世界中の留学生と友だちになれる、寮滞在 |
友情はトイレから始まる?!
“Flush the toilet, please!”(トイレ流して!)
シャワーを浴びながらよく使った言葉だ。私が大学生活初年度を過ごした寮は、築100年くらいの古い建物。幾度か改装されたようで、それなりに心地よく過ごしてはいたのですが、水周りだけはいつもトラブルが絶えなかったのです。特に私が入っていた最上階は水の出が悪く、シャワーを浴びていると、お湯の温度が下がってくる。そのため、向かい側にあるトイレの水を流して、一時的にもお湯の温度を上げたいと考えるわけです。
そこで…
“Flash the toilet, please!”(トイレ流して!)
“Sure!”(オッケー!)
となるのです。
ただ会話はここで終わらない。「ありがとう。あなたは誰?」「私の救世主、今度クッキーもっていくね」「ところで今、誰の講義を受けてるの?」なーんて会話が続く。この水周り騒動のおかげで、近くの部屋の学生たちの名前やら専攻やらすぐに覚えることができた。そして自分についても覚えてもらうことができた。留学生にとって友達を作るストレスは大きいが、私はその点で寮生活に大きく助けられていたと思う。
大学内でも(とくに1年生は)同じ高校の同窓生で固まって行動する傾向があるらしいが、実は寮生活をする学生には地方出身で、同じように高校からの友達がいなくてさびしさを感じている人が多い。その“地方”がアメリカ国内なのか海外なのかというだけの違いで、寮内では地方出身者同士で、仲良くやったものだ。
廊下がリビングに!
ロンドンのEmbassy CES。全室1人部屋の寮 |
トイレでの絆は深くなるらしく、私が住んでいた寮では、トイレを中心にご近所同士が仲良くなり、ちょっとしたコミュニティを作りだす、という現象が起きていた。数カ月後、そのコミュニティスペースとして廊下が使われ始めた。ロビーのソファを運び、オーディオをセットし……と、廊下がちょっとしたリビングに変身。後日、防犯のため、これらはすべて撤去させられたが、あのときに廊下で過ごした時間のことは、今でもはっきり覚えている。
なぜこんなことになったかというと、部屋の狭さにその原因があった。8畳間よりやや狭い部屋に2人で暮らしている状況。ベッドと机だけでもいっぱいなのに、さらに自分の全財産と食料、冷蔵庫や電子レンジまで置くわけだから、狭いに決まっている。最初は片付け上手な人の部屋がたまり場になっていたが、それに気を使い始め、廊下で話をするようになり、床座りではちょっと…… とクッションを持ち出したりしているうちに、廊下がどんどんリビング化していったのだった。そのうち、部屋にいるのは勉強しているときだけ、という人も出てきて、廊下での交流はずっと続いた。その廊下族が、お隣のコミュニティの廊下族と知り合って、寮全体がなんとなーく知り合いになっていったのです。
次のページでは寮生活の基礎知識やマナーをご紹介