
厚生労働省が9月30日に公表した「人口動態統計(確定数)」によると、離婚件数が減少傾向にあるなかで、同居20年以上の「熟年離婚」の割合は24.2%と過去最高を更新しました。
一方で、夫婦問題の相談を受けていると、60代女性から「あのとき離婚していたら、私の人生は違っていたのでしょうか」という言葉を聞くことがあります。
50代の頃に一度は本気で離婚を考えたものの、子どもや親のこと、お金の不安などがあって踏みとどまり、60代になって「あのとき決断していれば……」と思い返す人は、実は少なくありません。
ただ、私はこうした女性たちの話を聞くたびに思うのです。本当に後悔しているのは、離婚しなかったことではなく、自分の人生を自分で選ばなかったことなのではないか、と。今回は、そんな3人の女性のケースから、50代の今だからこそ考えておきたいことをお伝えします。
目次
事例1.「子どものために」自分の気持ちを封印
60代のA子さんは、50代の頃まで夫との関係が冷え切っていました。何度も離婚を考えたものの、大学生だった娘から「今さら離婚なんてしないで」と泣かれ、思いとどまってきたといいます。
それから10年がたち、娘は結婚して家庭を持ちました。
そんなある日、娘から「お母さんも、これからは自分の好きなことをしてね」と言われたA子さんは、複雑な気持ちになったとのこと。「娘はもう、しっかりと自分の人生を歩んでいるんですよね。一方、私はこの10年間、何をしていたんだろうって思うと虚しくなってしまうんです」
【50代へのアドバイス】子どものせいにしない生き方を
子どもを思う気持ちは尊いものです。一方で、子どもの人生とあなたの人生は別のもの。あなたが離婚するかどうかを、子どもの意見だけで決める必要はありません。
50代で離婚を迷ったときにしてほしいのは「もしも子どもが離婚に反対しなかったら、私はどうしたい?」ということ。この質問を一度、自分自身に問い掛けてみてください。
離婚しないと決めるなら、それも立派な選択です。ただし、「子どものために我慢する」ではなく、「私は今、この結婚生活を選ぶ」という気持ちを大切にしてほしいのです。
事例2.「介護が終わったら」と自分の人生を先送り
60代のB代さんは、50代で夫との離婚を真剣に考えていたといいます。
ところが、その矢先に実母の介護がはじまります。「今はそれどころじゃない。離婚のことは、母を見送ってから考えよう」そんなふうに決めたものの、介護生活は思いのほか長く続きました。
そして母を見送った頃には、B代さんも60代半ば。
B代さんは今、後悔しています。「離婚しなかったことより、介護以外の自分の時間を全て諦めてしまったことが悔しいんです」
【50代へのアドバイス】親の介護がはじまる前に知っておきたい
親の介護は、自分の思いどおりに終わりを決められるものではありません。だからこそ、「介護が終わったら私の人生をはじめよう」と、今から決めないほうがいいこともあります。
例えば、月に一度は予定をキャンセルせずに友人と会う。好きだった趣味は通う回数が減ってもやめない、というように、自分の時間をゼロにしないよう心掛けることは意外と大切。そのために地域の支援サービスを調べたり、頼れる身内と話し合ったりするなどして、自分だけで抱え込まないような方法を考えてみましょう。
離婚するかどうかの結論は先でも構いません。でも、自分を幸せにすることまで先送りにしなくていいのです。
事例3.「一人では暮らせない」と自立の準備を諦める
60代のC美さんが離婚を踏みとどまった理由は、経済的不安でした。
「私の収入では生活できない。だから離婚は無理」と思い、夫への不満を抱えながら暮らしてきたのです。
ところが60代になり、改めて家計を確認すると、貯蓄や年金の見込みなど、もっと早く調べておけばと感じることが次々に出てきたそうです。
「あの頃、私が離婚できたかどうかは分かりません。ですが、少しずつ準備だけでもしておけば、もっと違う気持ちで暮らせたと思います」
【50代へのアドバイス】お金で後悔しないよう準備を
夫婦の相談に訪れる女性たちに対し、たとえこの先離婚するつもりがなくても、今のうちから経済的な自立について考えておくことをいつも私はおすすめしています。自分名義の資産、年金の見込み、毎月の生活費、これからの働き方など、まずは現状を知ることから始めるのは、決して無駄ではないからです。
「離婚できないから一緒にいる」と「離婚もできるけれど、一緒にいることを選ぶ」は、まったく違うもの。選択肢があると分かるだけで、心に余裕が生まれることもあるのです。
60代で後悔しないために、50代の今できること
ここまで読んで、「やっぱり離婚した方がいいの?」と思った人もいるかもしれません。
必ずしもそうとはいえませんし、離婚せずに幸せになった女性も、もちろんたくさんいます。
大切なのは、「離婚したか、しなかったか」ではなく、その選択に自分自身が納得しているかどうかです。子どもが反対したから、親の介護があったから、お金がなかったから……そうした事情は、決して軽いものではありません。ですが、事情に合わせて生きることと、自分の人生を諦めることは別の問題ではないでしょうか。
50代は、まだまだこれからの人生をつくっていくことが可能な年代です。迷ったときは、「私は本当はどうしたい?」という自分自身への問いかけをしてみてください。
60代になったときの自分が「あのとき、ちゃんと自分の人生を考えてよかった」と思えること。離婚するにしても、しないにしても、それが何より大事なことなのです。







