検索連動広告から動画広告へ
4月13日付け日経産業新聞の記事によると米調査会社のイーマーケターの調査では「Web広告で現在主力の検索連動型のシェアは40%で横ばいが、音声、映像広告は現在の10%から4年後の2010年には倍の20%になる」という調査報告が出ていました。勿論、この音声、映像広告というのはWeb上のものであって、ポッドキャストでの広告ということではありません。ただマイボイスコムとJストリームのポッドキャスト内に広告を導入するということについてのアンケートでは「短いメッセージならば…」「有料のコンテンツが無料になるならば…」など肯定的な意見が多数あったということで、今後、通常のテレビ、ラジオの様な広告やユーザーに広告だということをあまり意識させず、ポッドキャストの番組の中に製品やサービスを登場させる「プロダクト・プレースメント」または「スポンサーシップ形式」などの方法でポッドキャストでも様々な広告が展開されていくのではと考えます。Web上の音声、映像広告は必ずしもユーザーが見るとは限りませんし、見たくない場合はそのページを閉じてしまうことも可能です。しかし、ポッドキャストの場合、番組の開始前や番組中に広告があってもiTunesやWindows Media Plyer、そしてiPodなど、どれも細かい早送りや巻き戻しが得意ではないため、ユーザーの目や耳に残る確率が高くなります。またPodcast Juiceなどではその番組の登録者数が表示されるので何人の人が視聴しているかが正確にわかります(iTunesでは登録者数は公開していません)。そういった面でポッドキャストでの広告はWeb上の通常の音声、映像広告に比べ、費用対効果がわかりやすいメディアだといえます。また、ポッドキャストはブログ形式で展開できるのでコメント、トラックバックなどユーザーの意見を汲み上げやすい、口コミで広がりやすいというのも大きな利点です。
企業サービスの手段としてポッドキャストを活用する
広告ということだけでなく、ポッドキャストをサービスの一手段として活用している企業も増えています。オンラインバンクのSonyBankでは、金融市場レポートや関連ニュースをfrom MONEYKit ポッドキャスティングで配信。株式会社学情では就職活動に関する様々な情報を就活PODCAST-学情ナビで配信しています。また変わったところではインターネット関連事業を行っている、はてなで以前より社内ミーティングやインタビューをポッドキャストで配信していましたが、今月より同社の様々なサービス紹介をビデオキャストでも配信し始めています。これらは企業が持つ情報やサービスを、よりユーザーにわかりやすく伝えるための手段としてポッドキャストを利用していますが、結果としてそれがその企業の宣伝にもなっています。こういった形でのポッドキャストの利用は、今後、さらに増えていくと予想できます。なぜならポッドキャストはWeb上の広告、自サイト内でのサービスに比べ、継続性があるので長い期間に渡ってユーザーに情報を提供することが可能ですし、最低限、ブログとマイク、ビデオキャストでもプラス、デジタルビデオがあれば作成できますのでアイディアさえあれば安価で済むというメリットがあるからです。そしてポッドキャストを利用したサービスは企業だけでなく、ネットショップなどでも盛んになるかもしれません。今まではメールマガジンでユーザーに伝えていた情報をポッドキャストで配信すれば、読むだけでなく、見て、聞いて楽しい情報を伝えることが可能になります。お酒を販売しているサイトであれば、オリジナルカクテルのレシピを映像で配信したり、花屋のサイトでオリジナルアレンジメントの作り方を紹介するなど、よりユーザーに直接的に訴えかけることができます。また他にも観光協会のサイトでその地域の旅館や温泉、四季折々の景色などをリアルタイム配信するなどポッドキャストには今までWebだけでは難しかったことも簡単に実現できてしまう可能性を秘めています。
「どこでも、いつでも」がカギ
Jストリームとインターネット広告のサイバー・コミュニケーションズは、今年2月より共同でポッドキャスト向けの音声番組に企業の広告を付けるなどの販促キャンペーンの企画販売を開始しています。そして先月15日、ソニー・コンピュータエンタテインメントは同社の携帯ゲーム機「PSP」にRSSを使ったオーディオキャストやビデオキャストを再生可能とする機能を追加すると発表。またクエストコムは2月1日には携帯電話でもポッドキャストが楽しめるRSSリーダー「RSS.eye」をリリースし、PCやiPodを始めとした携帯デジタルプレーヤだけでなく、様々なデバイスでポッドキャストを楽しむ土壌が出来つつあると同時に、ポッドキャストをビジネスとして利用する基盤も整い始めています。今後はPSPや携帯電話でポッドキャストを楽しむ人も増えそうです
インフォプラントが先月行った調査(PDF)では、1日あたりのテレビとネットの視聴時間はどちらも「1時間~3時間未満」が最多の4割と、接触時間ではほぼ同じという結果が出ています。テレビや新聞に比べ、Webの広告はまだまだ注目度としては低いようですが、ポッドキャストでの広告は通常のWeb広告よりテレビ、ラジオ広告に近い上、「いつでも」「どこでも」楽しめるという利点もありますので、RSSの普及によってポッドキャストの広告は今後、さらに発展していくものと思われます。