリだなぁ、と思いました。
『湘南ちゃぶ台ライフ』(毎日コミュニケーションズ、2520円)
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