新聞の未来は? |
新聞社サイトの問題点
まずは新聞社サイトの現在の問題点について改めて考えていきます。何故、多くのユーザーは新聞社サイトではなく、Yahoo!ニュースなどでニュースを見るのでしょう?●ユーザーは多種多様なニュースを一括で閲覧したい
これは「ブログ検索サービスとネットショッピングの関係」でも触れましたが、単体の新聞社サイトよりも様々なニュースサイトのニュースを集約し、提供しているYahoo!ニュースなどで一括で見た方が効率的な上、各新聞社、ニュースサイトの色の違いによって1つの事件を多角的な視点で理解することができると考えるユーザーが増えているせいだと思われます。
●わざわざ新聞社サイトへ行く理由がない
Yahoo!ニュースに限らず、Googleニュース、excite、goo、mixiなど、検索、ポータル、SNSと様々なサイトでニュースを見ることができます。そしてそれらのサイトにはほとんどの場合、ニュースだけではなく、検索、ショッピング、コミュニティなどあらゆるコンテンツが揃っています。つまり、わざわざ新聞社のサイトへ行ってニュースだけを見る理由がないのです。
●2次利用できない情報
新聞社のサイトはリンク規制が厳しく、リンク許可を取った上で、トップページのみにリンクを許されるというのが基本となっています。著作権などの問題もあり、これが必ずしもいけないということではありません。しかし、新聞社は多くのサイトにニュースを提供していて、提供されている多くのサイトではそのニュースにトラックバックしたり、コメントを付けられるようになっています。総務省の調べによると今年、3月現在でブログの登録者数は868万人となっていますが、リンクもできないサイトとトラックバックを貼れるサイト、ブログを書いているユーザーは果たしてどちらのサイトを利用するでしょう。
新聞社サイトの新たな試み
昨年、日本でiTunes Music Storeが始まったのに合わせ、いくつかの新聞社がポッドキャストでニュースの配信を開始。またサイト上で最新ニュースのRSSを配信したり、投稿されたニュース映像を視聴できたりと、Yahoo!ニュースなどにユーザーを奪われていく中で、新たなサービスを開始し、ユーザー奪回を狙っている新聞社サイトも増えています。その流れの中で今月から始まった2つのサービスをご紹介します。・iza(イザ!)
産経デジタルが今月15日から開始したブログ、コメントによるユーザ参加を可能にした双方向型情報サイト。産経新聞グループが発行する4媒体(産経新聞、サンケイスポーツ、フジサンケイビジネスアイ、夕刊フジ)の記事で構成され、掲載された記事全てにトラックバックができる。またブログで話題のキーワードランキングや名詞・固有名詞を中心に、言葉の意味をユーザー同志で編集、共有できる「イザ語」など、様々なサービスを提供している。
・yorimo
読売新聞が今月1日より開始した、読売新聞購読者を中心に「暮らしに役立つプレミアムなサービス」を提供するサイト。演劇やライブなどのチケットの優先販売、人気作家による連載小説、悩み相談など多彩なコンテンツでニュースだけではない様々なサービスを展開。今までにも朝日新聞の「aspara」や毎日新聞の「まいまいくらぶ」など同様の会員制サービスはありますが、それらを超えるサービスの提供を行えるのかが、成功の鍵となりそうです。
yorimoはどちらかと言うと購読者へ向けたネット上でのサービスという意味合いが強く、現時点ではネットユーザーの取り込みの強力な武器とは言えませんが、iza(イザ!)は記者ブログで会員登録したユーザーからのコメントを受け付けるなど、Web2.0的手法を多く取り入れ、本格的にネットユーザーの囲い込みを狙ったサービスです。今後はこの形態が新聞社サイトでも当たり前のサービスになっていくのではないでしょうか?また昨日より朝日新聞が団塊世代向けエンターティメントサイト「どらく」をオープン。どの新聞社サイトも独自性を打ち出し、ユーザー獲得に本腰を入れ始めています。
地方紙にこそチャンスはある
今までは全国紙のサイトの話でしたが、地方紙サイトはどうでしょう?実は私は地方紙サイトにこそ、大きなチャンスがあると考えています。そして、そのチャンスとはSNSです。地方紙ならではの地域情報に特化したSNSを作り、yorimoのように購読者に優先的なサービスを与えます。これによって、リアルの購読者の囲い込みに加え、地域情報に特化したSNSということで、他都道府県からの集客も見込めます。つまり、iza(イザ!)のコミュニティ機能、yorimoの購読者向け情報にさらに地域情報SNSを付加した情報サイトを構築するのです。インターネット広告代理店のアイレップが行った調査によると、よく利用する検索方法で、ローカル検索がウェブ検索に次いで2番目に多いとの結果が出ています。しかもその利用シーンは、勤務先や自宅の近くの飲食店、ショッピング施設などを探すというよりも、行ったことのない場所へプライベート、仕事で行く時というのが1位と2位になっています。この結果から見ても、充実した地域情報に特化したサイトの需要は高く、地方紙サイトにとってもユーザー獲得の大きな可能性を秘めていると言えます。さらに地元テレビ局や、観光局などと組めば総合的な地域情報SNSとして、よりユーザーにアピールができますので是非、どこかの地方新聞サイトにチャレンジしてもらいたいと思います。
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